5話 予選一日目
「それでは、ナギ様。
明日は、一番の鐘の後、直ぐに開会式が行われます。
その後に予選が開始となりますので開会式終了までに選手控室に入室するようお願いします。
入り口は、正面入り口から少し左にそれたところにある関係者入り口で、それ以降は中に表示する案内に従ってください」
コロッセオの前にあったエントリー受付のテントで僕は明日の争奪戦のエントリーをしている。
参加申込書と、怪我などの対応に関する同意書に記名をすると受付に提出した。
受付の人は不備がないか確認すると、明日の集合についての説明をしてくれる。
「これでエントリーは完了となります。
ナギ様の活躍をお祈りしています」
そう言って、受付の人は頭を下げた。
後ろで並んでいる人が多かったため僕はすぐにその場を離れるとテントを出た。
「凪、エントリー終わった?」
テントを出ると外で待っていた華奈がすぐにこちらに気づく。
「うん、問題なく」
「じゃあ、ここら辺見て回ろ!」
「そうだね。
リリィは何処か行きたいところある?」
「えっと、あそこのポテトの屋台が行きたいです」
「よし! じゃ~そこから行こ~!」
気分上々の華奈を先頭にして僕たちは後の時間を屋台巡りに費やした。
ゴーンゴーンゴーン
翌日、大体九時ごろだろうか。
街に鐘の音が響き渡る。
この世界で、時間を知らせる物はほとんどなく、人々はこの鐘を基準に生活している。
鐘はどんな小さな村にでもあり、大体、九時、十二時、十五時、十八時の三時間ごとになっている。
この間隔は、砂時計で図られているらしい。
そして、この街の鐘はコロッセオの正面入り口、その真上に設置されている。
「それでは! これより聖杯争奪戦を開始する!」
僕は、今用意されていた控室のイスの一つに座っている。
アナウンスはコロッセオ場内中央にある闘技場で行っており、主催者や来賓の人が挨拶をしてから始めに予選が始まるとの事だ。
控室には僕以外の参加者も居る。
それぞれ精神統一をする者や、近くの人と話している者、自分の得物の整備をしている者など様々だ。
今回の予選は、主催者の宣伝が良いのか悪いのか人が集まり過ぎたため、一気に大人数でのバトルロワイヤルをするようだ。
ルールは色々と細かくあったが、要約すると殺しの厳禁。
それに尽きる。
装備に関しての制限は殆どなく、毒物や呪われた物のみ禁止だ。
刃物に関しては運営側の人が一時的な<切れ味低下>の付与を行う事で対応する。
そして、決闘場には、『死せるもの無き決闘領域』の魔法が展開されるため万が一の死亡も無く、気絶したものは場外へと排出される。
そして、その中で残った三名が本選出場だ。
一日の試合数は九試合でこれが三日間あるため二十七グループ。
その中で三人なので八十一人が本選に出場する。
試合は一試合五十分と入れ替えなどが十分のセットで行われる。
時間制限があるため、時間が経つごとに気絶する体力残量の割合をどんどん上げていく事で対応するそうだ。
「それでは~、第一試合の開始だ!
参加者のみんなは準備はいいか!?
では、カウントダウンで開始だ!
三・二・一・第一試合開始!」
そうして、第一試合が始まったようだ。
開始と共に、観客たちの歓声が上がるのが僕の居る控室まで聞こえてくる。
因みに、僕の試合は第三試合なので後二時間ほどここで待機のようだ。
僕はこの暇な時間に、華奈たちと<念話>をしたり新たな魔法の構想を練るのに費やすことにする。
「それでは、第三試合に参加する皆さんは移動をお願いします」
部屋に入って来た女性の職員が声を張り上げる。
それを聞いた部屋の人達はぞろぞろと立ち上がり、職員を先頭に移動を始めた。
僕も、それについて列の後ろの方を歩く。
そうして、少し歩き決闘場に入るための通路に辿り着いた。
「それでは皆さん! もう少しで第二試合が終了します。
終了次第、中に入り決闘場に上がって開始の合図をお待ちください。
開始位置はご自由にお選びいただけます!
それでは、もう少々お待ちください」
決闘場入場直前の最後の説明が終了する。
この大会の参加者は約五千人との発表があった。
予選は二十七試合あるので一試合大体百八十五人が出場する計算だ。
そのため、試合会場は必然的に狭くなると考えられる。
試合会場は直径一キロの円形。
試合会場の端を選択すれば背後からの攻撃を受ける可能性は無くなるがこの人数だ。
全員が端から始めるほどのスペースは無いだろう。
逆に中心から始めれば他者から狙われやすくなるだろう。
ただ、最初の内に力を見せておけば脅威とみなされ攻撃される確率は低くなると思う。
この二つを考えると僕的には後者の方が楽だと思い、中央から始めることにした。
因みに、戦闘方法は人数が多い事から武器を使うよりも魔法を使った方が楽なので基本魔法のみを使う予定でいる。
「それでは、入場してください!」
係員の大きな声と共に参加する選手たちは我先にと走って飛び出していく。
これは、初期位置の取り合いの為だ。
先に出た選手は、どんどん端の方に陣取っていく。
僕は、中央から始めることにしていたため歩いて移動する。
会場は見渡した感じ客席に空きスペースは見られなかった。
それどころか、階段や通路などでも人が立ってみている。
選手たちが入場すると歓声が上がり、自分の応援する選手の名前を叫んでる人なんかも居た。
僕が、決闘場に入る頃には端のスペースに空きは無く決闘場のど真ん中を避けるかのように選手がまばらに立っていた。
僕は、その中をどんどんすり抜けていき、周りの選手がガヤガヤする中、一人中央に立った。
それから、会場をぐるっと一周見渡す。
すると、時刻を知らせる鐘の斜め下あたりに、華奈とリリィを見つけたため手を振ると、二人は手を振り返してくれた。
それから、周りの選手の装備を観察しながら開始を待つ。
「それでは、第三試合を始める!
準備はいいか!? 三、二、一、試合開始!」
司会のその掛け声とともに観客の歓声が上がり、僕の試合のが開始された。




