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第8話 ぐるぐると廻ってる

毎回申し訳ありません、遅くなりました。

この話にて完結となります。今までありがとうございました。


では、どうぞ。


「お久しぶりです」

 

 

 あなたはそんなことを言った目の前の存在に今までにも毎日の如く話してたと伝える。すると少し表情が硬くなった気がする。

 

 

「……無線機越しではそうですけど、実際に会って話すのは久しぶりのはずです」

 

 それもそうか、とあなたは考える。しかし、そんなことはどうでもいい、一体何のようだとあなたは続ける。

 

 その物の言いにショックを受けたのか涙目になりつつ、目の前の上司は口を開く。

 

 

「ぐすっ……どうでもいい……えっとはい……そうですね」

 

 

 目元の涙をコッソリと服の袖で拭きながら話しを続けようとする。あなたはそんなこと知るかと言わんばかりに早くと目線で訴えかける。あなたは随分と性格が酷いようだ。それに加えて……

 


 “えっ? 人殺しを勧めるこの仕事の方が酷い?”

 

 “これなくしたら、異世界へ誰も行けないよ?”

 

 

 あなたはそんな幻聴が聞こえたような気がするが無視した。

 


「実は前にノルマを達成したらあなたの望む異世界へと旅立つ事が出来ると言いましたよね」

 

 

 あなたははっと思い出した。確かにそんなことを言っていた気がする。最近忙しいかったが、その忙しい先にあることを忘れていたようだ。

 

 さて、今その話題が出てきたということは……とあなたは頭を働かす。

 もしかして、とうとう自分はノルマを達成したのではないだろうか。そうあなたは考え、目の前の存在に問い掛ける。


  

「はい、あなたは望む世界へ行けるようになりました! つまり、ノルマを達成しました! 後一人を除いてもう人を轢かなくていいですよ!」

 

 

 あ、もちろんやりたければ続けて貰って結構ですから、と続ける目の前の存在を叩きつつあなたは喜びを全身で表す。

 

 

「っいた! なんてことするんですかまったくもう! ……って何してるんですか?」

 

 

 何って舞っているんだよ。

 

 ……ところで、とあなたは目の前の存在に訊き直す。後一人を除いてという部分についてだ。

 

 

「あ、それはですね。あなたの仕事を引き継ぐ人ですよ。あなたがどっかの世界へ行っちゃうのならばですけどね」

 

 

 あなたは出来れば轢きたくないと考えたが、続けて言われた言葉を聞いた瞬間あなたの心は決まった。あなたは望む世界へ行くために一人をまた犠牲……導く事に。

 さて、そうと決まれば話は早いと早速手を出して目標の資料を要求する。

 

 

「ん? なんですかこの手は? ……あぁ、資料ですか。ありませんよそんなの。全部あなたが決めて、あなたが轢くんですよ」

 

 

 自由に轢いてよいと? あなたは考えた結果その答えに辿り着き愕然とする。これでは神の使いも何もないではないか。ただのテロリストと変わらないではないか。

 

 

「勿論一人にして下さいね。最近キナ臭いんですよ。こう、巫女とか陰陽師の連中が……大勢轢いてしまうと神界に乗り込んできそうですからね。じゃあ、私は転生対象者に説明をする仕事があるので」

 

 

 あなたは気になる事をさらりと言われた気がするが無視して、その人は自分が轢いたものかと訊ねる。

 


「えぇ、そうですけど……それがどうかしましたか? あ、しっかりトラックに轢かれたとしか言いませんから。あなたの名前は出しませんよ? 居眠り運転とかは足しますけど」

 

 

 ふん、ならいいとあなたは答えこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたはブレーキを踏み込む。

 

 やっとの事で見つけた一人で歩いている奴だ。逃がしてなるものか。そんな気持ちで赤信号なのに突っ込んできた此方を見て驚く一人の冴えない犠牲者予定にハンドルを微調整して狙いを定めるあなた。

 

 あなたは流石に小さい子は狙おうとは思わなかったようだ。転生しても異世界ではなく、トラック運転手だしな、と。

 

 そんなことを考えている内にいつも通りの鈍い感触、何度聞いても慣れない音。

 

 無事、成功したようであなたは一息つく。これから人を何度も轢くであろうこのどこか見覚えのある犠牲者に激しく同情しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「役目を果たされましたね。どうですか、この仕事をやってみて」

 

 

 あなたはあの神を名乗る存在の元へと戻ってきた。気持ち良い訳も無いわ、とあなたは吐き捨てながら褒美を要求する。

 

 

「……まぁ、そりゃそうですよね。あなたはよく耐えてくれました。本来死ぬはずも無かったのに。では、転生をしますか」

 

 

 ふうむ、やっぱりか、とあなたは考える。本来死ぬはずもなかった、トラック運転手に転生、最後に一人自由に轢く。

 

 自分もさっきの冴えないおっさんのように偶然見つけられて轢かれたのか、と。

 

 てっきり自分も資料とかに従って、しっかりと理由があって轢かれたのかと思ったが違ったようだ。

 


「……確かにそうですね。あなたは先代の転生トラック運転手にたまたま見つけられて轢かれました。他の方々は轢かれるべくして轢かれましたが、あなたは本当に偶然ですね。通るタイミングが少しでも違ったら今も普通にあの世界で人生を謳歌してるでしょう。だから、あなたのような方だけは死因を説明してませんね。まぁ、いちいち必要がないからなんですが」

 

 

 それを聞いて望んでもあの世界にはもう戻れないんだよな、とあなたは訊ねる。

 

 

「はい、報酬はあなたが望む異世界ですから。まったく同じ世界、人生を望むことは出来ません」

 

 

 そうか……とあなたは呟いた。

 

 

「では、転生させますね。あ、この運転手として過ごした期間の記憶は消去されて単純に横断歩道で突っ込んできたトラックに轢かれてってことになるんで。では、さようならです」

 

 

 え、そんなの聞いてないとあなたは言おうとするが光に包まれる方が早かった。確かこれ演出……とそんなことを思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然ですが、あなたはお亡くなりになりました」

 

 ふと気付けばどこを見ても真っ白な空間に立っていた。前に何をしていたのかまったく思い出せない。いや、横断歩道を渡っていぢろうか。まぁ、あやふやな記憶だ。

 ならば、とあなたは状況を説明してくれるであろう目の前の存在に目を向ける。

 

 この世のものとは思えない美貌。誰が見ても美しいと感じるだろう。ただ、そこに居るだけで空気が変わるような存在だ。

 

 あぁ、美しい。

 

 


「……ありがとうございます」

 

 

 おや、とあなたは思った。

 

 声には出してないはずだ。なのに返事が返ってきた。

  

 一体何故だろうと思い、今初めて目の前の存在に問いかける。貴方は一体、と。

 


「あぁ、失礼しました。名乗るのを毎回忘れてしまいますね。私は神です」

 

 

 人の心が読めるんですよ、そう苦笑しながら付け加えた。

  

 そこであなたは最初言葉を思い出す。確か、あなたはお亡くなりになりました、とか。

 

 なので訊ねることにする。

 

 私は死んだのか、と。

 

 

「えぇ、そうです。残念ながらあなたは死んでしまいました」

 

 

 それを聞いたあなたは、もう一度この状況を確認した。

 そして、あなたは知りたいことがあったので訊くことにした。

 

 これはもしや、転生というやつか、と。

 

 あなたはこの手の物語が好きだった。時間を見つけては読んだ。ただ、ひたすら読んだ。

 主人公が神からチートを授かり、異世界へと旅立ち、そこで力を思うがままに振るって活躍する姿。勇者と呼ばれる正義の味方だったり、まったり仲間と旅をしたり、領主になって技術革新したり、時には悪役だったりと、そんな様々な姿を見ては、純粋に楽しんだ。

 

 あなたはとても期待していた。今度は自分がそうなるのか、と。

 


「えぇ、そうです。あなたの望んだ異世界へ、なんとチートも付けて行けます」

 

 

 それを聞いた瞬間あなたは歓喜した。具体的には舞った。

 

 

「おや、それは……いえ、なんでもありません。けど、残念ながらその前にやらなければいけないことがあります。それを乗り越えて褒美が与えられるのです」

 

 

 おや、とあなたは思った。一体それはなんなのかと訊ねる。

 

 

「えぇ、転生トラックの運転手です」

 

 

 

 

 

 


 

 

 私は思う。果たしてこの者はいつになったら望む異世界へと行けるのだろうか。いつになったら私を忘れずに過ごせるのか。いつになったら……。

 

 

 そこまで考えて、上の考えることなど考えるだけ無駄だと思い直し、形だけの演出を、光でこの者を包みながら言葉を呟く。

 

 

「……まったく、ブラック企業どころか地獄です」

 

 毎回行うやり取りを思い出すがどうしようもない。

 今はただ、すでに壊れきったこの者の魂がまだ使えることを願って。

 

 

「人を何度も轢いてやっていられる魂等そう簡単に用意出来るものではありませんからね……まだ利用させて貰いますよ」


 

 もしかしたら、自分ももう壊れているのかもしれないと思いながら。

 

 

果たして読者の方々はこの話からどんなものを思ったでしょうか。

まぁ、上手い人はもっと上手に表現するだろうなと思いつつ……自分にはこれが限界ですかね。


出来れば感想を頂きたいところです。

あ、意味分からないとかは作者のメンタルが崩壊しますので控えて下さい。

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