48話 帝城潜入
カフェで昼食を食べ終えてからも僕たちは再び帝都の散策をおこなう。
昼食を食べながら魔法の地図で皇帝を探したのだが見当たらなかった。
午後は、華奈とリリィの二人の先導によってブティックや雑貨屋などを周る。
二人が色々と物色している最中にも噂話として帝国敗戦の話がけっこうな頻度で聞こえてきた。
そして、けっこうな時間が経ち僕たちは夕日に染まった大通りを歩いていた。
「リリィちゃん、色々と買えて良かったね♪」
「はい! 可愛い洋服が色々買えました。
後は、クレープとかも美味しかったです」
二人は本来の目的を忘れてしまったんじゃないかって言うほどのはしゃぎっぷりだった。
ただ、その間に僕が皇帝がいないか時々探したのだが見当たらなかったのだから仕方が無い。
「食べ歩きは未だに新鮮です。
それに、デートもすごく楽しいです」
「リリィちゃんはずっと王宮に居たからね。
そうだ、今度二人でデートしてきなよ」
「いいんですか?」
「うん、ずっと三人だったし。
リリィちゃんはずっと待ってたしうんと凪に甘えるといいよ」
「華奈ちゃん、ありがとうございます」
「うん、凪もそれでいいよね」
「いいよ。
今度、どこ行くか話し合おっか」
「はい!」
「で、ちょっと話は変わるけど今日はここで切り上げようと思う。
宿取って今日は休んで、明日皇帝を見つけ次第帝城に突入だね」
「ん、りょ〜かい!」
「わかりました!」
僕たちはそれから良さそうな宿を見つけると部屋を取る。
取った部屋は三人部屋と言うのは無かったので四人部屋で、通り側の部屋だ。
少し広めの部屋にベッドが窓側に四台並べられており、廊下側の壁に備え付けの机がある。
部屋に入ると僕たちは中央の二台のベッドにそれぞれ向かい合うように座った。
「そう言えば、藤堂君の方はどう?」
「ちょっと確認してみる」
魔王の巣の位置は既に分かっている。
<千里眼>をそこに飛ばしてから、魔法の地図で巣の構造を確認して藤堂たちのいる正確な位置へと視覚を再設置した。
「うん、見つけた。
壁に移すね、『投影』」
僕は廊下側の壁に『投影』させると<千里眼>に移る景色が同期されて写された。
始めに写したのは巣の外から。
草原の中心にぽっかりと開いた大きな穴の周囲には大量の眷属蟻の死体が転がっている。
また、一部か所では一直線に土が剥き出しになって抉られている場所もあった。
「……派手にいってるね」
「うん。
なんか足とか頭とかバラバラになって散らばってる」
「思ったより凄いことになってます」
「じゃあ、巣の中に移すよ」
投影は一度暗転。
再び移ったのは中央の奥の方に白い点がぽつんとあるだけだ。
だが、その光点が徐々に大きくなっていき今度は白転。
映っていた白さが端の方から薄れていき、そこに映っていたのは藤堂を先頭にした手段だった。
「ここは魔王の手前の部屋っぽいね」
「もう魔王の部屋の前ですか。
ナギ様の友達のもすごいですね」
「目立った怪我もなさそうだし、しっかりと討伐できそうだね」
藤堂たちの成功を祈りながら僕たちは<千里眼>を解除。
そうして、今日は明日の帝城突撃に向けて早い時間に就寝した。
そして、翌朝。
魔法の地図で皇帝を探したところ、すぐに発見できた。
そのため、城へ突入だ。
マルスリオン帝国の皇帝が住む帝都、その中心にそびえ立つのが黒帝城と呼ばれる皇帝の住まいだ。
名前の通り外見は真っ黒であり魔王城といっても差し支えない。
城の敷地内は軍事に関する全ての設備が完備されている上に、敷地は高い城壁で仕切られ、堀がぐるっと一周。
門は東西南北に一箇所ずつ存在しているのだがそのすべてが跳ね橋になっており、下りているのは一日一か所。
普通に考えて侵入は容易ではない。
宿をチェックアウトした僕たちはある程度城が見える位置まで移動。
近くの人目が少ないところに移動した。
僕たちは現在、建物と建物の間にいる。
頭を少し出してみれば跳ね橋が下りた北門がここからは見える。
「よし、じゃあ『転移』で一気に皇帝の前に移動するからそこだけ気にしておいてね」
「ナギ様、帝城領域内には魔法妨害結界がありますけど、それは『転移』に問題ないんですか?」
「そんなのがあるのか」
「はい、旧文明の魔道具だそうです」
基本的に魔法妨害と言うのは魔法の発動者が魔法を発動させるために体内から出した魔力を魔法に変換する前に散らしてしまうもの。
なので、散らされる前に魔法を発動させてしまうか散らされても問題ないほどの大量の魔力を使うかより高度の魔法で効果を無効化させるその三つの方法で力押しできる。
「転移と同時に魔法で一時的に無効化させるのが一番いいかな。
じゃあ、手出して」
僕は二人の手を取りながら<千里眼>で転移先を確認。
そして、魔法を発動させる。
「『転移』」
転移先はもちろん帝城。
その中でも上層部に位置する重要な一室。
皇帝の執務室だ。
魔法の地図で確認した限り皇帝と宰相がいることが分かっている。
「こんにちは、皇帝陛下」
『転移』完了後、僕は開口一番にそう声をかけた。




