13話 師弟
「じゃあ、師弟契約の話をしよう」
最終試合が終了したのが十八時で、それからこのログハウスに帰ってきて食事と入浴を全員が済ませると、今日の本題であるメアリーの弟子入りの件で会議を始める事となった。
部屋のリビングにあるテーブルとイスの配置を少し変えてそれぞれ座っている。
始めに、テーブルを中心にして左にイス三脚、右にイスを一脚配置し向かい合って座るようにした。
もちろん、一脚の方はメアリーが座る。
そして、向かいに僕。
僕の左が華奈で、右がリリィだ。
なんの説明も無ければ何かの面接に見える様である。
「始めに経緯の確認だね。
最初にメアリーさん。本名がメアリー・メメリー。
この大陸の北部にある塔に住んでいて、大賢者の名で知られている。
今回は、聖杯争奪戦に参加し決勝戦の第一回戦で僕と当たって敗退。
その後、僕と試合をしたことによって僕から魔法を教わるために弟子にして欲しいと申し込んだ。
大体、これで合ってるかな?」
「はい、間違いないです」
「それで、弟子にしてもらえるのであれば何をしたって構わない……と」
「はい」
「じゃあ、ここからが本題だね。
今日の朝、伝えたと思うけど弟子にすることは構わない。
ただし、こちらの示す条件を呑んでもらい魔法にて『契約』する。
それでも構わないかい?」
「はい、何でもすると言いましたから」
「うん。分かったじゃあ条件を教えるね。
条件は……僕たちが示す情報に関しての秘匿。
ただ一つ。
そして、契約はしないけども他の条件としてあと二つある。
一つが、この世界には基本戻れずに僕たちと一緒に来ること。
そして、二つ目が弟子として扱うにあたってメイドとしても活動すること。
条件としては以上三点。
この条件が飲めるならば弟子とすることを許可する。
メアリーさん、どうする?」
僕は、事前に決めておいた条件を提示してメアリーに確認を取る。
メアリーの方を見ると少し悩んでいるようだった。
悩んでいるようだったので僕はそのまま無言で待つことにする。
「……一つ良いですか?」
悩み始めて一分程でメアリーが顔を上げてこちらに聞いてきた。
「何か質問?」
「はい」
「良いよ、話してみて」
質問との事だったので僕は隠しごとをするわけではないので了承した。
「じゃあ、この世界に戻って来れないって言うのはどういう事でしょうか?」
難しい質問だ。
この世界に戻って来れないと言うのを説明するためには秘匿の方の情報を交えなければ説明できない。
が、契約をしていない今の状況だと説明することが出来ない。
その為、ここは素直に話す他ないと思う。
「それは、説明しておきたい所ではあるんだけど最初の、情報の秘匿の項目に引っかかるから詳しくは説明できない。
言葉通りに受け取って構わないよ。
もう少し、分かりやすく言えばメアリーさんの住んでいる塔やこの町などには戻って来れないとでも思っててくれればいいよ。
説明できるのはこれ位かな。
それでどうする?」
再び、メアリーに答えを求める。
「……決めました。
ナギ様、私を弟子にしてください!」
「えっと、……てことは?」
「契約を結びます」
決意が決まったような力強い視線を伺うことが出来た。
メアリーが出した答えに僕が異を唱えるつもりは一切ない。
「よし、じゃあ『契約』を結ぼうか」
メアリーが契約を結ぶと決めたので早速そちらへと移る。
「それじゃあ、僕が契約内容を読み上げて、それから異論は無いか聞くからそこで答えてね。
その後、最後の確認として契約を結ぶか聞くからそこで問題なければ契約しますって声を上げれば契約が成立するから」
「分かりました」
「それじゃあ、始めるよ。
『我、第三世界線神皇|《慈愛》朔月凪が汝、大賢者メアリー・メメリーと契約を取り交わす。
汝、我の示したる情報を秘匿すべし。
我、汝を弟子と認め我が英知を分け与える。
是、魂に刻まれ契約を破ることを禁ず。
汝、メアリー・メメリーよ、異論はあるか?』」
今回使用するのは<概念魔法>の中に属する、『魂契約』と言う魔法である。
名の示す通り、魂に刻みこんで結ぶ契約であり破棄することは出来ず、またその強制力は絶対。
基本的には無意識に禁則事項を回避するようになり、それでも禁則事項に触れようとすれば一時的に体を強制停止させられるようになっている。
「異論はありません」
僕の言葉に応じてメアリーさんが答える。
「『我、第三世界線神皇|《慈愛》朔月凪は契約の承認を求める。
汝、大賢者メアリー・メメリー、契約を結ぶか?』」
僕は契約における最後の言葉を言い終える。
この後、メアリーが返事をすれば終了だ。
「契約を、結びます!」
「『契約は成立した』」
僕の成立の声と共に、僕とメアリーの間に萌黄色の光が発生。
その光はそのままメアリーの左手へと吸い込まれそれから僕の紋章を手の甲へと刻み込まれる。
それが、契約の証だ。
「うん、しっかりと紋章が刻まれたみたいだね。
それが僕とメアリーさんの契約の証だよ。
まあ、しばらくすれば見えなくなるから気にしないで」
「分かりました。
あと……、ナギ様の呼び方なんですが……」
証については分かってくれたようだが、メアリーには何か言いたいことがあるようで、少し口ごもっている。
「僕の呼び方っていうのはメアリーさんが僕にってこと?
それとも、メアリーさんを僕が呼ぶとき?」
「ナギ様が私の事を呼ぶときです。
さんって付けなくて呼び捨てにしてください。
弟子なのにそんな呼び方されて、なんだか居心地が悪いです」
「うん、そう言う事ならメアリーって呼ぶことにするよ」
「はい、それでお願いします」
まだ神皇になる前から人を呼ぶときに呼び捨てをするのがなんだか慣れない感じがしていつもさんとか付けて呼んでいた。
まあ、相手の立場を考えたりして変えたりしていて、今回はさんはつけたままでもいいかなとも思っていたが本人の希望があったので今度からは呼び捨てにする。
契約を終えたので、僕たちの事もメアリーに話していこうと思う。
僕は、華奈とリリィの二人と共に神皇に関しての事や今回、この世界に来た目的をメアリーさんに教える。
それと共に残りの日数の行動についても再度話し合った。




