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第7話 あなたは放棄した

最初は視点が違います。


 くそっ、くそっ、くそっ……なんて日だ!

 

 何故俺が追い出されなきゃならない!

 

 なんでこんな酷いめにあわなければならない!



「くそっ、せめて靴位履かせろよ……」

 

 

 足下から感じる痛み、冷たさから思わずそう呟く。

 

 俺は先程まで自室でゲームをしていた。PCでやる今時流行のオンラインゲームだ。あのぬくぬく空間で、ふかふかのソファーに座りながらやるゲームは最高だ。炬燵でアイスを食べるのと同じ位最高なものだ。

 

 それに加えてゲームのマイキャラクターは親の金で課金に課金を重ねた事と俺のプレイスキルと掛けた時間によってカンストと最高級の装備を得たキャラクターである。

 

 ゲーム内では知らないものは居ないほどの実力と功績を持つ。そりゃ、まぁ当たり前だ。俺は毎日24時間いつでもゲームにログイン出来るし、実際にしている。そういう意味でも有名だろう。寝る時は基本寝落ちだ。

 

 そりゃ、まぁネットの掲示板やらなんかでチヤホヤ、時に批評もくらうがそいつらは直ぐ様論破してやった。いや、良いことも言うやつはいたから普通に嬉しいが。

 

 そんな風にさっきまでチャットで同じようなことを楽しんでいたのだが、突如我が聖域に侵入してきた愚弟と愚妹によって無慈悲なる最後通牒を突き付けられた。

 

 なに、きっと俺の立場に嫉妬したんだろう。一日中好きなこと出来る立場、仕事しなくても飯は食え、親が甘いおかげでなんでも変える。そんな風に解釈した俺は最初に冗談だろうと言った。今ならまだその言葉を撤回出来るだぜ、と。

 

 しかし、返って来た言葉を聞いて俺は固まった。

 

 冗談でもなんでもない、本気だ、と。

 

 俺はそれを理解した直ぐ様俺は拳を握りストレートを放った。しかし、小賢しくも柔道を嗜んでいた愚弟により意図も容易く俺の人生掛けた一発を受け止められ、その後はお察しの通りだ。殴られ、蹴られの連続で最後は宇宙人よろしく両方の手首を捕まれ家の前へぽいっ、だ。

 

 靴なんて履かせて貰えるはずもなく、服も外を出歩く格好ではない。

 

 とぼとぼと覚束ない足取りで、たまたまズボンに入ってた百円玉三枚を片手に握りながら歩き出す。

 

 確かこの近くにはコンビニがあったはずだ。

 

 とりあえずそこでパンでもなんな買おう。まずはこの腹の 音を沈めなければならない。夜飯を食べる前に追い出されてしまった。

 

 なんて日だ。

 

 これからどうすればいいんだ……。

 

 この深夜に道を行き交う人々は幸い少ない。こんな格好を見られることは余りなさそうだ。

 

 警察にでも行けば、保護してくれるのだろうか。いや、窃盗でもすれば少しの期間確実に労働の喜びを感じながら生活を保証されるだろう。番号の名前を与えられながら。

 

 そんな時だった。

 

 コンビニにもう着くかと思われた時、ちょっとした交差点で不良のような女子生徒が横断歩道を渡っていた。あの制服はここら辺の……自分の母校か。よく視界に入っていたデザインだから覚えている。まだ変わったりはしてないんだなぁ。なんか懐かしい気分だ。

 しかし、状況がそんな悠長な事考えていられるようなもんじゃなかった。

 

 トラックだ。

 

 女子生徒目掛けてトラックが走ってきた。なんでだ、と思いよく見てみれば居眠り運転である。運転手は起きず、女子生徒は固まり、事故は避けられそうにない。

 

 そんな中、自分は脇目も振らず走りだした。ただ、女子生徒目掛けて。

 

 別に国家権力のお世話になるためでは無い。

 

 ただ、あの女子生徒を助けなきゃ、と。

 

 なんでそんなことを思ったんだか分からない。普段の俺なら絶対にそんなことは思わないし、考えない。けれども、この時実際に身体は走りだした。

 

 そして、間に合った。トラックにぶつかる寸前の女子生徒を奥へと突きだした手で押して、そのまま自分は挽肉へ。

 

 

 もしかしたら、自分の今までのことを一気に清算するために行く宛もないのも考慮して神さまが用意してくれたのかもしれない、そう思ったのが俺の最後だった。

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 

 

『なんともまぁ、ありきたりなシチュエーションですね』

 

 

 毎度の如く、仕事終わりに呼び出しのかかる無線機の向かうに居る上司の相手をする。

 

 

『テンプレが一番? それはそうですけどね。もっと別のシチュエーションも考えましょうよ。あなた最近こればっかですよ。毎回同じ内容を違う死者に説明する此方の身にもなってくださいよ』

 

 

 なに、よくある仕事内容じゃないか。テーマパークの受付だ、とあなたはそんな内容の事をどうでもいいように返す。

 

 すると少し怒気の含まれた声が返って来た。

 

 

『さすがに転生させるのを娯楽施設の受付と一緒にしないで下さい! ……聞いて下さいよ。あの、澄みきった何一つ後悔の無いような、奇跡に感謝するような表情で私を見て礼を言われるんです。けれども、私はあなたのやった大量生産品のようなものの状況に乗っかってるだけ。あなたは別にひとりひとりの事を考えてはいません。別にそれは無理があるんで流石にいいです。けれども、連続で同じことをされ、実態を知っている此方の身にもなってくださいよ!』

 

 続けて聞こえて来た奇跡なんて無いんです! 仕事なんです! という叫び声。

 あなたは一瞬で思考を放棄した。なに、何もおかしな事はない。ただ、優しい神様がいるだけである。充分奇跡だろう。

 そして、その下で働いてる自分も充分優しい奴だ。人を救って死ねるシチュを用意してるのだから。

 

 

『なんかくだらないことを考えてませんか? ……そう言えば今回の人も案外根は良かったですね。しっかり彼女を救いましたし。あなたは根のいい人ばっか目標になりますね。今までもそう言えば荒れてる人はほとんどいませんでしたね。このような人々が地上に溢れてるのはとても嬉しく思います』

 

 

 ……まぁ、思考を誘導出来る力の事については言わない方がいいのだろう、とあなたはとても思った。先代も先々代きっと隠していたんだろう。

 

 

『なんか気分も良くなってきたのでポイントのボーナスあげますね!!』

 

 

 なるほど、これが理由か。

 

 報連相とはよく言うが時と場合を考えるべきだとあなたは強く心に刻み込んだ。

 

 上司と部下じゃないのかって? 

 

 時と場合を考えて、臨機応変に、ケセラセラに。……つまりそういうことだ。

 

 

 

 

 

 

 

メインの方急いで書かなきゃなぁと思いつつ……。

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