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第1節 勇者召喚(3)


「それでは、勇者様達には神の祝福を受け取って貰います」

 

「すいません、神の祝福とはいったい......?」

 

「あぁ!説明しておりませんでしたね。申し訳ございません」

 

 そう言って神官は神の祝福について説明を始めた。

 

「そうですね、勇者様の世界にはステータスというものは存在しませんでしたか?」

 

「えっと、それは地位とか身分とかそう言う意味ではないですよね?」

 

「はい、個人の身体能力や技能。また現在の状態等を表す物の総称をステータスと言います」

 

 つまりはゲームで言うところのステータスと同じということだろうか?身体能力というと、素早さとか、攻撃力、体力等のことだろう。

 技能とは何だろうか?

 魔法やスキル的なものではないかと予想するが......

 

 黒羽の予想は的中していたらしく、

 

「技能とはその人の持つ身体能力とは、全く別の物の総称でございます。例えば魔法や、武器の練度をある一定以上上げるとスキルというものが使えるようになるのですが、それらの事です。そして、勇者様達に与えられる特殊な能力も、ここに含まれます」

 

「えっと......神の祝福とステータスの関係はどうあるのでしょうか?」

 

「神の祝福によってステータスを知覚できるようになるのです。逆に祝福を受けていないものは、身体能力とかには関係しませんが、技能の方......つまり、スキルや魔法といったものは全て使うことができません」

 

 は、はぁ......?

 要はなんだ。祝福ありとなしではこの世界での生存確率とか色々と関わるってくるということか。

 魔法やスキルがある世界でそれらを使用出来ないのは、小さくないハンデと言えるだろう。

 

「普通は生まれてすぐに祝福を受けるのですが、勇者様達は今ここに来たわけですから祝福を受けていなくても仕方ありません。という訳で今から祝福を受けてもらおうという訳でございます」

 

 神官はそう言ったあと目を細め、「それに特殊な能力の使えない勇者様は必要ありませんから」と呟くように、ただしその場にいる全員に聞こえるように続けたのだった。

 

 脅さなくても普通は受けると思うが、保険みたいなものなのかもしれない。俺も祝福を受けるつもりなので全く関係無い。

 

 

「では1列になってこちらに並んで頂いてもよろしいですか?」

 

 神官は女神像の前に黒羽たちを誘導した。

 やはり神の祝福というだけあって、この女神像が関係しているらしい。黒羽は冷静に分析しながら、女神像の方に向かった。

 

 

 ......で何で誰も並んでないんだ?

 

 クラスメイト全員、女神像の近くまでは行っているのだが、誰が一番最初に祝福とやらを受けるのかで揉めているようだった。端々から「お前がやれよ」「そういうお前こそ」なんて譲り合い、もとい人柱のたてあいをしていた。見苦しいことこの上ないな。

 とりあえず存在を消すとしよう。見つかったら人柱にされかねない。

 

 黒羽は影を消すかのように息を潜めた。

 

「八咫君、大丈夫?」

 

 黒羽の努力は実ることはなく、後ろから声をかけられたのだった。相手が相手なので警戒はしていないけど。

 

「先生、驚かさないでくださいよ......」

 

 そう相手は保健室の先生である由美だった。

 それにしても大丈夫とは、いったいどういう意味だろうか?俺の様子がおかしいようにでも見えたのだろうか?

 

「それよりも八咫君は、その......東條君が殺されたことについてどう思った?」

 

 あぁ、そういう大丈夫か。

 どう思った......ね?そんなの答えは決まっている。

 

「身から出た錆じゃないですか?」

 

 しれっと言ってやった。自業自得、因果応報だってな。東條が死んだ時の感情なんて爆笑と高揚しかなかった。神官に対しての好感度が少し上がったレベルだ。

 

 そう伝えると由美は複雑な表情で「そう......」と呟いた。

 

 優しい彼女のことだ。東條に対して同情してたりしているのだろう。そんな価値ないと思うのは俺が被害者でさらに奴のことを恨んでいるからだ。

 

 

 後ろの方で由美先生と話していると、どうやら一番最初に祝福を授かる人が決まったようだ。クラスのリーダーである天ヶ崎が自らの意思で進んで行った。天ヶ崎曰く「協力すると決めたのは僕だから、最初に僕がやるべきだ」だそうだ。

 

 そもそも召喚に巻き込んだのは俺だけど、そんな思考は片隅にも浮かばなかったよ。

 

「ではここで膝をついて、手を組んでください。そして目を閉じてください」

 

 天ヶ崎は女神像の前で神に祈るようなポーズを取った。

 

 するとどうだろうか?天ヶ崎を中心に光が降り注いだ。これが神の祝福というものか......

 そう納得せざるを得なかった。何故なら光が入ってくるような窓など、この空間には一切ないのだ。つまり、神の祝福という理由以外で光が入って来る理由が見当たらないのである。

 

「わぁ......」

 

 何人かが感動で声を上げている。

 確かに幻想的な光景だ。さらに天ヶ崎は悔しいがイケメンなので絵にもなる。女子が見惚れるのも仕方ない。

 ただ、さっき人一人死んでるのに切り替え早すぎじゃないか?お前ら薄情なやつだな。俺が言えた義理じゃないけどな!

 

 

 天ヶ崎が祝福を授かり終えたのか、女神像をあとにすると、今度は誰が先に授かるかで争い始めた。コイツら何なんだよ......。人に押し付けていたと思ったら、今度は我先にか?忙しい奴らだな。

 

 俺は後ろから軽蔑の眼差しを向けていると、由美先生の他にもう一人クラス連中に混ざっていない奴がいた。

 

 あいつは確か......誰だっけ?

 

 俺と同じでいつも一人でいる女子というのは覚えているんだが、それ以外の情報は知らない。俺があいつから直接的被害を受けた事は無いので、記憶にないのだ。

 それにしても虐められてないから覚えてないって、逆に言えば虐めてきた相手しか覚えていないってことだよな。嫌な覚え方だな。

 

 心底自分の体質に嫌気がしつつ、黒羽は視線を前に向けた。

 

「ほら、全員祝福は受けてるんだからさ、そんな喧嘩しないで並ぼう。......ねっ?」

 

 前では天ヶ崎がクラス連中をまとめていた。

 

「天ヶ崎君凄いね......それに比べて私は......」

 

「なんで先生が落ち込むんですか。あいつはカリスマ性があるだからやらせとけばいいんですよ。餅は餅屋ですって」

 

「それでも私は先生だし」

 

 自分は先生なのに、生徒達をまとめることができないのに、由美は責任を感じているようだった。

 

 俯く由美を励まそうと、何とか励ます言葉を捻り出した。

 

「ほ、ほら!柏木だって全然役に立ってませんから!むしろあいつは生徒を放置して自分だけ命乞いしたような奴ですから!そんなのよりは全然先生してますって!!」

 

「うん......」

 

 由美は黒羽の言葉を聞いて、苦笑いを浮かべた。

 

 しまったぁぁぁぁああああ!!比べる相手が悪すぎた!

 柏木なんかと比べられて励まされても嬉しくならないだろ!俺のバカバカバカ!

 くっ!こんなところで虐められっ子の弊害が出るとは!人を励ますなんて、ろくにした事がないから上手い励まし方が分からない!!

 自分のコミュ障が憎いっ......

 

 黒羽は後になって自分の失言に気づいたのだった。

すみませんが勇者召喚しばらく続きます。


早くストーリーを進めたいのは山々なのですが、何分重要なところですのでご容赦くだされ

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