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第2節 プロローグの始まり(2)


「本当食堂まで遠いよな〜」

「それな〜誰か移動に便利な能力ないのかよ」

 

 黒羽は時間になって部屋を出ると他の人たちも丁度移動を始めたタイミングだったらしく、例の如く一番後ろで金魚の糞のように着いて行った。

 因みに移動に便利な能力はお前の隣にいるやつが持ってるぞ。

 

 

 食堂は中に入ると木の机と椅子があるシンプルな造りだった。他の生徒は席に座っていたので俺も適当な場所に座る。できる限り人がいないところだ。

 男子が全員席についたあたりで、女子がぞろぞろとやってきた。中には先生の姿もあり、女子生徒と仲良くしているようだった。多分保健委員の女子生徒だな。それにしても高校生に混じっても違和感がなさすぎて逆にびっくりだ。

 先生もこちらに気がついたらしくこちらに来ようとしたが、笑顔で止めて他の人とも仲良くしてください、と合図を送った。一瞬寂しそうな顔をされたが、俺の合図を理解したのか保健委員の隣の席に座った。

 

 俺が先生を止めた理由は幾つかある。基本先生と関わりがあるこのクラスの生徒は保健委員と俺くらいなものだ。だから他の生徒とも仲良くなってもらおうというわけだった。先生の生存率を考えるとこれが一番良い手なはずだ。

 そしてもう一つは俺が悪目立ちするのを避けるためである。どうやら俺と先生が一緒にいるのを快く思わない奴もいるらしく、食堂までの道で凄くぐちぐち言われたのだ。鬱陶しいったらありゃしない。

 

 殆どの女子が食堂に入ってきた時、最後に見覚えのある女子生徒を発見した。白羽月夜だ。さっきから一人でいるところしか見ないが、もしかしてあいつもぼっちなのか?

 自分の事を棚に上げて哀れみの眼差しを向けていると、白羽は俺を見つけるや否や、一直線でこちらに向かってきた。急いで視線を逸らした時にはもう既に遅かった。

 

「ここいいかしら?」

 

「......は?」

 

「あなたの前の席よ」

 

「あ、あぁ......」

 

 黒羽は困惑しながら頷いた。どんな難癖付けられると思っていたがまさかの精神攻撃か?食事している俺を睨んで食べづらくする作戦とかか?

 今までの経験上俺の視線に気づいたやつは、「何見てんだよっ!」みたいに難癖つけられ、集団リンチされるのが常だったので、この反応は予想外だったのだ。

 というか視線だけでアウトってさすがに酷すぎだろ。ぼーっとすることすら許されないってのか?

 

 

「あなたの考えていること、当ててあげましょうか?」

 

「お、おう」

 

 急に話しかけられたので反射的に答えてしまった。断ったら後が怖いので基本的には断らないのだが、急にこんなこと言われて戸惑ってしまったのである。

 

「やばい、超可愛い子と同じ席で食べれるとか俺ってラッキー!」

 

「は?」

 

「いいわ、皆まで言わなくて。分かってるから」

 

「いやいや、何一つ分かってないんだが」

 

 コイツ何言ってるんだ?考えていることが全く理解できない。というか終始表情が変わらない。

 確かに顔は可愛いと言っていいだろう。長くて綺麗な髪、全く日焼けのない白い肌、くっきりとしたまつ毛に、二重瞼の大きな目。プロポーションも悪くはなく、非の打ち所がないと言えるだろう......外面に関しては。

 

「あら、私を見て興奮しないとは......おかしいわね......」

 

 真顔でぶりっ子発言とか、おかしいのはお前の頭の方なんじゃないか......?もちろん思っても口には出さないが、怪訝な目で白羽を見ていると、

 

「後で話があるの」

 

「ここではできない話なのか?」

 

「できれば周りに人がいない方がいいわね」

 

 雰囲気からしていつものようにリンチの呼び出しではないと思うのだが、信用していいものか......

 黒羽が頭を悩ませていると、神官が入ってきた。明日からの説明とやらが始まるらしい。

 

「まず勇者様、お部屋の方は満足いただけましたかな?」

 

「あ、はい!」

 

 相変わらず答えるのは代表である天ヶ崎だ。

 

「では食堂の使い方と明日からのことについて説明いたします」

 

 そう言って神官は4人の先生を紹介した。

 

「アイリス・サーテリア、魔法訓練担当よ。よろしくね」

 

 こう言って投げキッスをした女性が魔法訓練担当の先生だ。見た目20代後半のお姉さんといった感じだろうか?紅髪と大きな胸が特徴だ。

 クラスの男子の殆どが歓声をあげた。

 

「アイザック・ノーフィスだ。戦闘訓練を担当する。俺は厳しいぞ!」

 

 戦闘訓練担当の先生。見た目は30代半ばで、ヒゲを生やしている。渋いおじさんみたいな人だ。身長は高く180後半はありそうだ。

 

「クロウ・ヘイルです。皆さんの歴史学を担当します。よろしくお願いします」

 

 三人目は座学の歴史学と言ったかな、担当の先生だ。爽やか金髪碧眼で、学園系乙女ゲーの教師役で隠れキャラとかになってそうな風貌だ。

 今度は女子が歓声をあげた。

 

「ミレア・ドミニクですぅ〜。皆さんの魔物学を担当しまぁ〜す」

 

 おっとりと言った方がいいのか、眠そうと言った方がいいのか、魔物学担当の先生だ。栗色の髪に幼い容姿。見た目は中学生......下手したら小学生に間違われる可能性もある。体より一回りも二回りも大きな白衣を着ている。

 

 以上4人が、俺たち担当の先生達だ。

 

 

 そして明日からについてだが、長かったので割愛する。

 簡単に説明すると、ご飯は8時12時19時の計3回。9時からお昼まで座学、13時から17時まで戦闘訓練。残りは自由行動だそうだ。街に行ってもいいし、部屋でごろごろしててもいい。ただ、訓練をする時は事前に許可を取るようにとだけ注意を受けた。あと、週に2日の休みがあるらしい。ここは日本と同じだな。日本で言うところの日曜日が本日らしい。

 因みに街に行ってもいいって話のところで、

 

「すいません、俺たちお金持ってないんで、街に行ってもすることないと思うんですけど〜?」

 

 クラスの男子で早岐龍が手を上げて言った。こいつが例の移動に便利な能力者がこいつだ。能力は時空操作。多分テレポートとかできるのではないだろうか?

 今はそんな事どうでもいい!

 

「はい、勇者様には軍資金を用意しております」

 

 早岐の台詞により俺たちに軍資金が配られた。言わなくても配られてたかもしれないが、まぁ良くやった早岐!ただ、お前が俺にしたことを俺は忘れないからな?

 早岐は元の世界で俺を虐めていた奴の一人なのだ。と言っても制服を隠されたり、捨てられたりした程度だけどな。ハサミで割かれた事もあったから、全然ましと言えるだろう。まぁ恨んでるけどな。

 

 閑話休題、俺たち全員に金貨が1枚ずつ配られた。

 

「これは1ヶ月分の軍資金になります。平民の年収が金貨3枚と言えばその価値は分かりますかな?」

 

 ゴクリ......喉が鳴った。

 平民の年収の三分の一、だいたい100万円分くらいの価値と考えておいていいだろうか?この国の平民の年収が、日本円になったらどれくらいかとか分かるわけないので、それくらいのイメージでいることにした。

 因みにレートだが、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚らしい。1ヶ月のお小遣いにしては多すぎだと思うのだが......

 

「そのお金で装備も整えてもらいます。計画的にお使い下さい」

 

 装備の値段はわからないが、俺達がここにいられるのは1ヶ月。それからは戦闘に駆り出されることだろう。つまりこの金貨1枚はかなり重要だということだ。黒羽は金貨をぎゅっと握りしめた。

 

 因みに食堂でも殆どのメニューはお金が必要らしい。世知辛い。どれも銅貨3枚程度なので、だいたい300円くらいだから良心的とは言えるのだが。

 

「そうそう......」

 

 神官は一通り説明して出て行こうとすると、思いついたようにポンと手を叩いて振り返り、

 

「言うのを忘れてました。勇者様達にはパーティーを編成してもらいます。この1ヶ月の間は勇者様同士でお組みください。それではまた1ヶ月後にお会い致しましょう」

 

 ......最後の最後に爆弾置いていきやがったぁぁぁあああ!!!

 黒羽は心の中で絶叫した。

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