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第1節 勇者召喚(6)

はなきん最高!

プレミアムフライデー∠( 'ω')/

「勇者様、能力の確認はできたでしょうか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 天ヶ崎はクラス全員と目を合わせて確認したあと、神官に返事をした。今や天ヶ崎は勇者代表みたいな存在になっている。

 

「ではこちらで一人ずつ能力の報告などを聞いてもよろしいですか?」

 

 魔王を倒すにあたってレベル上げや、戦闘の作戦などを立てるのに、一人一人の能力を把握しておいた方がいいからというのが理由ならしい。

 どうせ勇者の管理も含めているのではないだろうか?危険な能力を持っている場合、マークしたりする必要があるからな。

 

「わかりました。みんな!一列に並んでくれ!」

 

 天ヶ崎に言われてゾロゾロと一列に並び出した。

 

 「俺の能力は___」「私の能力は___」クラスの人達が神官に報告していく中、10人目あたりで叫び声をあげた。

 

「きゃあああああああ!!!」

 

 遠目から見ていたので何が起きたのか詳しく分からなかったが、電流が直接当たったように見えた。

 黒羽は性能看破を発動して女子生徒を見る。

 

 高木七奈【異世界人】

 スキル:人形作成

 魔法:なし

 能力:傀儡師

 

 高木は黒焦げになって死亡した。遠目から見てもわかるが、高木の死体は人であったこと以外判別出来ないレベルで焼けていた。皮と制服の境目はなく、顔などは部位の位置がわかる程度だ。

 

 肉の焦げる悪臭と、死体から煙が上がる中、天ヶ崎が怒りを顕にする。

 

「何で彼女を殺したんですか!!」

 

 他の生徒は何が起きたのか理解できないらしく、棒立ちになっていた。理解するのを拒否しているのかもしれない。

 高木の死体は柱の影にいた兵士達がどこかへ引きずって行った。

 

「あ、そうでしたな!言い忘れておりました!」

 

 神官が悪びれもなく、わざとらしく咳払いをしたあと、

 

「虚偽の報告をしたものには罰がくだされます。女神様は嘘を嫌いますので罰が下されるのです。ですが安心してください。嘘をつかなければ良いのですから」

 

 そう言うと神官はにっこりと胡散臭い笑みを浮かべた。

 ぶっちゃけ高木のことはどうでもいい。というかあいつも俺を虐めてたやつの一人だった。まぁ高木は影でグチグチ言うだけの比較的優しい部類だったので、東條の時ほどテンションが上がったりするというわけではなかった。しいて言えば、「へー死んだんだあいつ......運が悪かったんだな」って感じだ。

 だが、高木の死に方に関しては個人的に感謝している。何故なら俺は虚偽の報告をする気満々だったからだ。俺の能力は封印された能力と、性能看破です!とか言えるか!

 それこそ勇者としての能力が封印されている。つまりお前は勇者じゃない。とかいう理由で殺される可能性だってある。

 だから虚偽の報告をする気だったのだが、高木のおかげでとりあえず俺は雷エンドは無くなったよ。ありがとう。

 

「ちなみに先程の者は『私の能力は賢者であり、全ての魔法が使える』と仰いました。どうやら嘘だったようですがな。残りの勇者様は本当の事を報告してもらえることを私は願うばかりです。これ以上勇者様が減っては困りますからな」

 

 全然違うじゃねーか!!

 七奈の本当の能力を知っている黒羽は全力でツッコミを入れた。

 

「......クソッ!」

 

 天ヶ崎は荒々しく吐き捨てた。

 

「隼人、落ち着けって。とりあえず残りの皆は本当の事を言うように頼むな!」

 

 日下部は天ヶ崎を宥めつつ、俺たちに指示を出した。命に関わるので指示を破る者はいないだろう。

 それにしてもやる事が女神とは思えないのは俺だけだろうか。本来の姿というか、祝福を与える時の姿を見ている分、邪神としか思えないのだが。

 

 それから誰一人犠牲になることなく、自分の番が回ってきた。いよいよだ。

 

「貴方様の能力は何ですか?」

 

「俺の能力は性能看破です。他の人のステータスを見ることができます。勇者の特殊な能力も見ることが可能です」

 

 黒羽は封印のことは伏せて、性能看破の事を報告した。嘘は付いていない。だって本当の事を全て言う必要はないだろ?

 神官は不思議そうに首を傾げた後、「わかりました」と言った。

 それを聞いて、ふぅ...と息を吐くと半ば定位置と化している後ろの方に行った。

 

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

 後ろに戻ると由美が真っ青な顔で震えているので声をかけたのだった。

 

「も、もう私...何が何なのか......」

 

 由美はどうやら完全に混乱している様だった。目の前でこの短時間のうちに生徒二人が死んでいるのだ。気が狂っても仕方ないと思う。

 

 なんて言えばいいのか......黒羽が頭を悩ませていた。クラス連中が二人死んだからといって、悲しんだりなどしないのだ。由美先生の気持ちが全く理解できないのに、慰めたりなんて出来るわけがない。安っぽい言葉をかけるのもどうかと思うしな。

 

 黒羽がどうするものかと迷っていると、由美は急に顔を上げて、黒羽の手を握り

 

「黒羽君は私の前で死なないでね」

 

 泣きそうな顔でそう言ったのだった。黒羽は顔が熱くなっていくのを感じつつ、由美の手を握り返して

 

「俺は死ぬ気ありませんから」

 

 と笑いかけたのだった。これは黒羽の本心である。ちなみにこの台詞の前に「例えクラスの奴らを犠牲にしてでも」と付くのだが、そこは言わないことにした。雰囲気的に。

 

 

 

「では勇者様!ここでやる事は終わりましたから、移動するとしましょう」

 

 神官は勇者達の特殊な能力を書いた資料をまとめると、扉の方に俺たちを案内した。

 

「移動するってどこに行くんですか?」

 

 若干の怒りを残しつつ、先頭の天ヶ崎が神官に聞いた。

 

「勇者様達の住む場所ですよ」

 

 そう言って神官は扉を開いた。

 

「「.........」」

 

 そのあまりの光景にクラスの誰もが言葉を失った。世界遺産に登録されている絶景と言える場所よりも綺麗なのではないだろうか?

 空が高いと感じるほど広がる青い空。沢山の木々と、流れる川。そこに住む動物達の鳴き声。さらに空に飛んでいるのは飛竜か?

 人の手の付けれられていない、大自然の壮大さというものを初めて目の当たりにして、全員が息を呑んだ。

 

「空気が美味しいというのがというのはこういう事を言うのかな?」

 

 由美先生が耳元でそっと囁いた。

 

「いつものその台詞聞いた時、空気に味なんてないだろってツッコミ入れてたんですけど......確かに空気が美味しいです」

 

 黒羽は関心したように言った。排気ガスが無いおかげで空気が澄んでいるからなのか、口や喉などの器官を通って肺に空気が行く感覚がとても気持ちいいのだ。清々しい気分になると言ってもいい。

 

 クラス連中も感動で「おぉ!」とか色々声を漏らしている。ただし、数人の顔は優れない。天ヶ崎たち最上位グループと、高木の友達だ。

 天ヶ崎は単純に責任とか感じてるんじゃないか?高木グループは友達を目の前で亡くしてるから、顔色が悪いのも頷ける。

 というかその他共!お前ら切り替え早すぎだろ!!実は大して悲しんでたりしてないだろお前ら!俺が言うのもなんだがもう少し気にしてやれよ!

 よくよく思うと先生もだけど、何か原因でもあるのか?流石にここまで薄情な奴らではないと思うのだが......

 

 他のクラスメイトの行動に疑問を浮かべつつ、黒羽は勇者の住む場所、拠点となるところに行ったのだった。

残りの勇者の数40/42人


この話で第1節 勇者召喚は終わりになります。長々と失礼しました。

物語が進行しだすのは次の第2節の途中辺りになるかと思います。

今後とも大罪勇者伝説をよろしくお願いします

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