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第2話 あなたはブラック判定を下した


「転生トラックの運転手です!」

 

 

 あなたはそれを聞いた瞬間怒鳴りそうになった。

 

 自分は異世界転生出来ないのに、それをさせる仕事に自分はつけと言うのか、と。

 

 しかし、怒鳴ったところで事態は何も変わらないことをあなたは今までの経験で知っている。相手の気分を害し、事態を悪化させるだけだということを。

 

 なので必死にその衝動を抑える。

 

 落ち着け、冷静に……。

 

 

「おー、人が出来ていますね」

 

 

 あなたはしまった、と思わずにはいられなかった。


 この神を名乗る存在は心を読めるのだ、と。

 

 

「気にしなくていいですよ、何をどうしようとこれからすることは変わりませんので」

 

 

 知ってた。

 

 

「ですよね。ご理解早くて助かります」

 

 さて、と神を名乗る存在は言葉を続ける。

 

 

「それで、貴方に転生してもらうのですが、何をしてもらうのかと言うと、とても簡単なことです」

 

 

 あなたは完全に抵抗を諦め、聴く姿勢になる。

 

 

「簡単に反応したんですか? ……まぁ、いいんでしょう。あなたには、此方の指示に従い、人を転生させて貰います」

 

 

 ほほう? それって……。

 

 

「そうですね、人を轢いて貰うことになります」

 

 

 あなたは無性にこの存在から離れたくなった。

 

 しかし、あなたは落ち着いて、言葉を出す。人に人殺しを強要する神ってなんなの、と。

 

 

「いや、違いますよ。立派な仕事ですって。神に仕えて働くんですって」

 

 

 世も末だな。

 

 あんたの言っていることは詐欺師と変わらない、悪魔でも人殺しを強要することはないだろう、とあなたは言った。

 

 続けて、一緒に警察に行こうな、と言った。

 

 あなたはここがどこかも分からない不思議空間であることを忘れ、神を犯罪者扱いした。

 

 

「いやいや、それを言うなら上に言って下さい」

 

 

 どうせそうしたら、同じような事言われたり、担当が違いますとか、色んな部署をたらい回しにされるんだろう?

 

 

「どこの企業ですか!」

 

 

 この犯罪者達め! いや、犯罪社か?

 

 

「上手くないですからね! てか、さっきから口に出すこと忘れてますよね! 心読むのだって楽じゃないんですからね!」

 

 

 あなたは少しにっこりした。

 この存在にやり返せる、と。

 

 何故自分が一方的に色々言われなきゃならんのだと思っていたところである。

 

 いきなり死んで、また働けと言われて、しかも人殺しを強要される。なんてブラック企業だ、と。

 

 

「だから違いますって! ブラックでもありません! どちらかと言うとホワイトです!」

 

 

 どちらかと言うと……ね。

 

 

「うっ……そりゃ給料ありませんし」

 

 

 それガッツリブラックやで。

 

 あなたは直ぐ様ツッコミを入れた。

 

 そもそもホワイト・ブラックとか以前の問題として、企業として可笑しいのだが、それにツッコミを入れる者は今この場に居ない。

 

 

「はっ!? いや、自分の神として力が上がりますから! それに休みは多いですし……災害とかテロがあるとそんなもんぶっ飛びますけど」

 

 

 手当ては?

 

 

「……ありません」

 

 

 ブラック確定。

 

 

「あぁ、もううるさいです! 話が進まないんでさっさと逝って下さい!」

 

 

 えっ、ちょっと待って。何この落ち着く光。

 

 あなたは今度ははっきりと口に出して訊ねた。

 

 

「落ち着くんですね……これは転生させる時等に使うエフェクト。ただの演出ですよ。まぁ、神の力ではあるので落ち着くのかもしれませんね」

 

 

 普通は慌てるんじゃないですか、ともう威厳等へったくれも無い神を名乗る存在、改めブラック企業の奉公人、つまりSYATIKUは言った。

 


「では、この者の行く末に幸があらんことを……まぁ、あなたの場合私の部下ということになるので、転生してもすぐ会いますけどね」

 

 

 形だけですよ、そう付け加えたこの存在はやはり神なのかもしれないと思いながらあなたの意識は薄れていった。

 

 


 しかし、完全に意識が無くなる寸前、あなたは気付いてしまった。

 

 あの神はなんと言っていた? 

 

 給料は無いと言っていた。

 

 自分は部下になるのだ。

 

 なら自分も給料は無いのでは?

 


 

 これは最低賃金法違反だ!

 

 あなたは激しく叫びたくなったがあなたの口はもう動かなかった。

 

 

「神界に法を持ち込まないで下さい!」

 

 

 そんな叫びが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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