17話 決勝トーナメント最終日④
そこからの戦いは熾烈なものとなった。
僕とブレイズさんはお互いの腕と足を使い殴り合う。
この極限状態において迂闊な攻撃を行えばお互いにカウンターに合うのだ。
それを踏まえたうえでお互いに二手、三手……と相手の動きを予測し次の動きに出ていく。
集中力はかつてないもので音などあってないようなものだ。
そうして、戦闘は二十分を越すほどとなった。
二十分を超えた頃にはお互いにかなりの体力を消耗していた。
相手の動きを見切り次の一手を考える精神面。
自身の想像通りの動きを行う肉体面。
その二面から僕とブレイズさんの体力はかなりのスピードで消耗していく。
「「はっ!」」
そして、次の瞬間。
お互いの突き出した拳が真正面からぶつかり合う。
それから、お互いの動きが停止する。
「ハァハァ。
おい、どうして魔法を使わないんだ」
腕を振り下ろしたブレイズさんが聞いてくる。
「それは、貴方と対等に戦ってみたかったからですよ」
「ハッ! そうかよ。
俺にはそうは思えないがな」
「どういう事ですか?」
「俺は持てる力全てを使って戦っているっていうのに。
お前ときたらどうだ!
対等に戦う?
魔法が使えるのに使わない奴には言われたくねぇよ!」
僕は、対等に戦うためという理由の下、まだ魔法を一切使っていない。
しかし、ブレイズさんはそれが対等でないと言う。
全ての力を出しているという相手に縛りプレイをしているのだという指摘だ。
見解の相違だ。
僕が考えていたのは同じ力でどちらが強いか。
ブレイズさんは自身の持てる力の全てを出し切ってどちらが強いか。
僕が神皇になってからというもの、これまでずっと力を制限してきていたためブレイズさんのような考え方が抜けてしまっていた。
「話は分かりました。
魔法を使ったら試合にならなくなりますよ。
それでもいいんですか?」
「ハッ! 上等だ!
全力の相手に勝ってこそ本当の勝利だろ」
ブレイズさんは僕の確認にそう答えた。
流石にここまで言われてしまっては魔法も使っていくしかない。
一方的な試合になるかもしれないがブレイズさんがそう言うのだから僕は魔法も使っていくことにする。
「『パワーレイズ』『スピードレイズ』」
「そう来なくっちゃなぁ」
僕が魔法を使い始めたのを見てブレイズさんはそう呟いた。
最初に能力強化。
「じゃあ、いくぜ!」
息を整えたブレイズさんはしっかりと腰を入れるとそれから足に力を入れ駆け出した。
「『アイスフィールド』」
僕は動きを阻害する為に地面をどんどん凍らせていく。
自身を中心として円状に凍結は広がっていき当然、こちらに向かってくるブレイズさんの足元まで氷に飲まれる。
取りあえずこれで動きは阻害できるとは思うのだが……。
「ウォォォォォ!!!!!」
雄叫びを挙げながらブレイズさんは減速することなく突き進む。
足元をよく見れば一歩踏みしめるごとに地面を覆う氷が砕けていく。
「なんて強引な」
呆れてそんな感想を漏らすがブレイズさんはすぐそこだ。
「『アイスパイル』」
無意味だと分かった地面を覆っている氷。
それを再利用して消費魔力を削減。
今度は足元から鋭利な針のような形状をした氷を生やす。
進路を妨害するように生やし、その中から何本かをブレイズさんめがけて伸ばしていく。
が、ブレイズさんは後ろに飛んで躱す。
そして、動きを止めることなく僕に向かい接近を再開する。
「『エレメントランス・マルチショット』」
氷で塞がれた場所を迂回して近づいてくるブレイズさんに次の魔法を使用する。
八種類の槍が僕の周りに浮かび上がり、それぞれがブレイズさんに狙いを定める。
第一射、チラチラと火の粉を舞い散らせながら炎の槍が飛んでいく。
第二射、流動する水の槍が炎の槍を追随する。
第三射、バチバチと電気を放出する雷の槍が水の槍と全く同じ軌道を描く。
第四射、ヒュンヒュンと収束された風の槍が一直線に進む。
第五射、白い光を纏った邪を払う光の槍が発射され。
第六射、重苦しい闇を放出する槍が光の槍と横並びに飛んでいく。
第七射、そのスラッとした外見に合わない質量を持った石の槍が鈍重に飛ぶ。
第八射、冷気を発する氷の槍が最後に飛んでいく。
これが間を開けずに連続して行われブレイズさんを八本の槍が立て続けに襲う。
火の槍を拳で打ち払い。
水の槍と雷の槍を躱し。
風の槍を拳を振った風圧で相殺し。
光の槍と闇の槍はそれぞれ両腕で払いのけ。
続く石の槍を受け流し。
最後に氷の槍を真正面からうち砕く。
全ての障害を払い抜けたブレイズさんは僕を射程圏内に捉える。
「届いたぁ!」
ブレイズさんは拳を大きく引くと、一拍おいて突き出す。
僕は腕をクロスにしたうえで<魔力障壁>を展開。
しかし、それだけでは耐えきれずにそのまま地面を削りながら数十センチ後退させられる。
それを受けて直ぐに僕は反撃に入ろうとしたがそこまでであった。
「ハハッ。俺の負けだな。
楽しかったな、またバトろうぜ」
そう言ってブレイズさんは光に包まれて消えていった。
「決まった!
ナギが武王ブレイズを圧倒し準決勝に進出だ~!」
司会のコールがかかり、会場からは大きな歓声が上がる。
そして、僕の準決勝進出が決定した。




