7話 聖杯公開
僕達三人は翌日翌々日とコロッセオに通い試合を観戦した。
そして、迎えるこの世界四日目。
今日は二試合目に僕の決勝トーナメントの初戦がある。
僕が集合時間に合わせて会場入りすると、僕はそのまま決闘場へと案内される。
決闘場に着くと、決勝トーナメントに進出した選手たちが、五か所作られた小型の円形フィールドの中にそれぞれ集められていた。
「それでは~!
本日からは聖杯争奪戦、決勝トーナメントだ!
しかし! 試合を始める前にこの大会の主催者であるガハルド・ボットルテ様からの挨拶を頂く!」
僕が決闘場に入ってから五分程が経過しそのようなアナウンスが会場に響き渡る。
そして、決闘場に入場するためのゲートの一つからスーツのようなものを着た一人の男が入って来た。
また、その後ろに幕の掛かった台を押す人と、護衛、補佐役の人が続いて入り、全員が作られた五つのフィールド、その中心に移動した。
「ご紹介に預かったガハルド・ボットルテだ。
この度、五千をも超える人数の参加の申し込みがあり大変うれしく思う。
さて、私がここで挨拶をさせてもらうのには一つの理由がある。
皆は、今回の優勝賞品に疑問を持たなかっただろうか?
すべての願いを叶える。
そんな道具なんて物があるのだろうかと。
だが、それは実在するのだ!
私は実物を見てもらえば実在すると理解できると確信している。
それでは、聖杯の公開だ!」
選手、客席に詰め掛ける人々は口々に歓声を上げる。
その中で主催者であるガハルドは持ってきた台車を自身に寄せさせると、掛かっていた幕の一端を掴んだ。
そして、幕を一気に引きぬく。
会場は先ほどの歓声が上がっていた頃の熱気と打って変わって静寂が訪れる。
赤い布が敷かれた台の上。
その中のガラスケースの中には金色のワイングラスがあった。
通常の聖杯は杯型なのだが、バグ聖杯だと何かを受け止める器の形を取り個体ごとに違ったものになる。
今回はワイングラスの形を取っていた。
会場に居る人々、その全てが時間を止められたかのように何一つ動くことなく聖杯に魅入っていた。
「どうだね?
これが今回の優勝賞品である聖杯だ。
このまま鑑賞するにしても、永遠と見ていられるような美しさを持つこのグラスだが、実際にはそれの持つ能力は無二の物である。
――使用者の願いを一つだけ何でも叶える。
金か? 女か? それとも、力か?
望むものは手に入る。
決勝に進んだ者たちよ!
自身の力、その全てを出し切って、自身の望みを叶えて見せろ!」
「「「「「ウォォォォォォ!!!!!!」」」」」
会場全体から地の底から揺れる雄叫びのような歓声が上がる。
それを聞きながら、満面の笑みを浮かべるガハルドは大きく一礼すると聖杯を再び布で隠してゲートの中に去っていった。
「……ええっと、聖杯の公開に一気に会場が盛り上がった所で。
それでは! 改めまして、決勝トーナメント一日目!
本物の聖杯を見て奮起する参加者たち!
望みをかなえるのはいったい誰だ!?
決勝トーナメント第一グループ試合開始!」
会場は、聖杯が出て以降、静まること無き熱気を見せそのまま第一試合に突入した。
試合は、五か所作られたフィールドで同時に開始されている。
それを、僕はフィールド脇の待機スペースのテントの中で座って待つ。
試合が始まった五か所のフィールドではそれぞれの選手がぶつかり合っている。
今回、予選から決勝戦トーナメントの組み合わせを決めるのに、取られた手段は抽選だった。
そのため、剣士対剣士、魔法使い対魔法使いの場合もあれば、魔法使い対剣士の組み合わせもあるため、相性によってはすぐに決着することもある。
僕は、次の試合でどのような戦い方をしようか考えながら試合が終わるのを待った。
「最後の試合が終了した~!
魔法使い対魔法使いとなり、魔法での相殺が続き中々これぞと言った一手が入らないまま進んだこの試合だが、ルート選手が集中を切らしたのだろうか詠唱に失敗。
その隙に魔法を打ち込んだ、ミーファ選手の勝利だ!」
観客席から歓声が上がった。
フィールドでは大きな破損があった場所が運営の魔法使いたちによって修繕されている。
「それでは、第二グループ参加者の方は移動の準備をお願いします!
間もなくフィールドへ入場となります!」
運営の女性がテントの傍まで来ると入場前の声掛けを行ってから去っていった。
僕は、準備を済ませていたので立ち上がるとテントの外で待つことにする。
現在の装備は、いつものローブで剣は次の試合に使わない為、<アイテムボックス>の中だ。
因みに、試合中に<アイテムボックス>を開くと失格となる。
外で一分程待ち、それから来た運営の人に案内されて五つのフィールドの内の一つに上がる。
僕が、フィールドに上がると、向かい側から対戦相手が上がって来る。
紫色のフード付きのポンチョを着て、大きな宝石が一つ嵌り、細部まで繊細に彫り込まれた彫刻の入ったかなり高価そうな杖を持った女性。
いや、身長は低く少女と言った方が良いと言う風だ。
その少女はフードを深くかぶっており、目がギリギリ見える様な状態である。
そのまま相手を観察しながらフィールド上で少し待つと司会により選手の紹介が始まった。




