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第1節 勇者召喚(5)

「勇者様、ステータスの確認は終わりましたかな?」

 

 あぁ終わったよ。色々な意味でな。

 

「それでは次は勇者の力である特殊な能力の確認をしてもらいましょう」

 

 特殊な能力......そう言えばそんなのがあったな。もしや自分のあまりにも低くて使えない雑魚タンクのようなステータスはこの能力が原因なのではないだろうか。いや、そうに違いない!

 黒羽は希望を見つけることで、自身を奮い立たせた。こう考えないとやってられない。

 

「それでは先程のようにステータス画面を見てください」

 

 黒羽は神官に言われたようにステータス画面を開いた。

 

 性能開示。何度見ても萎えるステータス共だ。

 

「では反転と唱えてください」

 

 ちぇんじね......

 黒羽は今1度呪文を確認すると、覚悟を決めて唱えた。反転!

 

 すると自分のステータス画面がくるりと反転した。黒羽は恐る恐る反転後の自らのステータスを確認する。

 

 八咫黒羽【異世界人】

 スキル:なし

 魔法:なし

 能力:解析不可(能力封印)、封印解除、性能看破

 

 ......?

 何かの見間違いかと思い、目を擦って頬を抓ったあと再度確認する。

 さて如何様か!

 

 結果だけ述べると、最初に見た時と何も変わってはいなかった。

 何だこの能力は!解析不可ってなんだよ!しかもその理由が能力の封印ときた。さらに封印解除って自分でいつでも封印を解除できるってことか?

 ......これもうわかんねぇな。

 

 とりあえず物は試しだな。

 黒羽は封印解除と唱える。すると目の前に、

 

 この封印を解除すると貴方の見た目が変わる恐れがあります。一度解除された封印は再度封印することはできません。(さらにあなたの人生は過酷なものになるかもしれません。)

 本当によろしいですか?

 【はい】

 【いいえ】<

 

 こんな画面が出てきた。()内の文字は凄く小さく書かれていたものだ。見た目よりもそっちの方が重要だろうが!見た目が変わるってのも重要だけどな。封印解除したら再度封印はできない。これは小説とかでもよく見る設定だが、自分の身になってみるとこんなクソみたいな設定は早々ないな。見た目が変わるのに再度封印不可とか、もしあの女神像?の祝福時のような禍々しい姿になってみろ。人里に下りるどころか、ここにすら居られるとは思わない。只でさえ居場所がないのだから。

 

 今は決心がつかなくて【いいえ】を選択した。

 

 ステータス画面でもそうだけど能力までこれって踏んだり蹴ったりだな。

 黒羽は何度も深い溜息をついた。そして黒羽は思い出す。もう一つ最後に残された能力があるではないか。名前の通りだとどんな能力か予想はできるんだけどな。

 黒羽は性能看破を発動させる。

 

 おぉ!これは中々便利じゃないか!

 能力は予想通り自分の視界にいる相手のステータスを見ることができた。そうだ、天ヶ崎や日下部のステータスはどんなものなのだろうか?

 黒羽は二人の方に視線を向ける。周りにいる女子が邪魔で見辛いが、

 

 天ヶ崎隼人【Lv1】

 体力810

 魔力500

 攻撃力720

 防御力680

 俊敏性710

 

 日下部誠【Lv1】

 体力410

 魔力330

 攻撃力900

 防御力300

 俊敏性740

 

 ......死ね。初めに出たのはそんな感想だった。もう死ねとしか言い様がない。なんだその恵まれたステータスは!天ヶ崎はオールラウンダーで全体的にハイスペック。日下部は防御力と魔力が低いものの、攻撃力、俊敏性は化物ステータスの天ヶ崎を上回っている。癖はあるが支援さえかければ最強のアタッカーになるステータス構成だ。

 コイツら俺のステータス奪ってんじゃねーのか?

 俺はついでに反転を唱えてみた。

 

 すると視界にあるステータス全てが反転してスキルや魔法などを表示した。

 

 天ヶ崎隼人【異世界人】

 スキル:聖剣召喚

 魔法:使用不可

 能力:勇者

 

 日下部誠【異世界人】

 スキル:ためる

 魔法:使用不可

 能力:鬼神化

 

 .........白目。ははは、勇者って異世界人で特殊な能力を持つ者の総称じゃなかったのか?身分も勇者で能力も勇者?人生イージーモードかよ!俺のハードモードとチェンジしろ!

 日下部は予想通りというか何というかステータスから見ても武闘家タイプだとは思っていたが、能力もそのようだな。

 

 能力の詳細を知ろうとしたが、どうやら性能看破では見れないようだ。どうせチート能力なのは火を見るより明らかだろう。羨ましい限りだ。

 

 本日何回目かの深い溜息をついて、二人を視界から外した。恵まれた二人を見てると嫉妬で殴りに行きそうになるからだ。その結果はわかりきっている。間違いなく俺が惨敗して下手したら殺されることになるだろう。

 今は現実逃避をするのが先決なのだ。

 

 他の奴らを見てると、やっぱり自分より恵まれているやつが多くて腹立たしい。ステータスは自分が最弱なのではないだろうか?

 半分諦めながら自分より下を探していると、一人見つかった。あいつはさっきの謎の女子じゃないか。

 

 白羽月夜【Lv1】

 体力50

 魔力150

 攻撃力50

 防御力50

 俊敏性150

 

 二つ150でそれ以外50......酷いステータスだなぁ。

 黒羽は自分のことを棚に上げて月夜のことをそう評価した。ついでとばかりに反転も使う。

 

 白羽月夜【異世界人】

 スキル:なし

 魔法:なし

 能力:解析不可(能力封印)、封印解除、性能看破

 

 何から何まで同じじゃないか!黒羽は心の中で声を上げた。酷いステータス。封印されている特殊な能力。性能看破。デジャブどころの騒ぎじゃないぞ!

 何か俺たちに関連性があるのではないだろうか?

 黒羽は心当たりがないか月夜に聞きに行こうとするが、誰かが後ろから肩を掴んだため、行くことができなかった。

 まぁ後ろにいる人なんて心当たりは一人しかない。

 

「どうしたんですか?先生」

 

 黒羽はそう言って振り返った。

 

「黒羽くん!!見て見て!」

 

「先生、一度落ち着いて」

 

 珍しくハイテンションな由美を宥めつつ、黒羽は由美のステータスを確認する。

 

 竹内由美【異世界人】

 スキル:なし

 魔法:回復魔法

 能力:―

 

「能力何も書いてませんよ?」

 

「え、本当?でも私からはちゃんと書いてあるように見えるんだけど......」

 

 二人でクエスチョンマークを浮かべていると、タイミングを見計らったように神官が、

 

「言い忘れておりました。勇者様の特殊な能力に関しては他人に見せることができません」

 

 なるほど。だから由美先生が見せてくれたステータスの能力欄には何も書いていなかったわけだ。いや、待てよ?俺の性能看破は他人の能力を見ることが出来たよな?

 今度は性能看破を使って由美先生のステータスを見る。

 

 竹内由美【異世界人】

 スキル:なし

 魔法:回復魔法

 能力:聖女

 

 やはり見えるよう......だ......。黒羽は由美のステータスを見て言葉を失う。

 セイジョ?セイジョッテナンデスカ?

 嫉妬やら羨望やらで黒羽の思考はついにショートを起こした。

 ステータスでも負けて、能力も負けてる?いや、封印されているだけでまだ可能性はある!まだ大丈夫。俺はまだ本気出してないだけだ。

 黒羽は心が折れそうになるのを必死の思いで堪えた。

 

「えっとじゃあ口頭で伝えるわね。私の能力は聖女らしいの。全ての回復魔法を使えるようになるんだって!」

 

 なるほど、由美先生は昔医者になりたかったようで、色々理由があって学校の保健室の先生をするようになったんだって言っていた。

 形は違えど人を救える能力を手に入れたことが嬉しかったのだろう。

 

「オメデトウゴザイマス」

 

 黒羽は何とか祝いの言葉を捻り出した。素直に人の幸せを喜べないのは、今まで虐められてきたからなのか、生まれ持った性なのかは知らないが、そんな黒羽にとっても由美は特別な存在であったらしく、カタコトながら由美を祝った。

 黒羽の能力が優れていたなら話は別だっただろう。心の底から祝うことが出来ただろうが、今の黒羽にとってはこれが最大限の祝福なのだ。どうか察してほしい。

 

「あー!信じてないでしょう?」

 

 由美は子供っぽく頬を膨らませてそっぽ向いた。可愛い......ってそうじゃなくて。

 

「信じてますって」

 

 何せ自分で確認する手段を持っているし、実際に見た。それに由美先生の言葉なら大抵のことなら信じる自信がある。周りに信頼出来る相手がいない中で数少ない味方であった由美は、黒羽にとっては無条件で信頼出来る人間なのであった。

 

「ふふっ!今後は怪我したら私が治してあげるからねっ!」

 

「頼りにしてます。まぁ怪我をしないのが一番いいんですけどね」

 

 二人は微笑みあった。

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