表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
4章 新月の夜に捧ぐ聖杯

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/555

8話 決勝トーナメント初戦

「第二グループの第九試合!

 イデアの塔の大賢者、最強の魔法使い、メメリー・メアリー!

 対するは謎の魔法使い凪の魔法使い対決だ!」


 名前が呼ばれた。

 僕の対戦相手はこの世界で大賢者と呼ばれているメメリー・メアリー。

 普段は大陸の北端に位置する塔で引きこもっているらしい。

 その割には知名度は知らない人はいないと言ってもいいほどで、何度か出てきた時に見せた魔法の腕から最強の魔法使いとも呼ばれる。


 ただ、実際の見た目はかわいい少女のようだ。

 未だにとられることのないフードの奥からこちらへ視線を感じる。


 そんな事を考えている間にすっかり選手紹介は終わり開始を待つのみとなっている。





「それではお待たせしました!

 これより、決勝トーナメントの第二グループ全五試合を開始する!

 三・二・一・試合開始!」


 司会によって試合の開始が告げられて、早い所では既に対戦する者同士がぶつかり合っている。

 一方で僕の方と言えば双方向かい合っていた。


「それで、あなたは降参する?」


 そんな事を言い出したのは対戦相手であるメアリーだ。


「いいや、そんな事はしない。

 どうしても聖杯を手に入れたいからね」


「そう……。

 残念ながら戦わなきゃいけないみたいね」


「もとからそういう場ですから」


「予選を見ていたけども貴方、中々いい才能を持っていると思うわよ」


「それは、どうも」


「でもね、私の魔法には及ばないと思うわよ」


「やってみないと分からないと思いますが?」


「まあ、そうね。

 じゃあ始めましょうか」


 僕と相手のメアリーの纏う雰囲気が一瞬にして張り詰めた物となる。


「「『ブリザード』」」


 双方同じ魔法を選択した。

 二つの横向きの氷の竜巻は真っ直ぐほぼ二人の中心の位置でぶつかり合い、双方の威力を削っていく。

 ぶつかった中央では氷が押し出されて、周囲の地面へとぶつかり整地されていた地面を荒らしていった。


 約十秒続いた氷の竜巻はどちらからともなく威力を減衰させていった。


 フィールドは現在、氷同士がぶつかり合ってできた微細な氷が至る所を舞っており視界を真っ白に染めている。

 ふと、いやな気がした僕は体を左にずらす。


 ヒュッ


 白い視界を裂くかのように見えない刃が僕の右側をすれすれで通り過ぎる。

 恐らく風系統の魔法だ。

 この視界ではどこから魔法が来るか分からない為、取りあえず防御手段を用意することにする。


「『不可視の障壁』」


 魔法を唱える。

 この魔法はオリジナルであり、名前の通り見る事は出来ない障壁を展開する。

 障壁は自身の体の中心を起点として球体に三百六十度展開されている為、死角は無い。

 また、強度は『結界』の十倍であり、基本、割れたことは無い。


 カン!


 障壁に何かが当たった音がする。

 前をよく見れば風の刃が大量に飛んできていた。

 障壁を展開している為、それに防御を委ねる。


 しかし、直ぐ晴れる物と思っていた氷の粒子が未だに消えない。

 ……いや、これは!

 霧だ。

 恐らくメアリーが発動させている魔法だと思う。

 そして、魔法を違わず当ててきているのは術者だろうか?

 霧の中でこちらの位置を把握しているらしい。

 現状を考えるならば霧を晴らすかこれを逆手に取るかだ。

 僕はある程度の作戦をまとめると実行に移す。


「『転移』」


 始めに、場所を一気に移動する。

 ただし、結界から出ると失格になるのでそこだけは気を付ける。


 転移先は恐らくメアリーの背後。

 この移動で隙が生まれていればと思いながら次の一手をきる。


「『ウェザーコンディショニング』」


 この魔法を使用して一気に霧を晴らした。

 天候魔法であるこの魔法は、天候を変更させる魔法であり、簡単に霧を晴らすことが出来る。


「なっ!」


 前から声が聞こえる。

 見えたのは先ほどまで僕がいた方を向いていたメメリーだった。

 メメリーは試合開始まで付けていたフードを外し、その銀色の長い髪をなびかせている。


「霧を出して相手の視界を奪う。

 そして、自分は水滴の動きなんかを把握して相手の位置を特定。

 一方的に攻撃する。

 これで、合ってる?」


 僕は後ろから問題の解答をするかのように声を掛ける。


「ええ、その通りよ」


 振り向いたメメリーは素直に答える。


「にしても、中々やるようね。

 まあ、これは振るい掛けのようなものよ。

 私と勝負するためのね」


「それで、僕はどうなのかな?」


「ええ。

 文句なしに合格よ」


「それは良かった」


「って事で! 『イグニスブラスト』!」


 どうやら、この会話も油断を誘うものだったらしい。

 僕は何の対応も取らずに炎の激流の中に飲まれる。

『イグニスブラスト』は日輪魔法第十位の魔法だ。

 火属性は火力が他の魔法よりも高くなっている。

 そのため、生半可な防御はこの魔法の前に意味を成さない。


「お~っと! 第九試合で動きがあった!

 大賢者対謎の魔法使いナギのこの試合だが、先ほどまで真っ白で何も見えなかったのだが、霧が晴れたと思うや否や、今度は大規模な火炎がフィールドに発生した!

 発生させたのは一人、涼しそうに立っている大賢者だ!

 ナギはどうなったのだろうか!?」


 ここにきて司会の実況が入る。

 先ほどまでの霧で何も見えず実況できなかったようだが、霧が晴れたタイミングで動きがあったためすかさず説明を入れたようだ。


「おっと……。

 火炎の勢いが収まっていく!

 ナギは大丈夫なのか~?」


 試合の動きを実況する司会。

 そして、それにより僕と大賢者の試合に観客の視線が集中する。


 フィールドを包んでいた火炎が収まっていく。

 僕はその中で何事も無かったかのように立っていた。

 この一撃で『不可視の障壁』は砕かれたが、自身にダメージはまだない。


「なんと!

 ナギは何事も無かったかのように立っている!」


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


 実況を聞き、試合を見てその言葉が正しいと理解した観客たちは僕が大賢者の魔法を耐えきったことに対してだろうか盛大な歓声が上がった。


「チッ! 何なのよもう!」


 メアリーは観客による歓声が上がる中、そう漏らした。


この作品に対して評価やコメントを頂けると力になります。

ポイント評価はここから更に下にスクロールした所で付けられますのでご協力をお願いします。


次回更新は9/1の20時の予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ