11 ロシアン
おそくなってしまった。
リアルパートです。
「おはよー蛍」
「ふわぁ、おはよー」
朝、蛍と大学に行く。
予想通り眠たそうだ。
「昨日何時までやってたの?」
「3時過ぎくらい……眠いよー…」
そうだろうね。
でもまあ、時間を忘れるくらい楽しかったんだよね。
「凪紗は楽しかった?」
「もちろん!」
実際、私もはやくFOの世界に行きたいと思ってしまっている。
1日プレイして思った。あの世界はすごくリアル。ゲームというより、異世界に行っているような感覚だ。
だから、もう一つの人生を過ごしてるようで、とても楽しい。
「凪沙は今日はいつログインする?」
「午前の授業しかないから、お昼食べたら帰ってFOやる!」
「おー、ハマってるね!私は午後の授業あるんだよねー」
「ふっふー!この隙に一気に差をつけてやるー!」
「βテスターを舐めるなよー!その程度の差は一気に埋めてやるわー!」
そして夜更かしして寝不足になるわけだ。
歩きながら蛍とおしゃべりをしていたら、もう大学についたみたいだ。喋りながらだと早いね。
少し、周りの声を聞いてみると、FOのことを話している人がちらほらいる。
やっぱり人気なんだね。
はやく帰ってやりたいなー。
退屈な授業を終え、学食へと向かう。
いつもなら蛍と食べるのだけど、肝心の蛍が「ここ行く!」と、極厚ステーキのお店へ向かった。アクティブだね。
一緒にと誘われたけど、私は遠慮した。ステーキならむこうでも食べられるからね。
「今日の日替わり定食はなにかなー」
ここの学食の日替わり定食はハズレが少なくて美味しいのだ。
しかも値段も安い。
「おばちゃん、日替わり定食ちょうだい!」
「あいよ、今日は『ロシアンハンバーグ定食』だよ!」
「名前で予想がつくけど、どんなメニュー?」
「ハンバーグのなかに私の特製唐辛子を練りこんだやつが混じってるよ。そしてそれを食った人にはお食事無料券を1週間分と今回のご飯のおかわりを無料にしてやるのさ!ただし、お残しは許さないよ?」
それはまた、遊んだね。
たまにこういうメニューもあるから楽しいんだけどね。
「うん。わかった!」
「よし、お待ちどうさん!」
日替わり定食を受け取り空いてる席に座る。
見た感じ、普通のハンバーグだ。
流石に見ただけで判断はつかないので食べてみよう。
「いただきます」
私は若干ドキドキしながらハンバーグを口に入れる。
……普通においしい。
残念?ながら私のハンバーグはハズレのようだ。
ちょっと特製唐辛子は気になったけど、当たらなくてよかったって事にしておこう。
たとえハズレでも美味しいので、味わいながら食べよう。
「あら、凪紗さん今日は1人なんですか?」
「ふぇ?」
話しかけてきたのは同級生の九重花蓮さん。
お家が裕福らしく、所謂お嬢様ってやつだ。
しかも勉強もできて見た目もモデルみたい。性格も良く、誰とでもすぐに打ち解けてしまう。
まさに才色兼備と言ったところだろう。
「ふぉふぁるはふふぇーひはへひっはほ」
「ふふ、飲み込んでからでいいですわよ」
私はよく噛んで飲み込んだ。ああ、おいしい。
「蛍はステーキ食べに行ったよー」
「ステーキですか、いいですね。私も食べたいです」
「極厚だってさ」
「…いえ、やっぱり食べたくないです」
まあ、極厚はねー。向こうならカロリーとか気にしなくていいけれど、こっちじゃ流石にね。
私の場合は食べても太らないけどね。
「極厚の話は良いとして、一緒に食べよ」
「はい。ご一緒させていただきますね」
花蓮さんは持っていたトレイを置き、向かいに座った。
あ、花蓮さんも日替わり定食だ。
「凪紗さんは今日は終わりなんですか?」
「うん。帰ってゲームするのー」
「もしかして今話題のFreedom Onlineですか?」
「そうだよー。蛍に誘われて昨日始めたんだけど、面白くってもうハマっちゃった!」
「そうですか、凪紗さんもやっているのですか。それは楽しみですね」
「え?それってどういう…」
どこか含みのある発言を聞き返そうとしたら、花蓮さんがハンバーグに口をした。
「〜〜〜〜〜!?!?!?」
花蓮さんはハンバーグを食べた瞬間に目を見開き、声にならない叫びをあげる。
目に涙を浮かべ、水を勢いよく飲む様子を見ればなにがあったのかすぐに分かった。
「あ!当たり引いたんだ!」
「あ、当たりってなんですか!?」
「今日はロシアンハンバーグ定食だから辛いやつは当たりだよ!」
「なんでそんなことを…辛すぎます!」
「おばちゃん特製唐辛子入だからね!あ、お残しは許さないってさ!」
「そ、そんな…」
花蓮さんはハンバーグを見て絶望に暮れる。
そんなに量はないから食べられないこともないと思うけど…。
「あと、お食事無料券を1週間分とご飯おかわり無料が景品だってさー」
「お食事券は嬉しいですね。ですが、辛すぎます…」
「そんなに多くないから花蓮さんなら食べれるよ!」
「人ごとだと思って……本当に辛いのですよ!」
「ごめんごめん、食べ終わるまで見ててあげるから、がんばって!」
「うう、わかりました。覚悟を決めます!」
そう言い、さっきよりも大きく切ったハンバーグを口に入れ、すぐにご飯をかき込んだ。
「〜〜〜〜〜!!!」
机をぱしぱしと叩いて辛さを我慢する花蓮さん。本当に辛そう。
だけど!ここで手を貸すなんて無粋な真似は絶対にしない!
だって辛がっている花蓮さん、すっごい可愛いんだもん!
いつもは凛としているから、そのギャップもあってより可愛い!
はぁー、眼福。
「ご、ごちそうさまでひた…」
辛くてすぎて口が麻痺しているのか、若干噛み気味でごちそうさまをした花蓮さん。可愛いね!
「お疲れ様ー。はい、あめちゃん」
「大阪のおばちゃんでしょうか…」
そう言いながらも、花蓮さんはあめを受け取り口に入れる。
辛いものの後には甘いものは必須だよね!
「私は午後の授業があるので、そろそろ失礼しますね」
「うん。がんばってねー」
さて、私も帰ってFOやるぞー!




