第1節 勇者召喚(4)
とても寒くて、書いてる時手が凍りそうでした(笑)
皆様も服装には気をつかって風邪などにはお気をつけください
前に集まっていたクラス連中が神の祝福を授かり、残りは俺、由美先生、謎の女子の三人となった。
「先にどうぞ」
俺は二人に先を譲った。特に理由はないが、何で反感を買うか分からないからな。何由美先生より先に祝福受けてんだよ!とかで殴られたらたまったもんじゃない。
「わかったわ」
そう言って由美先生は女神像の前に行った。謎の女子も由美先生の後を追う。
返事くらいしろよって思う俺は小さいだろうか?
二人が祝福を授かったあと、自分の番が訪れた。コソコソと女子の声で「えぇー八咫も?」とか「別に八咫とか要らなくない?」とか聞こえてきたが無視した。
俺は女神像の前に行き、膝をついた。そして祈る様に手を組みつつ片目だけ開いて女神を観察する。
目を閉じてと言われると開けたくなるのが人の性だ。
するとどうだろう。遠目から見ていた女神像とは全く別の姿に見えるのだ。
遠目から見える女神像は、両手を広げ、優しく微笑み、神官の着ているローブを豪華にしたような感じの服を着ていて、背中には芸術的な翼が生え、頭にティアラをつけている。
母性のようなものを感じ、優しく包み込んでくれるような雰囲気があったのだが、ここから見えるものは全くもって違っていた。
両手には武器(剣と斧)を持ち、表情は一変して相手を嘲笑うかのよう、頭からは角が生え、翼はコウモリのようなもの、服は所々破れて荒々しさがある。
う〜む......これ本当に女神か?
むしろ魔王というか悪魔のそれに近い気がするのだが。神だとしても邪神の類な気がしてならない。
祈る神を間違えたか?
黒羽はそんな事を考えていると儀式は終わったようで謎の光が消えた。
これを追求すると厄介な事になりそうだ。
黒羽は何も言わず、何事もなかったかのように元の場所に戻った。触らぬ神に祟りなしだ。
既に触ってしまったような気もするが、そこは気にしない方向性でいきたい。というか何故あの時目を開けてしまったんだよ!
数分前のことを早速後悔する黒羽であった。
黒羽の後悔は置いておいて、神官から色々説明があった。
「これで勇者様達にはスキルや魔法が使えるようになる他に、特殊な能力を得られたはずです。頭の中で念じてみてください。性能開示と!」
神官に言われた通りクラスメイトがそれぞれやってるのを見て、黒羽も実践する。
(えっと、すてーたすおーぷん?だっけか?)
すると目の前がゲームでよく見るステータス画面になった。ステータス画面は半透明で現実世界もしっかり見えるようになっている。
それでなになに〜
黒羽は自分のステータスを確認していく。
八咫黒羽【Lv1】
体力150
魔力50
攻撃力50
防御力150
俊敏性50
これは高いのか低いのか?判断基準がないからよくわからん。判断しあぐねていると、
「目安ですが、ステータスの平均が、一般的な農家の場合50、下級冒険者が500、中級冒険者が2500、上級冒険者が5000くらいになります。ちなみに過去の勇者は1万を超えたそうです。まぁ勇者様達はまだLv1ですので低いとは思います。大体150〜350くらいになるのではないでしょうか?」
ハハ...ハハハハハ......
そうですか、俺の平均は一般的な農家ですか......
というか神官の予想ステーテスと同じものが2つだけって。しかも防御力と体力ってこれ絶対虐めが原因だろ!確かに耐久性は上がったかもしれないが!!
自分のあまりのステータスの低さに絶望していると横から「おぉ!」という声が聞こえた。
「天ヶ崎君凄い!!全部500超え!?」
「いや、別にそれほど凄い訳じゃないよ」
「いやいや凄いよ!私なんて200程度だもん!」
「私だって____」
女子がきゃあきゃあ騒いでいるが、重要な単語は聞き逃さなかった。
ステータスオール500越え......だと......!?それ女子に格好を付けたくてサバ読んでないか?
俺と同じことを考えた奴がいるらしく、女子を掻き分けて天ヶ崎に近づいて行った。
「おい、隼人〜!流石にそれは盛ってるだろ?」
半笑いで近づく男性の名は日下部誠と言って天ヶ崎の幼馴染で親友だ。クラスカースト最上位の一人であり、俺が虐められるのを見て、傍観を決め込んでいた天ヶ崎とは違い、野次を飛ばしていた男だ。それも「もっとやれー!」的な野次、つまり煽ったりしてたのだ。
という訳でこいつの事は大っ嫌いで今すぐにでも殺してやりたいレベルだが、珍しく意見が合ったらしい。反吐が出るな。ぺっぺっ!!
「嘘じゃないって」
「本当か〜?」
「本当だって!見せれるなら見せてあげたいよ」
天ヶ崎はそう言うと、神官はハッと気付いたように、
「ステータスは他の人見せることが可能です。その人に見せたいと念じてみてください。ただし、神の祝福を受けていないものは別ですが」
「だってよ、ほら早く見せろよ!」
つまりここにいる全員には見せれるということだ。ふっ、墓穴を掘ったな。さぁ!本当のステータスを晒すがいい!
「分かったよ......」
天ヶ崎はヤレヤレと言った感じで、念じたらしい。らしいというのは、俺自身がステータスの公開設定に入っていなかったからだ。
いや、こうなるって知ってたけどね。別に直接俺が見なくても周りの反応で一目瞭然だ。
さてさてどうだ?
「......マジかよ」
日下部は驚きを隠せないでいた。
あの反応からして本当だったらしいな。チッ!全て恵まれたリア充め!死ねばいいのに。
「僕のも見せたんだから、誠も見せてくれるよな?」
「わかったよ......ただし隼人のと違って面白くねーぞ?」
どうやら日下部も晒したようだな。勿論俺には見えないが、天ヶ崎の時と同じように周りの反応に注目しよう。
「面白くないって言いつつ、オールスター350以上じゃないか。攻撃力なんてかなり高いのに何が面白くないだよ!」
「隼人それは嫌味か?」
天ヶ崎に続き日下部にもステータスで負けていたらしい。最悪な気分だ。
この勝ち組共が!全員死ね!!
黒羽が不貞腐れていると、由美が近づいてきた。
「黒羽君のステータスは......ってあまり良くなかったんだよね」
「見ての通りです」
黒羽は由美に自分の残念なステータスを公開する。
「え、えっと......まだLv1だし、きっと大器晩成型なんだよ!」
由美先生の励ましが心に響く。人を励ますのってこうするんだな。
どうせステータスは変えられないのだ。大器晩成型と信じて頑張るしかない。
「それで先生のステータスは?」
「えっと私のは......」
由美先生は見せ辛そうに目を逸らした。
「自分より高いってのは分かってますから」
「じゃあ......」
目の前に由美先生のステータス画面が広がる。
竹内由美【Lv1】
体力150
魔力530
攻撃力420
防御力200
俊敏性180
「.........」
覚悟はしていたはずなのに絶句してしまった。
魔力530?なんだこの数字は?俺の10倍以上じゃないか!俺雑魚すぎだろ!
そして攻撃力420。これもかなりの数字だというのが伺える。
体力、俊敏性、防御力を見ると低い気はするが、このステータスの形を俺はゲームで見覚えがあった。
魔法系固定キャラの典型例だ。
固定なので俊敏性は必要なく、また体力と防御力に関しては、近くにいる護衛が守ってくれることを想定して作られるキャラである。
諸刃の剣ではあるが、攻撃力は絶大なのだ。
由美先生に対して、自分の雑魚タンクみたいなステータスと言ったら......
燃え尽きたよ......というか燃えることすらできなかったよ......
「あの、八咫君!」
「.........」
「ねぇ、八咫君!しっかりして!ねぇ!」
由美先生にグラグラと揺さぶられて、黒羽は絶望から戻ってきたのだった。