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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
2章 召喚勇者と邪神の怨み

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31話 その全てを

 翌朝。

 リリィの部屋で起きた僕たちは配属されているメイドに朝食を頼んで運んできてもらい、部屋の中で朝食を食べる。

 食事中にクルスさんから連絡をするまで部屋で待機と連絡を受けたので食事を終えた後はアイラさんを加えてトランプで遊ぶことにした。


 その後、クルスさんから連絡が来たのは昼食後すぐのことだ。


「……はい、分かりました。

 すぐに準備します」


 メイドがクルスさんからの連絡を伝えてくれた。

 会議をおこなうのは大会議場と言う場所のようだ。

 そこまではメイドが案内してくれるようで急いで準備をおこなうとリリィの私室を出発した。





 それから、別館に移って大会議場に入る。

 両開きのドアが全開になっていたのでそこから僕と華奈は中に入る。

 中では勇者召喚で呼ばれたクラスメイトたちと国の各大臣が集まり、席の半数ほどが既に埋まっていた。

 大会議場は中央にドーナッツ状の巨大テーブルが存在しており、部屋前方に王族が座るための一際豪華なイスが用意され、その両サイドに国の大臣・副大臣が横並びに座っていき、ちょうど王族の席の向かい側に二列になってクラスメイトが座る席が設けられていた。

 まだ全員揃っていないので会議はまだ始まっておらず私語が色々なところから聞こえてくる。

 王族は最後の入場で、リリィとはここに来る途中で別れている。

 僕と華奈は入って目前にあったクラスメイトたちの席の一番後ろに空いていた二席に座った。


「おお、日村。久しぶりだな。

 調子はどうだ?」


「凪、久しぶりだな。

 俺らこの前Aランクに上がったぞ」


「おお、凄いな!」


「次はSランクに向けて依頼をコツコツ受けてるよ。

 けっこう力も付いたと思うぜ。

 まあ、藤堂のパーティーは全員Sランクだし、藤堂自身はSSランクだってよ。

 【光剣の勇者】って二つ名も貰ってたよ」


 久々に会ったクラスメイトと近情報告を交わして情報を集める。

 戦力強化も順調そうだ。

 冒険者Aランクと言うのは試験も存在するのでかなりの戦闘力があるという裏付けがしっかりとされている。


 話している間にも続々と大臣が揃い、僕が入室してから十分程で王族席以外のイスがすべて埋まる。

 そして、司会を務める宰相さんが立ち上がると声を上げて会議場内を静かにさせた。

 一瞬にして場内が静まり返ると、宰相が合図を出し扉付近のメイドがドアを開くと王族が招き入れられる。

 宰相がそれと共に起立を促すと大臣たちが全員立ち上がった。

 僕たちも遅れて立ち上がり、王族が自分の席の前に立った所で宰相の号令が入り会議場の全員が合わせて頭を下げた。

 その後、クルスさんが声を上げると全員が頭を上げ王族全員が着席した後に宰相の声で全員が着席する。


「では、これより緊急会議を開始させていただきます。

 議題はご存じの通り帝国からの宣戦布告。

 初めに陛下自らご報告をいただきます。

 陛下、よろしくお願いします」


 宰相がクルスさんに向かって頭を下げると、クルスさんが立ち上がった。


「皆も帝国より宣戦布告がなされた。

 停戦条件は帝国の属国となり第二王女リリィの嫁入り。

 属国はもっての外。

 さらに、今まで機密となっていたが第二王女リリィも王国の英雄、冒険者【黄昏の焔】との婚約が決まっている。

 到底飲めるような条件では無く、戦争をおこなうことが必要となる」


 話を終えてクルスさんはイスに座った。


「陛下、ありがとうございます。

 それでは初めに現状のご報告を私よりさせていただきます。

 帝国は既に兵を集結させ帝都から進軍を開始している。

 予測によると約一か月後にフル山脈の西側”リィッテ”付近の国境へ到達すると思われます。

 軍の規模は約九万で内約1万人程は召集された冒険者です。

 冒険者の戦力に関しては最高でSSランク冒険者が参加しているとの報告があります。

 以上報告を終了します。

 次に……」


 そこから、軍部から現在の戦力召集状況の報告や財政部から物資確保状況の報告など開戦に関係する各大臣から順々に報告がされていった。

 会議はどんどん進んでいき遂に僕たち、召喚された勇者たちに関連する報告が上がる。


「今回、ドゥルヒブルフ様との相談の結果、勇者たちの戦力使用は厳禁のことです。

 ですが、開戦の余波により現在行方不明となっている魔王が刺激されて出現する可能性も否めないとの懸念があるため、軍部との相談の結果として、魔王討伐メンバーの勇者たちには近隣の”リッテ”で待機してもらうこととなった。

 それ以外のメンバーは今まで通り城で待機だ」


 その報告に続いて細かい説明がいくらかあった。

 確かに戦闘では大きな音が響くし、大量の魔法が飛び交う。

 何が魔王を刺激するかは分からないし、王都から距離があるのでもしもの場合に報告を受けてから出発では間に合わない。


 僕たちに関連する説明が終了するとここから先の会議は最重要機密となるため僕たちクラスメイト及び各大臣の従者は退出することになった。

 そして、メイドに案内されて会議室を出るとクラスメイトたちは全員の部屋が連続して配置されているのでぞろぞろと集団で帰っていく。

 だが、僕と華奈は集団を途中で離れてその背中を見送った。


 それから、二人で大会議室の扉の前まで戻る。

 僕は途中で【黄昏の焔】のトレードマークとなる黒いローブを羽織る。


「ねえ、凪。

 怒ってる?」


「……そうだな」


 帝国の条件にあるリリィの嫁入りと言うのが実現しないだろうと分かってはいるが気に入らない。

 だから、僕は帝国に知らしめるためにある決断をしたのだ。


 会話はそれっきりで二人で静かに歩き、再び大会議室へと戻って来た。

 中から少し漏れる音から中では戦略を練っているようだ。

 だが、僕としてはリリィの命運を握っている戦闘の戦略を勝手に決めてほしくないという気持ちも強くあるし、他にももう一つ譲れないものがある。


「中に入るけど華奈は一緒にいるだけでいいから」


 一言、華奈に声を掛けると僕は部屋の外で待機している騎士に第二王女のメダルと冒険者証を見せて事情を説明する。

 事前にクルスさんから入りたい場合はその二つを見せてくれれば通してくれるとのことだった。

 なので、警備の騎士たちはそれを確認するとドアの両サイドに下がっていく。

 僕は両開きのドアの両方の扉に手をかけると時に一気に押し開く。


 突然ドアが開いたことで、中にいた全員がこちらを向いたことで一時会議が止まった。

 全員の視線を集めていることを確認し、ドアの外から大会議室の中へ漏れてくる光をバックにして全体に聞こえるように声を上げた。


「今回の戦争。

 第二王女リリィの婚約者兼Lランク冒険者【黄昏の焔】の朔月凪がすべてを殲滅する」




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