50話 第二の邪神
僕たちはノイマンの案内に従って第三王妃のいるとされる部屋にたどり着いた。
コンコン
「どうぞ」
中から女性の声がした。
こちらの素性を聞かれると思ったのだがそんなことは無く許可を貰った。
そのため、僕たちは扉を開けて入室する。
「失礼します」
部屋に入ってすぐ目に入ったのは外からの日光だ。
正面は一面ガラス窓で日光を存分に取り入れられるようになっている。
また、カーテンや壁紙なども白でまとめられており光を反射して一層まぶしく思える。
そんな光の中に人影が一つ。
部屋の中央に用意されたティーテーブルから立ち上がったこの部屋の主。
第三妃だ。
「あら?
初めましてかしら。
お名前は?」
「ナギ。
ドゥルヒブルフ王国第二王女の夫でLランク冒険者です。
ちょっと聞きたいことがあったのでお邪魔しました」
僕だけが部屋の奥に向かい、華奈とリリィはドアを入ってすぐの所で待っている。
そして、僕は確認のために<鑑定>を発動させた。
「ええ、何でもお答えしますよ」
目の前の第三妃は気前よくそんなことを言ってくれたので僕も遠慮せずに聞くことにした。
「じゃあ、単刀直入に聞きます。
あなたは帝国を支配して何をするつもりですか?
邪神フレイニー」
「へぇ、あなた私のことが分かるんですか。
まあ、こうなってしまったのならばしょうがないです。
お答えしますよ。
私が帝国を支配して何をするのかって?
復讐ですよ。
私を悪に仕立て上げた人たちへの。
まあ、本人たちではないのが残念ですが」
性格が一気に転換した。
邪神の目的は人への復讐が目的である。
ただ、言葉の中に少し引っかかる点もあった。
「さすがに世界を滅ぼしかねない力は排除させてもらいますよ」
ドンドンドン
と、そのタイミングでドアが力強くノックされて皇帝が部屋の中に入って来た。
さらに、皇帝に追随して宰相フリーデンも現れる。
「お前ら、これは一体どういうことだ。
我の妃の部屋に押し掛けるなど無礼にも程がある」
先頭を切って現れた皇帝がそう怒声を上げた。
ただ、これは眷属化と精神支配が掛けられた影響によるもの。
第三妃と言う存在自体が皇帝に植え付けられたものである。
「では、皇帝は魔王を生み出した張本人。
世界に弓引く邪神を妃にするということか?
このマルスリオン帝国は世界に弓を引くというのか?」
「なっ!」
僕がそう言葉を返したところでそれを聞いたフリーデンが驚きの声を漏らす。
さすがに、第三妃が邪神だとは気づくはずが無いためかなりの驚きを覚えただろう。
「邪神に操られた皇帝なんて話にならない。
華奈、リリィ、二人を外に」
僕に迫らんとしていた皇帝に<麻痺の魔眼>を使用して動きを停止させる。
そして、皇帝を部屋から連れ出すことを二人に頼む。
「フリーデンさんも、分かっていただけますね」
「……はい」
すべてを悟ったのか、床に崩れ落ちている皇帝を見ながらフリーデンは弱弱しくそう答えた。
その後、すぐに四人は退室していった。




