16話 決勝トーナメント最終日③
「それじゃあ、楽しませてくれよなぁ!」
その言葉と共に振り切られた右腕。
ズガガガガガガガ!!!!!
地面を削り、捲りあげながら見えない衝撃が僕の方向かって飛んでくる。
僕は、しっかりと腰を入れてその場で耐えしのぐことを選択した。
ビュウウウワァァァァァ!!!!!
踏ん張る姿勢を取っていった僕の所を凄まじい衝撃が風と共に吹き抜けていく。
ただ、僕としてはまだ余裕の範囲でありその場から一歩も動くことなく風をやり過ごした。
ガゴン! ビシッ!
結界に衝撃がぶつかり鈍い音がする。
と、同時に聞こえた嫌な音の正体を確認する為に僕は一度背後を振り向いた。
すると、そこには空中に浮かぶ亀裂がある。
結界にひびが入ったのだ。
「なんと!
開幕と同時に放たれた、武王ブレイズによる拳を振りぬいたことで生まれた衝撃波だが、フィールド上の地面を巻き上げてナギの方に進んだのちにそのまま通り抜けて結界に到達!
前代未聞である結界に亀裂を入れた!
未だに砂埃が舞っていてフィールド上を見る事は出来ないが、凪選手はどうなっているのだろうか」
この世界に来てからの初めての驚きである。
砂埃が少しづつ晴れてきており、周りが確認できるようになってきているのだがひどい惨状である。
何処が、と言われれば全部と僕は答える。
ブレイズさんの攻撃は本人から扇状に放たれたようで、そのように地面が抉れているのが確認できる。
「ハハハハハ!」
砂埃が殆ど晴れるとそこには蝋手を腰に当てて豪快に笑っているブレイズさんの姿があった。
上を向いて声を上げておりこちらにはまだ気づいていないようだ。
「砂埃が晴れた!
気になるナギの様子だが……!
無傷だ!
初期位置から動かずに何事も無かったかのように立っている!」
「「「「「ウォォォォォ!!!!!」」」」」
地の底から突き上げるかのようにコロッセオ全体に歓声が響き渡る。
「マジか!
耐えやがった!」
向こうも向こうで滅茶苦茶驚いているようであった。
「ナギ……だったか?
お前、すげえな」
「はは、けどあなたも結界にひび入れるなんて僕のこと言えませんよ」
「ハハハ!
自分じゃなんだが違いねぇ」
「じゃあ、今度は僕から行きますよ」
そう言って僕は足に力を入れるとその場から一気に飛び出す。
そして、一瞬にしてブレイズさんの目前へと移動した。
振るのは右の拳。
ブレイズさんの顔に向かって思いっきり腕を振り切った。
ブォォン
咄嗟に僕は体を捻り、わき腹を狙ってきたパンチを躱すと一度、バックステップで三歩程後ろに後退した。
ブレイズさんはそこから途切れることなく僕の方に向かってくる。
僕も、その場から前に飛び出す。
「はっ!」
僕が右腕を振りぬくが空を切る。
「オラァ!」
続いて放たれたブレイズさんの右腕も空を切り裂いた。
が、それだけには留まらず、またも衝撃が発生する。
直撃することは無かったものの衝撃は少し僕を少し掠って抜けていった。
そして、僕はバランスを崩して軽く左側に向けてよろめいた。
「ハァァァ!」
そこを逃すブレイズさんではなく僕に向かって再び右腕を振って来る。
流石に、躱すことが出来ないと思った僕は体制を整え、グレイズさんの方を向き直すと腕をクロスに組んでガードの体制を組んだ。
そして、次の瞬間ブレイズさんの拳が到達する。
「うっ」
腕に来た衝撃は予想を超えるものだった。
僕はそのままブレイズさんの腕を受け止めながら後ろに後退させられる。
そして、勢いが無くなった瞬間、僕は反撃に移る。
受け止めていたブレイズさんの右腕、その手首をしっかりと掴むとその腕が僕の方の腕を通るように体制を変える。
そして、腰をしっかりと下ろしてから一気に腕を引っ張り上げる。
「グァァ!」
ドスンと言う音と共にブレイズさんの背中が地面に叩きつけられる。
背負い投げだ。
「っ!」
背負い投げをした体勢から一転。
僕は一度その場を後退する。
グワァァン
目前をブレイズさんの両足が通り過ぎる。
背負い投げをされてすぐに腕の力ではね起きたブレイズさんが蹴りを放ったのだ。
僕は寸前でそれを躱し更に後退する。
「中々、やるじゃねえか。
魔法使いって聞いてたんだが俺の体術に着いて来るとはかなり驚きだぜ!」
「魔法だけじゃ師匠が許してくれなかったんでね」
師匠とは真美さんの事だ。
真美さんは魔法だけだと対処された時が辛いと言って僕に魔法以外の戦闘法の訓練をしてくれた。
武器全般使えるようにしてもらったがそんなに必要になるのかと時々思う。
「おお、そうか。
その師匠っていうのも気になるな」
「まあ、今は旅に出てるんでどこにいるかは分かりませんけどね」
嘘は言っていない。
真美さんは今は世界巡りをしている。
旅と相違ないだろう。
どこにいるかは……ノイマンに頼めば分かるんじゃないのかとも思う。
「そうか。
まあ、おしゃべりはこれくらいにしてもっとやり合おうぜ!
久々に対等の相手に出会えて気分が上がってるんだ!
楽しませてくれよ」
「うん。
じゃあ僕も貴方に楽しんでもらえるよう頑張らせてもらいますよ!」
僕とブレイズさんお互い火照って来た体の調子を確かめるように少し動き、それから目を合わせるとどちらからか飛び出した。




