51話 神滅の聖剣
「で、もう一度聞くがなんでこんなことを?」
僕と邪神の二人だけになった所でもう一度尋ねる。
「私を悪と断罪した人々に復讐するためよ。
帝国を利用してこの大陸を統一して私に信仰を集める。
そして、この世界の神に成り代わって人々を支配したかったのよ」
僕のような例外を除いて、神は他種族からの信仰によって能力に強化が掛かるという特殊能力を持つ。
信仰度合いによっては下位神が上位神に勝る場合もあるのでかなり重要なことだ。
邪神フレイニーはそれを利用しこの世界の管理神に成り代わろうとしたようだ。
ただ、僕はそう考えるに至った人々に悪と断罪されたという部分が気になってもいる。
「とにかく私の邪魔をするなら排除するのみよ。
本当はこんなに早く力を使うつもりは無かったんだけれど」
フレイニーはそう言って懐の中から一本の短剣を取り出した。
刃は漆黒に染まり見ていれば何か惹きつけられるものがある。
また、刃は周囲の光を吸収しているようで周囲が少し暗くなっている。
「これが私の剣、神剣ブ・ラング。
晴れること無き闇の剣。
少しでも傷つけられた者は使用者に絶対服従を強いられる。
あなたはこれをどうにか出来るかしら?」
「ご丁寧にどうも」
「ええ。
すぐに終わってしまうのは面白く無いもの」
ご丁寧にも剣の詳細を説明してくれた。
あれこそ皇帝を支配していた原因であろう。
僕としては<完全耐性>があるため当たってもどうと言うことは無いが当たらないに越したことはない。
「じゃあ僕の剣も見せてあげよう。
神滅の聖剣。
名前が意味する通り神を殺すための剣だよ。
一度切られれば神であっても死を免れない」
「貴方も良いものを持っているじゃない。
神殺しの剣。
私が相手にするのに不足は無いわね」
そして、僕と邪神の間で緊張感が高まる。
お互いに睨み合い集中し体感する時間の流れがどんどん遅くなっていくように感じる。
一応、どちらの剣が相手に触れるかと言う勝負になっているためどちらが先に動くか。
その探り合いだ。
お互いの動きを観察し合いどんどんと時間は過ぎていく。
カチャッ
テーブルの上にあったティーカップが振動によって揺れ音を立てる。
僕と邪神が動き出したのはほぼ同時。
足が地面を蹴った振動によって音が立ちお互いの体が交錯する。
「んっ」
「どうやら私の勝ちのようね」
僕の剣を持っていた手の甲には薄く赤い線が入っていた。
ほぼ表面を掠った程度だ。
だが、刃が当たったということに違いは無い。
「それじゃあ、その力。
私のために使いなさい」
神剣ブ・ラングにより傷を付けることに成功した邪神フレイニーは顔を喜色に染める。
だが、実際の所はその効果を発揮していない。
僕は剣を<アイテムボックス>に収納して邪神の方に向き直った。
「いや、僕の勝ちだ」
僕は勝利宣言のためだけに目の紋章を発動させる。
それと同時に邪神の肩からは一気に血が噴き出した。
「な、なぜ……?」
邪神は肩を押さえながら力なく地面へとへたり込んで僕の方を見上げる。
その目に映るのは僕の萌黄色の紋章だ。
「それは神皇様の……。
これでやっと、やっと……。
ありがとう……」
最後に頬を涙が伝っていく。
矛盾する最後の言葉、涙の意味。
僕はそこに疑問を覚えた。
ただ、純粋な笑みを浮かべた邪神フレイニーは直後に死亡した。
「……」
僕は少しの間、黙想を捧げた。
遺体は回収して後で“花園”の端の方にでも埋葬しておこうと思う。
そして、僕は部屋を後にした。
「凪」
「ナギ様」
部屋を出てすぐに二人に出迎えられた。
その後ろには宰相フリーデンと廊下に寝かされた皇帝がいる。
皇帝は麻痺させただけだったので二人の内どちらかが寝かせたのだろう。
「どうだった?」
「うん、終わったよ」
「そっか……それでどうなったの?」
「次こそは間違えないようにってね」
華奈に報告をしていた所でフリーデンが話に割り込んできた。
「第三……邪神はどうなったのだ?」
「討伐させて貰いました。
彼女は人々に復讐を望んでいたようでしたので。
これで、皇帝及び帝国兵士の洗脳、眷属化は解けたかと思います」
「そうですか、ありがとうございます。
陛下への話は私が付けますので、講和の話の続きをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。
王国としてもそれが望ましいですから」
そして、僕たちはフリーデンに連れられて執務室へと戻る。
その後、講和についてリリィが全面に立って話を付けた。
結果としては王国優勢の決着となり、講和締結後に『転移』を使って第一皇子を即時返還。
賠償金の支払いを残してドゥルヒブルフ王国とマルスリオン帝国の戦争は決着した。
その後、王国に帰還。
僕たちは無事に魔王が討伐されたとの報告を受けた。
そして、その報告をもって第五世界線根源世界“アルメア”のドゥルヒブルフ王国を中心とした魔王騒動が終結する。




