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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
4章 新月の夜に捧ぐ聖杯

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25話 管理神失格

「うん、これはヤバいね」


 見渡す限りのごみの山。

 それを目前にしてそんな言葉しか出てこない。


「うわ~、私ごみ屋敷は初めて見た。

 やっぱ、実際見ると画面越しよりも数倍も嫌悪感が凄いね」


 臭い臭いと華奈たちは鼻をつまむ。

 そんな声にこの部屋の主は気づいたようだ。


「ん? 誰だお前ら。

 俺は入れた憶えはねーぞ」


 ゲームをしながらもこちらへと視線を向けてくる。

 その視線は邪魔すんなと物語っていた。


「おい、ミラ!

 こいつら追い出せ!」


「お断りします」


 ミラに怒鳴りつけるが即答で断った。

 こめかみに皺を寄せてこちらに怒気を孕んだ視線を向ける。

 威圧感も微妙に出ているのだが魔物の高位に属するドラゴンにも及ばないものだ。


「おい、貴様!

 誰に向かって者を言っている!

 俺はお前の主だぞ!」


「ええ、そうだったのでしょうね。

 でも、私は本来の関係を知ってしまったので貴方を主とは認めません」


「な、……何だと!」


 流石に頭に来たのかのっそりとその場で立ち上がった。

 そして、ドシンドシンと効果音が付きそうな歩みでこちらに迫って来たのだ。

 決して威圧感があるためそんな効果音がつきそうだと思ったわけではない。

 体重的な問題だ。


 こちらへと怒りを露わにしてのしのし走ってくる管理神ダイダ。

 ミラさんの前まで息を切らしながらも到達すると拳を振りかぶった。


 だが、その拳は無情にも宙を切った。

 冷静に対処したミラさんが一歩後退して躱したのだ。

 それどころか、そのまま体制を崩してこちらへと突っ込んでくる。

 まさに巨大な岩が迫って来るような迫力。

 僕達は、慌てて横にのけた。


 ドシン!


 盛大な音と共に近くで散乱していたゴミが舞い上がった。

 目の前では、五体投地で地面に伏っした管理神ダイダがいる。

 目の前で倒れ伏すその姿を見て僕たちはこれは無いなと呆れた視線を向けた。


 そのまま、少し様子見をしていたのだが一向に動きは無い。

 ちょっと油が凄いので触りたくないなと思いながら顔を確認してみれば気絶していた。

 それは僕が管理神からの降格を決定した瞬間である。


 バシャッ


 目前で気絶する元管理神ダイダに<アイテムボックス>にあったよく冷えた水をぶっかけた。

 水が掛かった瞬間、ぴくっと体がはねた後にのっそりとした動きで飛び上がる。

 その動きは神界に来てから見た一番早い動きだ。


「誰だ! この俺に水を掛けたのは!」


 起き上がった元管理神のダイダと目が合った。


「あ、どうも」


 なんとなく言葉を掛けた方が良い気がしてそんな言葉が漏れる。

 後ろでは華奈がそれを聞いて噴き出していた。


「お前か! 

 こうなったら神罰を与えてやる!

 ミラ、やれ!」


「お断りします」


「何!」


 この神は記憶が飛んだのだろうか?

 先ほどと同じようなことを繰り返している。


「ミラ、あれは魔法が使えないのか?」


 いつの間にか僕の横に居たミラにひそひそ声で聞く。

 通常、神罰と言うのは<想像魔法>または<概念魔法>の双方の魔法の別称。

 その魔法が使えるレベルに到達できるのは基本的に神族のみなのでそう呼ばれることもある。

 その為、神罰が出来ない=魔法がそんなに使えないという図式が成り立つ。


「はい。最初の頃は一緒に頑張っていたのですが……。

 あの体形になってからは一切特訓していませんから出来て上位魔法を軽く、じゃないでしょうか」


「ああ、そうなのか」


 随分と怠惰に過ごしてきたことが伺えた。


「あ~、そろそろいいですか?」


「何だ、人間如きが。

 ミラに気に入られてるからって調子に乗るなよ」


 巨漢(ただの肉)で迫られると思ったよりも威圧感は凄い。

 そして、管理神だからって調子に乗るなよ! と言葉を返してやりたいようだ。


「第三世界神皇|《慈愛》朔月凪の権限で“アラブリア”の管理神ダイダの権限を剥奪。

 管理神権限をそのまま神の使徒ミラに移行させ、ミラを管理神として昇格させる」


 まあ、そんなことは置いておき判決を言い渡した。

 この言葉は、同時に世界システムでも聞き取られ、問題が無ければ権限の移行がなされる。


 この判決を決める権利は各神皇に付与されている。

 この権利の内容としては管理神及び補佐の下級神、神の使徒の持つ権限を決定することができるのだ。

 権限とは管理者指定や配属先の指定が含まれており、場合によっては転生先さえも指定できる。


 今回も無事に承認されたようで元管理神となったダイダの胸から小さな鍵が飛び出し、そのままミラさんの胸の中に飛び込んでいく。

 この鍵は、管理神の権限の象徴。

 顕現移行の際にのみこうして光で実像を形成して移動する。


「権限の移行完了。

 新管理神のミラ、これからの頑張りを期待してるよ。

 取りあえず天使を三名配属することにするから、配属までは申し訳ないんだけど一人で頑張っていて欲しい」


「分かりました!」


 ミラは元気よく返事を返してくれた。

 そうして、ダイダの処遇を発表する。


「そして、元管理神であるダイダは別の世界で補佐としてその世界の管理神に仕えてもらうことにする。

 じゃあ、そう言う事だから、バイバイ」


「ンァ! お、おいっ! ちょっ……」


 言葉を返すことも許されぬままダイダは光に包まれて退場。

 即座に次の世界へと転移させられていった。


 ダイダの処遇はまあ、少し甘かったかもとも思う。

 管理神に仕える者は補佐、使徒、天使の三つに分かれる。

 補佐は種族が神族である者がなる役職で三つの中でも一番位が高い。

 次が使徒で、これは天使族や人族の中から選ばれた者が就くことになる。

 そして、一番下が天使でこれは天使族の者が殆どだが、悪魔が改心した聖魔もここに含まれる。

 仕事内容は役職関係なく管理神の補佐である。

 僕が、甘いと思ったのは補佐の職が唯一、管理神へと昇格できる可能性があるからだ。

 まあ、これは仕えることになる管理神次第なのでその神に任せることに決めた。


 そうして、色々あった“アラブリア”の神域に静寂が訪れた。


「やっとうるさい人が居なくなったね……」


「そうですね……」


 ダイダが消え、静かになった神域に華奈とリリィの二人のしみじみとした声が響く。

 そして、この瞬間。

 この場に居た全員があることを察した。


 ――――ゴミの片付けをさせていけば良かった!!!!!


 僕は<アイテムボックス>から大量のゴミ袋を取り出すと先陣を切ってゴミの回収を始めた。

 それから、残りの四人もゴミ拾いを始める。


 誰も予想していなかったゴミ拾いはその後二時間ほど続いた。


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