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第1節 勇者召喚(2)

昨日まで小説のジャンルが異世界恋愛になっているのに気が付きました。

ミスです、申し訳ございません。

ハイファンタジーです。

「......なんだ...これ?」


東條は自分の穴の空いた胸に手をあててそう呟くと、その場でバタりと倒れた。

俺の後ろ、それも扉の近くで『びちゃり』と何か柔らかい物が潰れる音がしたのだった。

胸に穴の空いた東條、後ろでの潰れた音。ここから導き出される答えは一つである。


東條の体の一部が後ろまで吹き飛ばされたのだ。


「きゃあああああぁぁぁぁああああ!!!」

「おぇぇぇ」


時間差で事態に気付いたのか、クラスの奴らは、叫ぶ人、吐く人、神官を睨む人の三つに分かれた。

阿鼻叫喚とはこの事だろうか。


ちなみに俺はと言うと。


は……東條が死んだ?

あはははははははははははははははは!!!!

東條が死んだ!!

ざまぁ!!!

モブキャラみたいに、一番初めに死にやがった!!

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!

やばいニヤけが止まらない。

ふひっ!

おっと、周りにバレてはいけないのだ。

ふふふ。

少し自重しなくてはな。

ふぅ……


そう自分に言い聞かせるようにして、無理矢理顔がニヤけるのを抑え込んだ。

ただ若干口角は上がっている。




冷静になろう。

俺も今まで多くの異世界ものを読んできた。

登場の時に召喚側がする対応も、ある程度パターン化されている。

歓迎系、洗脳系、罠にはめる系、完全放置系

中でも俺たちの召喚はかなり面倒なやつだ。

恐怖で従わせる系である。


 俺が取れる手段があるとすれば、土下座でもして命乞いかな。

これが確実に生き残るための方法だ。

たまに、そう言う生き汚い奴は嫌いだ!なんてくだらない理由で殺されたりする場合もあるが、賭けとしてはまだ勝率は高いだろう。

 

 よし、やるか。

 

 黒羽が腰を上げようとしたその時、

 

「すいませんでした!!!」

 

 いち早く前に出て土下座をする男が現れた。

 

「どうか、命だけは勘弁してください!!!なんでも言うこと聞きますから!!!何でも言う通りにしますから!!どうか命だけは、命だけは!!」

 

 男は再度頭を地面に擦りつけた。

 その男は俺たちのクラスの担任である、愚図(柏木)だ。

 

 チッ!柏木の奴教師の風上にも置けねぇな!

自分だけは生存したいからって生徒ほっぽり出して、みっともなく命乞いか?

 いい大人がそんなことして恥ずかしくないの?何死ぬの?

 ほら、由美先生を見てみろよ。

絶句しているぞ。

 全く、分かっていたがろくな奴じゃねーな。

 

 黒羽は自分がそれをやろうとしていた事を棚に上げて、柏木を責めていた。

 

 というかあれだな。

 やってる本人は命乞いに必死で見た目なんて気にしてないだろうが、外から見ると酷い絵面だな。

 かっこ悪すぎる。

いやーやらなくてよかったわ〜。

マジやらなくてよかったわ〜。

 

 次があるとしたらやるけど。

見た目は酷いかもしれないが命には変えられない。

ただ、柏木と同じ考えだったってのが癪だけど。

 

 

 

 柏木の様子にクラス連中は白い目で見る中、神官は首を傾げ、

 

「何か勘違いされているようですね」

 

 柏木は顔をぱっと上げ、新刊の顔を見つめる。

 

「別に私達は勇者様達を殺したい訳ではありません。そもそも勇者様達を殺してしまっては、私達は魔王に滅ぼされてしまうではありませんか!そんな愚かで野蛮なことはしませんとも!!」

 

 神官は大袈裟に身振り手振りをして、自分達に害はないとアピールし、優しく微笑んだ。

 

 いや、お前さっき東條殺しただろ!

野蛮で愚かな行動してるじゃねーか!

ありがとうございます!!

 

 黒羽も若干困惑しているらしい。

 

 オホン!

一度落ち着こう。

恨んでた相手が目の前で死んだからと言って、テンションが上がりすぎだ。

 さて冷静になって考えてみれば神官の言う通りではないか。

俺たちをわざわざ呼び出しておいて、殺すなんて、幾ら何でも手間がかかりすぎるだろ?

 つまり、害を及ぼすつもりはないというのは本心だということだろうか?

 これはあまりにも希望的観測すぎるな。

返り血で真っ赤に染まったローブを見て言えるほど、頭の中がお花畑ではない。

 

 まぁ何にしろ、今は殺す気はないということだけは嘘ではないようだ。

多分な。

 

 

「だが、さっき___」

 

 先生は東條だったモノを指さしながら口を開く。

 

「あぁ、勿論ですが、あの様な野蛮な猿は話は別ですよ。勇者足るもの品がなくてはなりませんからな。ほっほっほ」

 

 神官は笑った。ちなみに目は笑ってはいない。

 

 これを訳すと、

 

 勇者として行動には気をつけろよ?

あと、野蛮な行為、つまり暴力に訴えようとしたら、こっちも実力行使に出るからな?

 

 多分こういうことだ。

 

 よっぽどのことがない限りは大丈夫だろう。

 それにしても柏木は恥かき損だ。

傑作だな。

 

「そうですか......」

 

 柏木は一礼して元の自分のいた場所に戻った。

 

 

 

「皆様、ご自身の状況は理解されましたかな?」

 

 全員返事をしないし、顔は暗い。

 さっきよりは落ち着いている。

吐いたり、叫んだりはなくなっただけマシと言えるが、やはり目には恐怖や怒りが見て取れる。

 

 クラスメイトが目の前で殺されて怒らないやつもいないし、怖がらないやつもいないだろう。

 ん、俺か?

最高の気分だったよ!

 召喚した側の人間に殺意は湧いたが、殺された相手の事を考えると正直スカッとしたとしか言えない。

 感謝はしていない。

とも言えないのが今の俺のジレンマだ。

 って俺の事はどうでもいいな。

 

 

 クラス連中は雰囲気から察するに、理解を拒否しているといった感じだった。

 それを見て一人の男がその場で立ち上がった。

その男、天ヶ崎は、

 

「......分かりました協力致します」

 

そう申し出たのだった。

それ以外選択肢はないのだが。

隼人がそう言ったなら、このクラスに反論できるやつはいないだろう。

 ......柏木とは凄い差だな。

カリスマ性というか、なんというか。

反吐が出る。


「そうですか!ありがとうございます!」


神官はまたもや大袈裟に喜んだ。

チッ......白々しい。

そうしなかったら、俺たちはどうなっていたんだよ。


黒羽はいつものように心の中で毒を吐いていた。


「それで、何個か質問があるんだけどいいですか?」


「えぇ、もちろんですとも」


「魔王を倒したら、僕達は元の世界に戻れますか?」


「魔王を倒した暁には、勇者様には何でも一つだけ願いが叶うと伝承には残っておりました」


何でも一つ、ね。

つまり帰るならタダ働きで、残るなら何でも一つ願いが叶うということか。


魔王を倒した人限定なのか、それともその時に生存している勇者全員なのかは是非とも知りたいところだ。


「わかりました。では次です」


って俺の疑問に思った部分は聞かないのかよ!って心の中でツッコミをいれた。

声に出して言ってるわけじゃないし、仕方ないといえば仕方ないか。

それに勇者召喚の儀式も召喚される範囲?と言えばいいのか、人数と言えばいいのか、その辺も詳しくわかってなかったみたいだしな。


黒羽は考えを中断し、話に耳を傾けた。


「僕達の身分は保証されますか?主に衣食住です」


「そちらの方は問題ありません。我らの巫女が勇者の人数を予言しておりましたので、迎え入れる準備は出来ております」


巫女が預言してた人数からは一人減ったけどな。

減る分には構わないか。

逆に多かったら減らされそうで怖い話だがな。



「ありがとうございます。僕からはもうありません」


隼人は納得したのか、神官に一礼して腰を下ろした。

残りの勇者の数41人


ここでクラスが40人クラスであることが明らかになりました

最初は生徒40人と先生2人で42人です

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