4話 資金集め
武器屋の中は、武器が壁際横一列に綺麗に並べられていた。
その中央には、ショーケースが有ってその中にもいくつかの武器が入っていたが売り場に並べられているものとは別格の物だと一目で分かる物である。
また、奥には二階に上がる階段が有るが店員のいるカウンターがその前にあるため人は入れていないと思う。
「「「いらっしゃいませ〜!」」」
入店すると直ぐに店員の声が上がる。
そして、店内に居た三人の内、一番近かった一人が近づいてきた。
「本日はどの様なご用件でしょうか?」
「武器を売りたいと思っているんですが、可能ですか?」
「はい、お受けできますよ。
担当の者をお呼びしますので、カウンターの方に移動されてお待ちください」
そう言うと、店員は小走りで店のバックヤードに向かっていった。
僕達はそのまま、言われた通りにカウンター前に移動して担当の人が来るのを待つ。
それから一分もせずにカウンターの中にあったドアからガタイはいいけど背の低い男性が出てきた。
男性は、ドアの傍にあった台をカウンター前に引きずって移動させるとその上に乗り、こちらと目を合わせる。
「お待たせしたな。
儂は、この店の買取担当、ドワーフのゴッホルテだ。
お前さんが買取希望者で良いのかな?」
「はい」
「じゃ、早速だが物を見せてくれ」
僕は、この世界に来た時から背中に背負っていた剣をカウンターに一度下ろすと、鞘から刀身を取り出す。
「ほう、これか……」
そう言って、剣をゆっくりと持って顔を近づけて観察を始める。
すると、少しして目を一度大きく見開いた。
「少し聞きたいことがある。
こんな所で話をするのもなんだから上で話をしよう」
そう言うと、ゴッホルテさんは剣をこちらに一度返すと、台をもとの位置に戻す。
そして、こちらに付いてこいとでも言うべき目を一度、向けてカウンター内にある階段を上っていったので僕たちは三人で目を見合わせるとそれから階段を上ることにした。
階段を上った先には広いスペースがあり、いくつかの衝立が立てられていて個室のようなものが幾つか作られている。
そして、ゴッホルテさんはその先に続く廊下にあるドアの内、右側の一つの前に立っていた。
「こっちだ」
一言、そう言ってくれたので一直線にそちらに向かった。
そのまま、ドアの中へと案内される。
「取りあえず、座っとくれ」
そう言って、ゴッホルテさんは中にあった対面式のソファーの片側に座る。
僕達も、その反対側に遅れて座った。
「こう落ち着かんところですまんな」
ゴッホルテさんは先にそんなお詫びを入れた。
なぜ、このような謝罪があるのかと言うとこの部屋が原因である。
部屋のあちこちには、破損が見られるが、元はかなりいいものだとみられる武器や防具が散乱し、また、中には綺麗にされ、破損のないいい武器もあった。
「良いものだとな、つい買い取っちまってな」
「ははっ、そうなんですか」
基本、ドワーフという種族は鍛冶能力に長けている。
また、鑑定眼にも優れている為、中には、このゴッホルテさんのように武器収集の道に走る人も少なくはない。
「それで、しっかりと武器を見せてくれるかい?
さっき見た感じだとミスリル100%。
間違いないか?」
「ええ。ミスリル100%の剣ですね」
そう質問しながら、僕が出した剣をゆっくりと持ち上げながら細部までじっくりと観察していく。
そうして、刀身から柄まで全てをじっくりと見終わると、一度剣を置いた。
「こりゃスゲェな。
これ、スキル付与されてるな」
「<火炎>が付与されてます」
「<火炎>か!」
今回の武器に付与されている<火炎>は、剣に魔力を流すと刀身から火が噴き出すものである。
また、その火は一メートルまでだったら飛ばすこともできるのだ。
火は、魔力を流している間だけ噴出し、これは使用者へ熱を感じさせないようになっている。
「お前さん、これはどこで?」
「それは、控えさせてもらいます……」
「まあ、こんなスゲェもの、遺跡ぐらいだな」
自作と言うのはばらすとまずいので何とか濁したが、勝手に解釈してくれたようで助かった。
遺跡というのは、この世界の旧文明の物で、その頃は現在よりも魔法が発展していたため良い付与のある武器などは基本そこから出土される。
「にしても、これは闘技大会の優勝賞品になるほどの価値はあるだろうな。
それでも、譲ってもらえるのか?」
「はい」
「買い戻しって場合は金は割増だがいいか?」
「はい」
「よし! じゃあ買った!」
そうして、僕は剣を無事にゴッホルテさんに買い取ってもらうことが出来た。
「ふぅ、じゃあ次はエントリーだね」
僕達は買取を終えた後、店を出ると街の中央にあるコロッセオに向かっていた。
因みに、買取の方は二百六十万アラになった。
アラと言うのは貨幣単位で一アラは一円である。
「にしても、コロッセオに近づくたびにきつくなっていくね」
「まあ、参加に制限が無いのと、期限が今日の日没までだからね」
「もう、人混みは疲れた~」
「よし、じゃあエントリーが終わったら屋台で何か買ってから“庭園”でゆっくりしようか」
「うん♪」
「リリィもいい?」
「はい、私もこんな人混み初めてで疲れているので大丈夫です」
「じゃあ、急ごうか」
そうして、僕たちは早くゆっくりする為にコロッセオまでの道を急いだ。




