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奇跡の闘病記録  作者: なかさん
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リハビリ   

リハビリ       


リハビリがはじまった。久しぶりに病棟から出ることがうれしいらしく、楽しみにしていたようだ。

「おとうさん、デハビリいこうよ、デハビリ」、「リ」の発音ができなかったのだ。

リハビリルームは小児科病棟の一番端の一階であるため、そこに行くだけでも結構な運動になった。悠に100メートルはある廊下をつたわりながら映画の「ET]のようにトボトボ歩いていく姿がいとおしかった。

リハビリルームからの帰りしな、隣にジュースの自動販売機があったのでそこでイチゴ牛乳を買ってもらえるのがうれしくて、いつも「おとうさんデハビリがんばったから、ジュース買ってね」とねだられた。  一度ジュースを買って、すぐに病室に帰らずに天気がよかったので病院の中庭を散歩して戻った時がある。

この時看護婦さんにえらい剣幕でおこられた。

「おとうさん、リハビリが終わったらすぐにかえってきてくださらないと困ります。全館中さがしましたよ!」

看護婦さん、すいませんでした・・・

このころ心のリハビリというものを痛感した。

体のリハビリはちゃんと、リハビリルームなるものがあって、担当の医者がいてその子の症状にあわせたメニューどおりに進めていけばよいので、本人以外は比較的楽である。

そのうえ結果も目に見えてわかるだけに判断のしようがある。

しかし心は目に見えないのと、メニューがないのでわれわれ両親で判断するしかない。   一番なりゆきの心が痛んでいると感じたのは、以前簡単にできていた動作がまったくできない時の彼の顔の表情を見るときであった。

例えばフォークを持ってコロッケを突き刺すような普段なんでもない動作が、なかなか自分の思うようにいかないのである。何回か突き刺してもコロッケがにげまわり、あげくの果てには持ち方が悪いのでフォークすら床に落としてしまうのである。

その時に早く食べたい気持ちと、「なんで前出来た動作が出来ないんだろう?、いったいぼくの体はどうなったんだろう?このままずっと治らないんだろうか?」という不安な気持ちが顔に出ていた。

そしてその気持ちを、伝えるにも発音が悪いので、われわれに思うように伝わらないもどかしさもその気持ちに拍車をかけたのであろう。夜中になるといきなり昼間のそういったストレスが爆発するらしく「ウオー、オー、ワアー」と絵本をよんでやっているときなどにいきなり大声で奇声を発するのであった。「お願いだから、静かに本を読むのを聞いていて・・・」と哀願したが、10分くらいは大声を出し続けるのであった。それが治まるとよほど疲れたのか眠るのが常であった。


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