43話 集結
「『雷、広がり辺りを包む。
敵を誘い、捕え、雷撃す。
ライトニングネット』」
日村が気を取り直しすぐに罠を張る。
先ほどのように眷属蟻は気にせず雷の網に突入して感電していくのだが、数が多すぎた。
後から来る眷属蟻は前で感電する仲間の体を踏み越えて魔法の範囲に入って感電する。
だが、魔法の範囲も広いと言う訳でもないのですぐに魔法に引っかからない眷属蟻も出てきてしまうだろう。
「「「「「『フレイム』」」」」
そのタイミングで、既に詠唱を済ませた魔法が同時に発動する。
密集した眷属蟻には効果的だったようで、一気に燃え上がる。
また、それぞれの魔法の火が合わさり相乗効果が発揮。
普段の倍以上の威力・範囲を発揮して蟻の先陣を燃やし尽くす。
だが、そんなことはお構いなしに後続の眷属蟻は留まることを知らず押し寄せる。
「このまま、戦闘を継続。
奥の入り口まで制圧する!」
初撃で倒した死骸の壁を越えてまばらにやってくる眷属蟻を前衛がせき止め、ある程度の数が集まった所で後衛が魔法でまとめて討伐していく。
それが一セットで、それを眷属蟻が現れなくなるまで繰り返した。
そして、一時間後。
新たな蟻の出現が停止し、日村たちの戦闘が終了する。
広間一帯には大量の眷属蟻の死体が焦げたり細切れになったりと様々な状態で転がっていた。
「とりあえず、被害報告」
日村が仕切って全員の怪我や魔力の残量を確認していくが、これと言って問題になるような事項は無かった。
「問題は無いようだが、ここで一度休息を挟もう。
各自、補給や装備の手入れをしておくように」
ついてきた冒険者はその指示に従って、ある程度の範囲内に固まって一度武装を解除すると、それぞれ食事や武器の調整を開始した。
そして、日村たち異世界組は一か所にまとまって会議を始める。
「一輝、戦闘前はどうしたんだ?」
「ああ、<マップ>を立体化が出来たん。
魔王もちゃんと見つけられたぜ」
「じゃあ、他のグループにも連絡しないとね」
すぐさま、皐月がカバンから魔道具を取り出す。
外見はまんまスマートフォンのこの魔道具は凪が三十分ほどで作り上げた通信用のものだ。
使う人間を考慮した結果、一番わかりやすいこの形が利用され、操作方法も大差ない。
慣れた操作で、魔道具を起動し通話アプリを起動。
他の二グループの連絡先を指定してグループ通話を開始させた。
勇者である藤堂が率いるグループは最初の分岐を中央に進みいくつかの広間を通り抜けて、三グループの中で一番深いところまで潜っていた。
道中の戦闘は藤堂が初手で広範囲攻撃をおこない、そこには特攻も入るためその時点で半数を討伐できる。
その後、全員で一気に残党を倒したため短時間で戦闘を終わらせていた。
そのため、一切の被害は出ていない。
そして、倒した眷属蟻をどかして道を作っていた所だった。
テテテ テテテ テテテ―ン テテテ テテテ テテテ―ン
電子音が響く。
藤堂は持っていたバックからスマホ型魔道具を取り出すと、一時休息を言い渡して通話を開始した。
「こちら藤堂」
「あ、藤堂君」
「そっちは、皐月か」
「うん。
一樹の<マップ>の表示が変えられて巣の全体像が分かったよ。
もちろん、魔王の場所も」
「おお!
本当か!」
藤堂が歓喜の声を上げた。
それと同時に最後のグループとも通信が繋がる。
「こちら田中。
何かあったか?」
「田中君、巣の全体像が分かったよ。
両方のパーティーの魔王のいる部屋までの道を今から説明するね。
えっと、それじゃあ藤堂君達からで……」
そして、十分ほど通話を続けてそれぞれのパーティーが魔王のいる広間までの最短ルートが示された。
全パーティーが魔王の一部屋前で落ち合うことを確認し通信を切断。
それぞれ行動を開始した。
それから全パーティーが合流したのは通話を終えてから二時間後。
始めに集合場所に到着したのは藤堂たち。
元々深くまで来ていたので少し進みすぐにたどり着く。
藤堂は最初に到着したため、部屋の中にいた眷属蟻を掃討する必要があったがなんてことは無く十分ほどですべてを討伐した。
その後、部屋に戻ってくる眷属蟻と魔王のいる広間から来る眷属蟻をその都度、倒していく。
藤堂たちの到着から一時間後。
日村パーティー、田中パーティーの順で部屋に合流。
全グループが部屋に集合した。
「よし、全員揃ったな。
この先に魔王が居る。
以降は激戦が予想される為、各員、気を引き締めるように。
併せて、冒険者たちを二グループに分ける。
一方はこの部屋に残って退路の確保、残りは一緒に行って魔王の周りの眷属蟻への対処を頼む。
これより五分後、出発。
各員最終準備をするように」
藤堂が全員の前でそう告げた。
話が終わると、それぞれ魔力回復薬を飲んだり、武器の最終調整をするなどの準備を始める。
総じて雰囲気は
五分が経過。
魔王の部屋に突入するメンバ-は魔王のいる広間の入り口に集まる。
そして、藤堂の掛け声とともに魔王の広間に突入した。




