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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
4章 新月の夜に捧ぐ聖杯

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1話 夏の始まり

四章スタートです!

この章は少し長めになると思います。

 高天原訪問から一週間が経ち、僕と華奈は必要なものを持って高天原に用意されていた家に引っ越した。

 必要なものと言っても家具などはあったので持っていった物の殆どが服だった。

 そうして、残った夏休み期間に何をしたいかエアコンを掛けて冷え冷えの部屋でテレビを見ながらソファーに座って三人で話していた。

 三人というのは僕と華奈とリリィの事である。

 リリィの戸籍も無事に作成された。

 ただ、リリィには“アルメア”での立場もあるため、一ケ月に一度は戻るという決まりになっっている。


「凪~、後一ケ月くらいあるけどどうする?」


「外に行こうにもこっちでもかなり暑いからな」


 ここは、日本とは違う空間であるのだが、特性として向こうとある程度の気候がリンクしているらしくこちらでも陽が地面を焼いている。

 こっちのみで放送されている高天原テレビの天気予報では最高気温が三十度を下回る日はしばらくないと言っていたため、それを聞いただけでも外に出る気が失せた。


「あ・い・う・え・お」


 と、発音しながらノートに向かってすらすらと文字を書いているのはこの世界に来たばかりのリリィである。

 今は、手始めに日本語のひらがな、カタカナを練習している。

 まだ、始めてから一時間ほどであるが中々の習得具合を見せていてそろそろ漢字にも入っていいんじゃないかとも思う。

<言語適応>というスキルが勇者召喚の特典の一つにあるが、あのスキルは言語を聞く、喋る、読むという事に適応しているが、書く事には適応していない。

 だから、リリィは発音に合わせて書く練習をしている。


「ま~ゆっくり考えよ、華奈。

 リリィは今頑張ってるみたいだし」


「うん。そうだね」


「ん? お二人ともどうしたんですか?」


 華奈と二人でリリィを見ていたらその視線を感じてか顔を上げた。


「いや、リリィが頑張ってるねって華奈と話してたんだ」


「はい! 頑張ってます!

 もうちょっとで平仮名はカンペキです!」


「おお! 一時間ちょっとでか~凄いな!」


「ナギ様と一緒に居るためですから。

 こんな所で時間かけるわけには行きませんから」


 そんな事を言ってくれるリリィの事がかわいく思え、ついついリリィの頭まで手が伸びる。


「ひゃっ!」


 いきなりやったので、びっくりしたリリィの口からかわいい声が漏れる。

 が、驚いているのも一瞬で、その後はニコニコ笑顔で頭をこちらの撫でやすいように近づけてくれたのでそのまま撫で続ける。

 すると、華奈の方もそれを見て僕の反対側のリリィの隣に座っていた所から立ち上がると、空いていた僕の左側にピッタリくっつくようにソファーに座った。


「凪~、私も私も~」


 そのまま華奈は頭を寄せてくる。

 そう言われると断る理由もないので華奈の頭もリリィと同じように撫でてあげた。


 それから五分間は二人の頭をなでることに費やした。

 流石にそれからは僕の手が疲れてきていたことと、リリィの勉強が進まないので勘弁してもらった。

 二人もそれまでで満足していたため、不満も言うことなくそれに従った。

 その後のリリィの勉強速度が上がり、それから三十分後には平仮名、片仮名共に完全に習得を終えた。


 それから、三人で昼ご飯を食べると今度は三人でテレビを見ながら再びソファーに座る。

 ポチポチと華奈がチャンネルを回す。

 そうして、華奈はアニメのチャンネルにしてからリモコンを置いた。

 今やっているのは、夏休み特番で一クール一挙放送となっているアニメだ。

 内容は、何でも叶えられるという聖杯を巡って七人の魔術士が偉人などを召喚して戦わせ聖杯の所有者を決めるというアニメだ。

 因みに、このアニメから着想を得て『英雄再演』の魔法を作っていたりもする。

 それから、華奈はこのアニメの解説をリリィに始める。

 僕たち三人はそれからアニメを見続けた。





 それから、夕方になってアニメの放送も終了し、お腹も減ったという事で食事を始めることにした。

 夏には冷たい物、との事で今夜のメニューは冷やし中華とスイカだ。

 三人でキッチンに入ると、麺を茹でて冷やす係と具材を切る係に分担する。

 今回は、華奈が麺を茹でるそうなので僕とリリィで具材を切っていく。


 分担作業は効率よく進み、料理開始から十五分。

 早くも調理が終了し、三人はリビングに移動して食事を開始した。


「そう言えば凪、聖杯ってあるの?」


「あるよ」


「あるんだ!」


「ナギ様、どんなものなんですか」


「ほら、これ」


 華奈が聖杯が実在するのか聞いてきたので、<宝物庫>をパッと開いて中にある聖杯の内一つを掴んで取り出す。


「眩しっ!」


 聖杯が出てきた瞬間、一時辺りを黄金の光に包む。

 光が収まると高さが五十センチほどの優勝カップのような黄金の杯が見えるようになる。


「えっと、それが聖杯なんですか?」


「そうだよ。

 正確に言うと世界システムに事象を書き込むペンのようなものなんだ。

 これを祭壇とかに捧げて自分の願いを宣言すると、これが光の粒子になって一度散っていくんだ。

 願ったのが物だと、そのまま光の粒子がそれを形作って逆にそれ以外だと、光が一度大きく光って散って願いが叶う。

 因みに、これで実現できないのは世界の破壊と神皇の消滅の二つだね。

 後は、死者の蘇生に関しては死者の書っていう死んだ人の記憶が記されている本が第零世界線にあるんだけど、それが存在している必要があるね。

 それ以外は、ほとんど叶えられるよ」


「なんか、思ったよりもヤバい!」


「うん。だから基本、この完全体は作られることが無いよ。

 たいていの場合は、これを一度、破壊してそのかけらを使ってミニサイズの聖杯を作って願いを叶える機能を制限するんだ」


 聖杯は実際の所は魔力の塊。

 その魔力を利用して使用者の願いを世界システムに書き込み叶えている。

 ただ、完全体の聖杯の場合魔力量が膨大過ぎるため神皇がそれを解体し魔力量を制限した上で必要とされる世界に送り込むのだ。

 魔力量が減ればその分、願いを叶える効力も制限されることになるがそこは必要となる願いによってこちらで調整している。


「そんな感じなんだ~。

 で、どうやって作ってるの?」


「知らない」


「へ? どういうこと?」


「華奈ちゃん、さっきナギ様は作られるって言ってましたから、ナギ様は作っていないんじゃないと思いますよ」


「そっか~。

 じゃあ、誰が作ってるの?」


「うん、それはね……」


「「それは……?」」


「多分、世界システム」


「多分って何!?」


「いや、どこかの世界でこれが必要になった時にいつの間にか執務室の机に出てくるんだよ。

 それ見つけたら、世界の状況を確認して大体は機能制限版で済むから鍛冶場のハンマーで割ってミニサイズにして形を直してからから然る所に置くんだ」


「へ~。

 って聖杯ってハンマーで割れるの!?」


「壊そうと思って叩けば割れるよ」


「そうなんだ……」


 そんな事を話しながら夕食を食べていると、コンコンとリビングのドアがノックされた。


「入っていいよ」


「失礼します」


 僕がそう言うと扉を開けて入って来たのはノイマンだ。

 ノイマンは通常、“花園”で世界の監視を任せている。

 そうして、この家と“花園”は直通の転移門が作られている為、簡単に行き来できるが普通はずっと向こうに居るので何かあったんだと思う。


「で、何かあったの?」


「はい。中層世界に聖杯が出現しました」


 それが、今回の連絡の内容だった。


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[良い点] 全て完璧 [気になる点] 聖杯で邪神殺せば良くないですか? [一言] もっとチート要素増やしてください
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