14話 決勝トーナメント最終日①
そして、夜が明けて街に鐘の音が鳴り響いた。
「それでは~! 試合の時間だ!
今日は決勝トーナメント最終日。
即ち、本日、優勝者が決定する!
さて黄金の聖杯を手にするのは~誰だ!
では、今日の試合を始めよう!」
さて、今日は決勝トーナメントの最終日。
予選初日から六日が経った。
一昨日の夜にメアリーとの師弟契約を行い、僕にも弟子が出来たのだ。
因みに昨日あった試合は開始数十秒で圧勝だ。
流石にここまで勝ち抜いてきただけあってか、最初の『フレイムランス』三連発だけでは終わらなかった。
迎えた今日、決勝トーナメントの最終日は試合が詰まっていて今日の第一試合が僕の最初の試合だ。
それに勝つと、第二試合。
その次が準決勝である第三試合。
そして、決勝戦である第四試合。
問題なく勝ち進めば本日行われる全試合に出場することになる。
ただ、今日は四試合しかない分、各試合の間に休憩時間が設けられているのでその間にある程度は体力を回復することが可能だ。
「ではでは~、早速、本日の第一試合といこう!」
第一試合はフィールド五面を使って同時に五試合が行われる。
この試合以降は同時に二試合のみ行うこととなっており、五試合を同時に行うというのはこれが最後となる。
と、そうこうしている内に試合の開始の合図が始まった。
「それでは、三・二・一・試合開始!」
コロッセオに試合開始の声が響き渡る。
僕の対戦相手はイーズ・フレッド。
予選で同じグループとして勝ち残った内の片方だ。
この大陸にあるイリアス帝国と言う国で軍の元帥を務めている男で、予選の時は僕の『ブリザード』を防ぎきっていたから、実力はかなりあると思える。
試合が始まって以来、未だ僕と相手であるイーズ・フレッドは睨み合っている。
どちらも相手の出方を待つためだ。
僕は予選でかなりの強さの魔法を使っている為、相手は恐らく何かしらの対策をして来ていると思う。
そして、そのことを一度確認すると僕はこの静寂を断ち切る。
「来ないみたいだから僕から行かせてもらうよ!
『フレイムランス』!」
僕はこれまでの何時も通りに『フレイムランス』三連発を撃った。
これが対処できなければ相手にするまでも無いと思い使ってきていたが流石に今回は簡単に対応されると思う。
僕が撃った『フレイムランス』は三本とも寸分違わずに同じ軌道で相手であるイーズさんに飛んでいった。
そうして、次の瞬間。
炎の槍は中心から綺麗に二つに切り分けられ、三本が六本になってイーズさんの前で軌道を変え、それぞれ左右に飛んで行って結界に当たった。
結界に当たった槍はその形を失い、軽い爆発と共に消え去る。
「ハァァァァァ!」
槍の行方を見ていた僕がその雄叫びが上がった方を見るとイーズさんが剣を構えて突進してきている所だった。
「『雷撃』、『ウィンド』」
少し慌てて斜め後ろへと後退しながら魔法を発動させる。
『雷撃』で相手に注意を引き付けると共に、軽く地面の砂を巻き上げて『ウィンド』で風を使って多少の目くらましを行った。
「はっ!」
剣が横に一閃。
イーズさんが持っていた剣を振ると、『雷撃』は綺麗に両断され消失した。
加えて、剣を振った事で生まれた強風が『ウィンド』で生み出した風とせめぎ合い、逆に競り勝ち、砂埃を吹き散らしなのだった。
『雷撃』を切った時に多少の電流が腕まで流れると思ったのだが予想に反して何も反応を示さない。
「ハアッ!」
再び、イーズさんはこちらに向かって剣を振るってくる。
それを避ける為に僕はバックステップでもう一度後ろに下がる。
「『エアロセイバー』」
後ろに下がると直ぐに追撃を迎え撃つために魔法を放つ。
生み出された風の刃は自身の正面を一直線上に切り裂いていく。
もちろん、その範囲の中にはイーズさんの体も含まれ風の中で少なからずダメージを受けるとは思ったのだが……。
結果は予想を大きく外れ、イーズさんが剣を前に構えるとその剣を起点にして風は左右に引き裂かれていった。
これまで、魔法が効果を成さなかった理由が遂に判明することとなった。
イーズさんがその手中に持つ剣、それが魔法を防いでいた原因だ。
「魔断の剣……」
「ああ、その通りだ。ナギよ。
帝国の悲願の為に、手を抜くわけにはいかないのだよ。
この大陸を帝国が唯一国家として統一する為に。
勝つためにとれる対策は万全にする。
卑怯だとは思わないでいただきたい」
恐らく、帝国の大陸統一というのが聖杯に願う内容であるのだろう。
勝つために考え得る対策の一つに魔法の無効化が含まれていたようだ。
その対策として持ち出されたのが魔断の剣。
名の通り魔法を断つことが出来る剣だ。
ただ、そこまで万能というわけでは無くキャパシティーがあって全ての魔法を切る事は出来ない。
と言っても、今回そこを突いて行くことは不可能。
出来ない訳では無いのであるが、キャパシティーを超える魔法となるとどうしても『死せるもの無き決闘領域』の結界が先に砕け散ってしまうためだ。
「ええ、分かっていますよ。
勝負事で勝つためには相手の弱点を突いていくのは当たり前。
そして、……手の内を出来るだけ隠しておくのも重要ですから」
僕はそう言いながら次の手札を切る事を決意した。
「魔法を撃っても切られるというのならば、後は直接いくしかないですね」
その言葉に、イーズさんは軽く顔をしかめたが直ぐに張り詰めた顔に。
僕はそれを見て話は分かって貰えたようだと思い、次の行動に移った。
「『パワーレイズ』『スピードレイズ』」
普段はあまり使っていない魔法を使った。
普段は、こんな魔法を使わずに能力制限を緩めるだけであるが今回はなぜか能力をそのままで戦いたいと思った。
その為、制限されている能力を引き上げる為に強化系の魔法だ。
「これで、終わりにしましょうか」
「ああ、少し早いようだがその話乗ろう」
そして、僕とイーズさんは同時に地面を蹴った。




