10話 弟子は大賢者?
「えっと、それは僕から魔法を教わりたいって事で良いかな?」
「ええ、その通りです。
先ほどの試合、そして今回の質問。
それを踏まえて貴方から魔法を教わりたいと思うんだけども……。
いいかしら?」
メアリーさんは僕が自分よりも魔法が使えると見抜き、魔法の腕を磨く為に僕の弟子になり魔法を教わりたいそうだ。
「う~ん……」
今回、この世界に来ているのはバグ聖杯を回収するためだけだったので正直かなり悩む。
魔法を教える事には問題は無いのだが……。
「ダメですか?
見返りとして、出来る事なら何でもしますから!
どの位の年になっているか分かりませんが体の年齢は止まっていますので私の体も好きにして構いません!
どうか、弟子にしてくれませんか?」
悩んでいるうちにとんでもないことを言い始めた。
自分の体を売ることは好きではない。
ただ、言い換えるとそれだけの覚悟もあるとも言える。
ただ、二人も居るのでそっちにも確認する必要があり直ぐに答えを出すことは出来ない。
一時、待ってもらおうかと思う。
「ごめん」
「ダメですか!?
……私の体じゃ満足できませんか?」
僕の口から考えがまとまらずに飛び出した言葉にメアリーが一層気分を落ち込ませて答える。
「あ、いや、そうじゃなくて……。
少し答えを待ってもらっても良いかな?」
考えた末にたどり着いたのが回答を引き延ばすというこの結果だ。
ただ、うやむやにするわけでは無く、華奈とリリィと話し合ってちゃんと答えは出そうと思っている。
「……分かりました。
お待ちしています」
「ありがとう。
最終日の表彰式が終わった後で良いかな?」
「はい」
「じゃあ、僕は試合があるから」
そう一言残すと、僕は下を俯き落ち込んでいるように見えるメアリーの横を少し申し訳ないように思いながら通り抜けて控室に向かう。
「決まった~!
二回戦第一グループの最後の試合が決着した!
お互い拳を使った殴り合いを制したのは、このコロッセオにて数々の優勝を果たした決闘王ガラン・レオン!」
本日の最終試合の決着のアナウンスが入る。
因みに、同じグループで行った僕の二回戦の試合であるが、直ぐに終了した。
相手は、大剣を持った男。
装備はそれ以外には、胸当てと両手に着けたガントレットだけ。
装備から、国家所属ではなく傭兵だなと思いながら手始めに『フレイムランス』を三発続けて全く同じ軌道で飛ばしてみた。
相手の男は大剣で一発目を勢いよく切り払ったところで初めてもう二発あることに気づいたようで急いで剣を使ってガードしようとするのだが、大振りで切り払ったために遠心力が付いており敢え無く残り二発が胸に直撃。
巻きあがった砂埃と熱気が晴れる頃には男は白い光に包まれて消え去っていった。
開始、二十秒ほどでの勝利だった。
試合を終えた僕は観客席戻って二人の間で本日の試合終了を迎えた。
試合が終わると観客たちはおもむろに立ち上がってぞろぞろと帰っていく。
僕達は最後の方に会場を出るとそれから最寄りの裏道に入るとそこで<箱庭>を起動しコテージの中に入った。
ご飯の準備をしながらそれぞれシャワーを済ませ、それから食事を開めた。
今日の夕飯はとんかつ。
因みに昨日はかつ丼。
華奈とリリィが二人でゲン担ぎだと言ってノリノリで作っていた。
「二人に相談したいことがあってね……」
「ナギ様、相談っていうのは何でしょうか?」
箸でとんかつを一切れつまんだままリリィが動きを止めて返事を返してくれる。
華奈も、もぐもぐと口を動かしながらこちらに視線を向けてくれているようだ。
「一回戦の相手の大賢者って覚えてる?」
「覚えてるよ。『イグニスブラスト』使った人でしょ」
口の中の物を飲み込んだ華奈は憶えていたようで使った魔法を答えた。
「そう。
まあ、メアリー・メメリーっていう名前があるんだけどね」
「それで、そのメアリーさんがどうかしたんですか?」
「最後の試合の控室に行く時にね、声を掛けられたんだ。
魔法の弟子にして欲しい、だって」
「で、凪はなんて答えたの?」
「取りあえず二人と相談する為に保留しといた」
「そうなんですか?
だったら早めに決ないとですね」
「そうなんだけど……。
二人は賛成、反対?」
弟子を取るとして今後の対応で色々と決めなければならないが、その前にこれを聞いておかなければいけない。
「ん、私はいいよ。
リリィちゃんは?」
「私も大丈夫です」
「って事だよ、凪」
二人とも賛成と即答してくれた。
「うん、二人ともありがとう」
「それで、どういう扱いにするの?」
「そこなんだよな~」
メアリーにどこまで話すかという問題だ。
「それなんだけど、僕が考えてるのはメアリーを“花園”に連れて行ってそこで館の管理をしながら魔法の練習をしてもらうって考えなんだけど、これはある程度メアリーと話してからだね」
「うん」
「分かりました」
まだ、メアリーとは話していないがそのような扱いでいこうと考えている。
ただ、本人が残りたいと言うのだったら話し合って別の方策を取りたいと思う。
メアリーはこの世界最高の魔法使いと言う自覚があったのですがそれは一瞬の内に凪に破壊されました。
それと同時に凪に対する高慢な態度が崩れ、自分より凄いという尊敬の念が生まれ精神の奥深くに残っていた魔法を学んでいた少女時代が表面に出てきたという形です。




