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奇跡の闘病記録  作者: なかさん
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山口先生の言葉

山口先生の言葉       


「山口先生はなんで医者になったんですか?」

「高校生の時にぼくは小児科になる決意をしたんですよ。」

「えっそんなに早く小児科と決めていたんですか?」

「ぼくは子供が大好きなんですよ。よく高校の時からボランテアで子供の施設に、お楽しみ会なんかを企画して行ったものです。で進学高校だったもので、がんばってこの子たちのような子供を直す仕事がしたかったので大阪医科大学を受験したんですよ。」

29才でわたしより2つ下なのに、信念をもって職業をえらんだんだなという尊敬の気持ちと世の中の医者が全てそうであったらなあという気持ちで話を聞いていた。

「先生、実はこの病院に担ぎこむ前に、三島の救急病院へ連れていったんですよ。やはり先生と同じような年のかたが担当で、診てもらったんですがその時の処置が点滴を500ミリ打っただけなんですよ。そして、『これで大丈夫ですよ』という言葉を信じていたら翌朝に、この症状だったんです。どう思いますか?先生ならその時どんな処置をしたと思いますか?」

「その時のなりゆきくんの症状をみてみないとわかりませんが、おそらくその医者がそういう判断をしたのであれば、わたしも同じ処置をしたかもしれません。」と同じ医者なので半分かばいながらの発言であった。

しかし山口先生ならばきっと別の処置をしてくれていたと確信する

まず患者に対しての慈悲がなかったのである、夜分の勤務なので適当とは言わないまでも、サッサと済ませてしまおうという事務的な態度が、今思ってもむしょうに腹立たしい。

時々。院長先生の回診というのがあって、映画のワンシーンのように院長がくるのを担当医、看護婦さんたちが整列して迎える「儀式」である。

院長というのはこの医科大学の教授で小児学会では非常に権威のある人らしい。

小児病棟に移ってまもないころ、この院長先生の回診があった。

神妙にかしこまっている山口先生を見るとふきだしそうであった。

院長先生がおもむろにやってきて、なりゆきの手と頭にふれて、「安静にしておくことですね。カーテンもしめて部屋は暗くしてください、まわりでの会話も厳禁です。」と言っただけでサッサと帰ってしまった。

「なんや、オレでもできる仕事やなあ・・・」と思って山口先生に尋ねた「部屋は今まで暗くしてなかったし、会話なんて目一杯してましたけど大丈夫なんですか?」

「あんなもの、古い大昔の理論ですよ。昔の教科書にでている事をそのまま言ってるだけですからあてになりません、心配ないですよ。」と笑いながら院長が閉めたカーテンをまたさっさと開け始めたのであった。

居合わせた看護婦さんたちが大笑いしていた。

「医学に関しては日進月歩なので、権威のある人の言うことがかならずしも当たっているとは限りません。むしろ若いわたしたちのほうが、今の理論にかなった治療をしているんですよ。安心してください。」

「先生、その言葉を直接院長に言ってくださいよ。」と冗談で言ったら

「ご飯が食べれなくなりますので、わたしが偉くなったら言いますよ。」とのこと

看護婦さんたちも緊張の糸が切れたのか、その後は悪口のいいあいとなって、寝ているなりゆきの横で安静どころか大騒ぎであった。

院長先生、もしこの本を読んでいたらごめんなさい・・・


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