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3 シンプルイズベスト

 ゲームを始めると、まずその完成度に驚いた。


 空気の匂い、周りの騒音、地面を踏みしめる感覚、その全てが現実と変わらないように感じた。

 周りを見ると私と同じように驚いた顔でキョロキョロする人達が沢山いる。みんな私と同じ気持ちなんだろうなー。


 とりあえず蛍に言われたように噴水の縁に行き座った。

 それにしてもリアルだなー。この水もゲームとは思えないくらい透き通っているし。触ってみても冷たくて現実との差異を見つけられないや。


「気に入った?」


 いつの間にか目の前に蛍がいた。水色のセミロングで同じく水色の瞳をしている。髪からは特徴的な長い耳が見えていて彼女がエルフであると伺える。身長は私より頭一つ大きいくらいで、体は出るところが出ている。蛍もあまりいじってないみたいで現実との違いは色と耳くらいだ。


「あ、来たんだね。すごいね。本当に現実みたい」

「でしょ!あ、私こっちだとフライって言うんだ!よろしく!」


 フライか、蛍の英名がFireFlyだったからそこからとったのかな?


「うん、フライ。私はカンナだよ。よろしくね」


 私も自己紹介をしておく。


「とりあえずフレンドになろっか」


 そう言われたのでフレンドになった。

 そうだ、フライに問い詰めなきゃ行けないことがあった。


「そういえばフライの説明と違って種族スキルにポイント半分以上取られたんだけど、どういうこと?」


 私がジト目で問い詰めると、フライは一瞬ポカーンとしたと思ったら慌ててメニューを操作した。


[フレンド<フライ>からフレンドチャットが届きました]


 いきなりフレンドチャット?まぁ、とりあえずYESにしておこう。


『なんでフレチャ?』

『これなら私たち以外に聞こえないからね』


 私たち以外に聞かれると困るのかな?


『カンナ、答えたくなかったら答えなくてもいいけど、種族、なに?』


 はて?それが聞かれたら困ることなのかな?まあ教えても損することなないしいいかな。


『亜人種のアラクネだよー。なんかランダムでやったら出てきた。選択肢になかったのに不思議だよねー。』


 私がそういうとフライは驚き、呆れたような顔をした。


『カンナ……それはレア種族だよ。ランダムで選ぶとたまに選択肢外の種族になることがあるんだよ。まあ確率が低すぎるから普通は選ばないけど』


 なんと、これはなかなか出ないものらしい。ラッキーだったね。


『あと、あまり種族のことは言いふらさない方がいいと思うよ。いろいろ問い詰められて面倒になるよ』

『はーい』


 面倒事は嫌だからね。素直に頷いておこう。


『種族スキルもそのせいなのかな』

『多分ね。というか種族スキルだけで半分以上ってどんだけよ……』


 やっぱり異常みたいだね。気になるようだし見せてあげよう。

『見てみる?』

『……見る』


 メニューからステータスを選び、フレンドにも見えるようにして見せる。


『……いろいろつっこみたいけど、なんで空間魔法取ったの?』

『かっこいいから』


 かっこよければそれでいいよね。

 ふたたび呆れたような顔をされました。なにかダメなところでもあるのかな?


『まぁカンナがいいならいいや……。

とりあえず、カンナがおかしいことはわかったわ」


 失敬な、おかしくない。


『でもこのままじゃフェアじゃないから、私のステータスも見せるね』


 そう言い、フライはステータスを見せてきた。


 名前:フライ

 種族:精霊種 エルフ

 ステータス

 Lv:1

  HP:200

  MP:300

  STR:15

  DEX:30

  VIT:15

  AGI:30

  INT:35

  MND:25

  LUK:25


 スキル

 [森魔法Lv1]

 [火魔法Lv1]

 [水魔法Lv1]

 [風魔法Lv1]

 [土魔法Lv1]

 [光魔法Lv1]

 [闇魔法Lv1]

 [回復魔法Lv1]

 [鑑定Lv1]

 SP0


『……基本魔法全種類って、フライのスキルもおかしいじゃん』


 私はジト目で睨んでおく。


『あはは……ほら、全魔法使用可能ってかっこいいし……』

『人のこと言えないね』

『ごもっとも』


 そんなことよりもエルフの種族スキルらしき森魔法が気になるなー。私の初期スキル欄にはなかったからエルフ限定スキルなんだろうなー。


『この森魔法ってエルフ限定の魔法だよね。どんな魔法?』

『えーとね、木を動かしたり森で迷わなくなったりする魔法かな』

『森だと強いから森魔法かー』


 いいなー。フィールドは森以外もあるけど、森だとすごく役に立つね。

 さて、そろそろ動こうかな。なんか周りからもジロジロ見られてて居心地が悪いしね。


『このあとの予定は?』

『私はβの時からのクランで集まる予定』


 クランかー。人が増えると面倒事が起こるからなー。しばらくソロでプレイだね。面倒事は嫌いです。


『じゃあ私は街の探索とスキル確認かな。しばらくソロでやる予定だし』

『ソロでやるの?パーティ誘おうと思ってたけど、カンナがそれでいいならいいか』

『ソロの方が気楽』

『あー…カンナはそうだよね』


 とまあ、予定も決まったし行きますか。


『じゃあまたねー』

『今度はPT組んで一緒に遊ぼうねー!』


 お互いに手を振りその場をあとにした。

 


 さて、歩き出したはいいものの妙に視線を感じるなー。別段おかしな体にはしてないと思うんだけど。まぁ、気にしたら負けかな。

 それにしても露店が多いね。プレイヤーが来るから売れ時だと思ったのかな?


 このゲームではNPCに高度AIが採用されていて、どの住民もプレイヤーとの区別が付かないくらい自然に暮らしている。実際、頭上マーカーはプレイヤーと住民達は同じ青なので区別がつかない。まぁそれだけNPCを差別して欲しくなかったのだろう。


  ってことでいい匂いのする串焼き屋さんがあったのでそこに行く。決して匂いに釣られたわけではないからね。


「おじさん!こんにちは!美味しそうなお肉ですね!」


 初対面というのは大事なので、笑顔で元気よく挨拶した。


「いらっしゃい!うちの串は美味いぞ!異邦人たちの口に合うかは分からんがな!」


 串屋のおじさんはそういってガハハと笑った。

 住民達は私たちプレイヤーを異邦人と呼ぶみたいだね。


「美味しそうな匂いがするから多分大丈夫!それってなんのお肉?」

「この肉か?これはホーンラビットの肉だ。北の平原にいる奴だな」


 どうやら北には平原があるらしい。


「北にはホーンラビット以外に何がいるの?」

「北には平原にはホーンラビットしか出ねえ。平原の先に森があって、そこにはフレストウルフやフォレストベアなんかが出るな。また先に行くとポーギーやビフタインなんかもいるんだが、こいつらが美味いんだよなぁ!」


 ポーギーは豚、ビフタインは牛かな?美味しいらしいし食べてみたいな!


「おじさん、教えてくれてありがとう!1本買ってくね!」

「まいどあり!50Gだ!」


 所持金は初期の10000Gだね。メニューに[購入しますか? 50G]と出てるのでYESを押す。


「いただきます!」


 おじさんに串を渡され匂いに堪らず行儀も気にせずかぶりついた。


 ……!?美味しい!!


 かぶりついた瞬間閉じ込められた肉汁が口の中に飛び散り、振りかけられた塩でクドさを感じさせず引き締まった味になってる!こんなにシンプルなのにこんなに美味しいなんて!?


「おじさん!これ美味しすぎるよ!」

「ガハハ!そうだろう!嬢ちゃんも美味しそうに食べてくれてありがとよ!」


 兎でこの美味しさ……おじさんが言うには豚や牛はもっと美味しいらしい……!これは取りに行かなくては!!


「おじさん!お肉持ってきたら焼いてくれる?」

「おう!肉持ってくるなら安くしてやるよ!」

「ありがとう!絶対持ってくるね!」


 いてもたってもいられない!早速行こう!

ちなみに串屋のおじさんが主人公を異邦人と分かったのは見慣れない顔だったからと、神様(運営)からこの日に異邦人が沢山くると聞いていたからです。

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