表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡の闘病記録  作者: なかさん
15/24

真夜中の病院  

真夜中の病院       


非常にショッキングな話である。

いつも小児病棟から、図書室にむかうとき、気になる病室があった。

夜中でもいつもあかりが点いていて、絶えず「シューシュー」となりゆきの機械と同じような音が聞こえていたのであった。この部屋の事を看護婦に尋ねると決まって生返事だったので「なにか事情があるな」と思っていたのであった。

そこで思い切って山口先生に尋ねてみる事にした。というのは彼が、よくその病室に出入りしているのを見ていたので理由を当然知っていると思ったからである。

「あまりいいたくないんですが・・・」で始まった彼の言葉にわたしは耳を疑った。

「あの子もなりゆきくんと同じ症状なんですよ、治療方法もまったく同じです。ただあの子の場合、病気にかかった年令が生後3ヵ月だったために、両親も引取りにこないんです。その状態でもう3年もたつんですよ。両親はとにかく先生の方でなんとかいいようにして下さいと言っているんですよ」

「え、いいようにというのはどういう事なんです?」

「つまり、楽にさせてやって下さいという事です。」

「しかしかりにも自分が腹を痛めて産んだ子なんでしょ?」

「そうなんですけど、一緒に生活した期間があまりにも短いんで共有した、思い出が全くないらしいんですよ。ヒドイ話でしょう?だからお父さんたちみたいに一生懸命になっている親の姿をみるといつも、この子には祈ってくれる人が一人もいないんだなあと、つくずくかわいそうに思うんですよ」

そんな親がこの世にいる事自体、ショックだったが、必ず治癒してみせるという、意気込みで治療をしている、山口先生のひたむきな姿勢に頭が下がった。

結局、その病室に入る事はなかったが、いまでもこの子は機械のポンプによって「生かされ」続けているのであろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ