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第3話 あなたは流行にのったのか



 気が付くとあなたは車の運転席に居た。

 

 えっ、という言葉が耳に入って来た。

 

 そして、自分の出した声だと理解する。

 

 じゃあ、とあなたは考える。

 

 確か、さっき白い空間から神を名乗るSYATIKUに何処かへとメタイ発言をされながら飛ばされたはずだ。はっ、あれが夢じゃないなら給料が無いじゃないか! 

 

 

 ……じゃなくて、転生トラックの運転手に転生したはずだ。

 

 なら周りを確認してみよう、と。

 

 手に触れるのは一般車とは一回りデカイ気がするハンドル。ただそれだけ。他はメーター等の計器類だけだ。

 

 いや、ハンドルに色んなボタンがついている。ふむふむ、これで全て操作するようになっているのか。

 

 後は足元にアクセルとブレーキのフットペダル。

 

 次にフロントガラスの向こうへと目を向ける。結構目線が高い気がする。やはりトラックなんだろう。そう思いながら確認する。

 

 あの硬質で、デコボコな感じは……。

 

 ……シャッターだ。閉まっている。

 

 あなたは少し気分が下がるのを自覚しながらも、今度は横の窓から確認する。

 

 壁だ。コンクリの壁だ。

 

 

 なんなんだここは、何も無いじゃないか。

 

 あなたはこのトラックから降りるという発想も持たずに、椅子を後ろへリクライニングして不貞寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーい』


『おーい、聞こえてますかー』

 

 

 ……誰かの声が聞こえる。寝かせて欲しい。

 

 

『あれ、おかしいな。……テステス』

 

『聞こえたら返事して下さいー!』

 

『マイクテスト中、マイクテスト中』

 

 

 ……テスト中なのか、本番なのかはっきりとして欲しい。

 

 このまま放って置いて自分のように不貞寝されても困る。実は聞き覚えのある声だと理解したため、仕方が無く、あなたは起きた。

 

 これから聞こえてるのだろかと思い、あなたはハンドルの横にあった無線機らしきものへと手を伸ばす。

 

 どうした、聞こえてるぞ。とあなたは自分でも信じられないような低い声で無線機の向こうの相手へと問い掛けた。

 

 やはりあなたは寝たいらしい。

 

 

『ひっ!? ど、どうしたんですか!? いきなり怖いですよ!』

 

 

 いやはや、すまない。悪気は無いんだ、多分。

 

 そうあなたは弁解しながら話の続きを促す。

 

 

『そ、そうですよね。……えっと、今多分あなたは無事トラック運転手に転生出来たと思います』

 

 

 まぁ、赤ちゃんからでは有りませんけどね。と無線機ごしの存在は付け足しながら言う。

 

 まぁ、一度死んでるから別に転生という分類でいいんだろうとあなたは考えてるので何も言わずにまた続き促す。

 

 

『あぁ、はい。それでですね。そのトラックは特別製で、ハンドルとアクセルとブレーキ以外は全てそのハンドルのボタンで操作出来ます。あ、タッチパネルからでも出来ますよ。つまり、車の運転をしたことない方でも出来るようになってるんです』

 

 なるほど、とあなたは頷く。確かにハンドルとアクセルとブレーキなら誰でも知っている。しかし、それ以外は運転未経験者にはキツいだろう。

 

 よく考えられているな、とあなたは伝える。

 

 

『えへへ、ありがたいございます。……それでですが早速仕事をしてもらいたいと思います。指示された人を轢くだけの簡単なお仕事ですよ!』

 

 

 そんなに人殺しを楽しそうに言わないで頂きたい。けど、照れはかわいい。

 にしても、無線機ごしだから心をまだ読まれてる気配は無い。ならばこのことは心の中に秘めておこうと考える。

 

 さて、お仕事と聞いてあなたは思い出したことがあった。給料のことだ。

 

 この仕事に報酬はあるのか。それを今確かめなければならない。場合によっては……と、あなたは訊ねることにする。

 

 

『ひっ』

 

 

 そんなに怖がらなくてもいいのに。

 

 

『あ、ありますよ。報酬。なんと、ノルマを達成すれば貴方の望む異世界へのチート付き転生が出来ます!』

 

 

 

 なんと! 今とんでもないことをこの存在は言った。

 

 あなたは思わず手をばんざーいと上へ伸ばしてしまった。

 

 そう、そうしたら必然的に指が天井にぶつかる。

 

 それは突き指と呼ばれるものだ。

 

 

『だ、大丈夫ですか!? 何があったんですか!?』

 

 

 あなたは思わず叫んでしまい、それが聞こえた神を名乗る存在が焦った声で心配してくる。

 

 それを少し嬉しく思いながらもあなたはなんでもないと伝える。

 今、天井を向いたおかげで上の空間にしまってあったマニュアル本を見つけることが出来た。

 

 

『ほ、本当ですか? 今あなたに何かあったらとても困るんですから……』

 

 

 あなたは少し不思議に思ったが気にしないことにする。なんか、聞いてしまったら深く後悔するような気がするからだ。

 

 あなたは話を戻そうと仕事について訊ねた。

 

 

『あ、そうですね。どうやってやるかと言うと、言葉のまんまです。ただ、その人を見つけ、トラックで当たりに行くだけです。そこのシャッターから出れますよ!』


 

 ほうほう、とあなたは見つけたマニュアル本を早速見ながら確認する。この神を名乗る存在の説明は言葉が足りない。

 

 なるほど、このシャッターは自由に色んな場所と繋げることが出来るのか。おっ、トラックの中からも開けられるのか。わざわざ降りなくても操作可能。

 

 あなたはそんな情報を得れて大満足。

 

 

『あのー、聞いてますか? まぁ、いいです。見つけると言ってもトラックのタッチパネルで見れる地図に居場所は表示されるんで大丈夫ですけどね。後、関係無い人を巻き込まなければ自由にやってくれて問題ないですよ』

 

 

 実はトラックから降りてやってもいいんですけどね、と呟いたことは聞かなかったことにする。

 

 それは完全に刺すってことかな、とあなたは思い悩んだ。

 


『まっ、定番と流行はトラックなんで!』

 

 

 確かにそうだな。

 

 

 


 

 

 

 


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