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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
3章 【幕間】高天原の神秘の街

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3話 高天原神社

 月曜日の早朝、僕と華奈は転移を使用して“アルメア”から帰って来ていた。


 戻ってきた事による寂しさなのか結婚式の後の事を少し思い出した。

 城の中庭で行った結婚式が終わるとその後は、場内ホールで披露宴を行った。

 そこでは、国の貴族などの来賓者とそれぞれ挨拶することになって大変だった。

 その中でマルスリオン帝国から来ていたのは宰相のフリーデンさん。

 あの後の帝国の現状を聞き何とか上手くいっているようで良かったと思う。

 その翌日には、城下に出て結婚パレードを行うことになった。

 パレードは城の門から馬車に乗って出て王都の主要な道を使ってぐるっと街を一周して戻るというものであったが街の人達の熱狂ぶりは予想以上で人に押されて怪我した人を目の前で治療することになるとは思っても見なかった。

 そうして、パレードを半日行ってから後は三人で城でゆったり過ごして夜、泊まり早朝に返って来た。


 今日からはまた学校がある。

 転校の話は夏休みが終わってからという事で今日から夏休みに入るまでは諸注意や説明などに充てるらしい。

 因みに、夏休みまで後二日である。


 と、現状の確認はここまでにして朝食を作っている華奈の手伝いでもすることにしよう。





 それから三日がたって夏休みに突入した。

 戻ってきてからの僕たちのクラスは能力の確認や今後の説明などをしていたので学校に居ながら勉強などは一切していない。

 そして、夏休み期間にしなければならないといわれたことは引っ越しである。

 高天原市というのは書類上東京都に属することになっているが実際の所は元々存在していた日本に隣接する異空間の事を指す。

 入り口は東京と京都にある何か所かのゲートから入ることが出来る。

 高天原市では、秘匿されるべき神秘、魔法を使う事の出来る家系の一族や異族、また異世界などに転移して戻ってきた人たちが暮らしている。

 学校や病院などの公共施設も整備され、学校は小中高大の一貫性であり市内にはその学校が一校あるのみだ。

 そこでは、魔法などの専門的な授業も設けられている。

 また、病院も治癒系統の魔法を使える人が基本診療している為、市外のものとは雲泥の差である。

 引っ越しは、二つの方法があり学校の寮に入るか、それぞれで賃貸を借りるか家を買うかのどちらからかの選択制であった。

 大抵の人達は寮に入ることを選択し、八月の頭に引っ越しすることになっている。

 もう一つの選択肢を選んだのはお金持ちの人達で向こうに既に家がある所もあるらしい。

 そして、僕たちはある伝手があったため後者を選択していた。


「凪、そろそろ時間だよ」


「それじゃあ行こっか」


 僕と華奈は家を出ると最寄りの駅に向かった。





 そこから電車に乗ると一度電車を乗り換えて東京都二十三区外の西部の街に降り立った。

 都心とは違ってビルがまばらに立ち並ぶ街中を郊外に向かって歩き、そのまま住宅街を抜けて自然が増えてくる。

 そして、その先にある場所が目的地だ。


「にしても森が増えてきたね」


「まあ、人が多い場所だと情報漏洩なんかもある可能性があるからね」


「そうだね。最近は“アルメア”にいたからこういう景色の方がいいって思うんだよね〜」


「そうだね。向こうはビル群なんてものは無いし街から出れば草原とか森だからね」


「うん。あ! 赤いのが見えたよ!」


「あれが目的地だね」


「よし、レッツゴー!」


 この先の事を僕の口からしか知らない華奈は今日のテンションはすごく高い。

 既に一人で赤いものが見えた方に走って行ってしまっている。

 僕も、慌ててそれに付いて行った。


「遅いよ~。凪~」


 目的地に着いて待っていた華奈がそう言って出迎える。


「華奈が早いんだよ。

 高天原に行く門は逃げるわけでもないし」


「それはわかってるけど、早く行きたいじゃん」


「うん、まあ、華奈は初めてだからしょうがないのかな?

 まあ、そんな事より向こうにいこっか」


「そうだよ! 凪を待ってたんだから」


「ごめん、ごめん」


 そうして僕たちは右に視線を向けて大きな社を見渡した。





 僕たちの目的地は現在いる神社である。

 ここの名前は高天原神社。

 その名の通り高天原へと向かう事の出来る神社だ。

 ここの高天原神社は他にも複数ありその全てが高天原へ移動する事が出来るようになっている。


「それで、凪? どうするの?」


「取りあえず、移動方法には関係ないけど、せっかく神社に来たんだしお参り位はしない?」


「う~ん。早く行きたいけど、ここに祭られてる神様にも失礼かな……。

 よし! 凪、お参りしてから行こ!」


 話し合いの結果、お参りすることになり僕たちは本殿の前に移動する。

 華奈は、神様に失礼だとか考えているが実際ここに祭られている神よりも僕たちの方が格は上だからそんなこと考えなくてもいいんじゃないのかと一瞬思った。

 まあ、そんなことは置いておいて折り畳み式の財布をポケットから取り出すと開いて中からちょうどあった五円玉二枚を取り出して片方を華奈に渡す。


 カラ~ン


 お賽銭を投げ入れてからお参りの仕方とあった看板に書いてある通りに二拝二拍手一拝を行う。

 始めに、華奈と目を合わせてから同時に二回、神の祭られている本殿に向かって礼をする。

 続いて、その場で二度、手を叩く。

 華奈と叩くタイミングが合わさって綺麗なものとなった。

 そうして手を合わせ願い事をする。

 これも、僕たちが叶える側じゃね? と思った瞬間だった。


 ⦅何の御用でしょうか?⦆


 ⦅え?⦆


 頭の中にいきなり女性の声が入って来る。

 手を合わせながらどっかで聞いたことのある声だな~と思っているとそれに対して返事があった。


 ⦅天照大御神です。

 神皇様⦆


 どうやら、この国の神である天照大御神からの<念話>であった。

 天照大御神はこの世界において、神皇の存在を知る上位神の内の一人であり、真美さんから完全に神皇の位を譲られた時に一度挨拶したことがあった。

 声が記憶にあったのは挨拶をした時に少し話をしたからだ。


 ⦅お久しぶりです。

 まあ、異世界転移に巻き込まれまして戻った時に神秘管理部の人と当たりましてね。

 そちらに移動する事になったので今回はそのために挨拶に……と⦆


 ⦅そんな事でしたら、事前に一言くださればこちらからお迎えをしましたのに⦆


 ⦅まだ、普通の人だった時の感覚が抜けていなくてね⦆


 ⦅そうでしたか。それで、今からこちらに来られるのですか?⦆


 ⦅そうだね⦆


 ⦅それじゃあお迎えを門の前に用意しておきますのでお待ちしています⦆


 そうして、<念話>が切れる。

 少し長かったかなと思いながら目を開けると華奈が心配そうにこちらを見ていた。


「大丈夫?」


「うん。問題ないよ。

 それよりも最後に一礼しよう」


 そうして、僕たちは一礼すると本殿から離れた。


「それで、凪、どうするの?」


「うん。ある言葉を言ってから鳥居をくぐると向こうに移動できるよ。

 取りあえず、鳥居まで移動しようか」


 二人で鳥居の前まで移動する。

 鳥居はこの神社の敷地の入り口にある物で高さは五メートル程で木製のものである。


「それで言葉って?」


「それは僕が唱えるから。

 唱えた人に触れていれば一緒に入れるから手を繋ごう」


「うん♪ じゃあ凪に任せるね」


「じゃあ、行くよ。

『天照大御神の導きにより古の大地へと運びたまえ』」


 そうして、僕と華奈は手を繋いだまま光を放つ鳥居を潜り抜けた。


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