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幕開

趣味で何個か書いていたのですが、やっと公開というか、ネットに載せる決心がつきました。


よろしくお願いします。



「ねぇ、八咫(やた)ク〜ン。俺ちょっと今お金なくてさ、貸してくれないかなぁ?」


いきなりだが俺こと、八咫黒羽(やたくろは)は体育館裏でカツアゲの被害に遭っている。


「い、いや〜、東條(とうじょう)もか?偶然だなぁ〜。俺も今金なくてさ〜」


ポケットを裏返して見せる。お金どころか財布も入っていない。


「じゃあちょっと飛んでみようか」


「......はい?」


飛んでみる?

あ、あぁ〜あれね!一昔前のヤンキーが良くやってたやつね!

ポケットとかに金を入れてたから、飛び跳ねると、チャリンチャリン!って感じで音が鳴るってやつね!!


ハハハ!!さすが東條!頭悪いんじゃねーのか!!

さっきポケット全部見せたのにまだ疑っているのか?

あ、ヤンキーだから頭が悪いのは当たり前か!!ハハハ!!


もちろんこんな事を思っても口には出さない。


「わかったよ」


俺は言われた通り、その場でジャンプをする。

側から見ると異様な光景に見えるだろう。

いい歳した男子が頭を他の後ろに組んで、ぴょんぴょんと跳ねているのだから。


「ん?」


その場ジャンプしてる俺を見て、東條は不思議そうにこちらを見る。

こいつ何やってんの?って目で見られてイラッとしたが、そんな気持ちはすぐになくなった。


何故かって?


「飛ぶって言うのはなぁ!意識の事だよォ!!」


東條は無防備に飛び跳ねる俺に向かって、拳を振りかぶる。


さて、さっきの続きだ。

何故俺のイライラが収まった-無くなった-のかという話だったが、見ての通りこのあとすぐに意識を失うことになるからだ。


「チッ!ストレス解消にもなりやしねぇ!!」


意識が途切れる最後、東條はそう言って唾を吐いた。


ストレスが溜まったから俺を殴るってか?

ふざけんな......

俺はお前のサンドバッグじゃないんだぞ……

やはり怒りが消える事はないようだ。


暗転。





目が覚めるとそこは見慣れた天井だった。

見慣れたと言っても、さっきみたいにボコられて意識を失っているうちに、毎回ここに運ばれるからである。

つまり保健室だ。


「痛っ!......あいつら覚えとけよ」


殴られて腫れた場所を押さえながら毒を吐く。

外から見えるような場所は殴られないので、主に鳩尾(みぞおち)あたりだ。

外から見える場所を殴ると問題になりやすいかららしい。

ヤンキーの癖に狡いことしやがる。


「目が覚めたのね」


そう言いながら保健室の先生、竹内由美(たけうちゆみ)はベッドのカーテンを開けた。


「ははは、毎日毎日すいません」


由美はこの学校では数少ない黒羽の味方だ。


「また東條君達にやられたの?」


「今日は東條一人でしたね」


まぁ一人でもやれましたが、と黒羽は続ける。

そう、いつも東條は二人の下っ端を連れているのだ。そいつらは他学年だから名前は知らない。


「私も上の先生達に相談してるんだけど、どうもあまり取り合ってもらえてないみたいで......」


そう言って由美は俯く。

上の先生というのは、歳上で学年主任とかそういう権力者?の事だ。


「な、なんででしょうね〜」


黒羽は目を逸らしながら言った。

勿論虐めにあっているのがカースト最下位で、先生達にすらあまり好かれていない俺であるという以外に、もう一つ理由がある。


由美先生は少しばかり童顔なのだ。実年齢が24歳なのだが、見た目は高2の自分と大して変わらない。

白衣を着ている姿なんて、高校生のコスプレにしか見えない。

はっきり言って危ない店みたいになってる。


……それはいいとして、この程度なら若いと言ってもいいかもしれないが、ここは高校で由美先生が相談しているのは何年も高校生を相手にしてきた人達だ。

同僚ではあっても見た目のせいで由美先生のことを教え子として見てしまっているのかもしれない。


あと由美先生はこの学校の殆どの女子より可愛いので、それも理由の一つかもだ。要はデレてしまい、頭の中に話が入ってこないってやつだな。

男なら仕方ないかもしれないが。


「ま、まぁ、俺には先生がいるんで大丈夫ですって!!」


「でも」


「あっ!そろそろホームルームの時間だ!ホームルームくらい出ないと更に柏木からの評価が下がってしまう!というわけでこれで!」


由美の言葉を遮ってそう言うと、保健室を後にした。






「座れお前ら!ホームルーム始めるぞ!!」


先生の掛け声でクラスの奴らはそれぞれの席に戻っていった。


ギリギリ間に合った。よかったよかった。

黒羽は窓際一番奥の席でぐた~としていた。


「______で_______だから」


前で柏木が何か言ってるが全く頭に入ってこない。

というか耳が柏木の声を拒否している。

今更だが、柏木とはこのクラスの担任のことだ。

正直なところあいつは先生でも何でもない。

柏木は体育教師なのだが、女子にセクハラ紛いのことをしたり、リア充グループを優遇したり、権力を持つ生徒を贔屓したり、はっきり言って愚図にしか見えない。

というか愚図だ。

由美先生にもしつこく付きまとっているらしい。

この学校で、数少ない俺の味方にちょっかい出そうとは......万死に値する!


脳内殺人リストに銘記しておこう。


そんな事を考えていると、「起立」と日直の号令が聞こえた。


「れ___」

「八咫君はいますか?」


日直の言葉を遮って、由美先生が教室に入ってきた。

みんな呆然としている。

それは基本的に由美先生がホームルーム教室に現れることは滅多にないからだ。


由美はきょろきょろとクラスを見渡すと、黒羽を見つけたのか、黒羽の方に来て


「制服、忘れてましたよ?」


「あ、あぁ......ありがとうございます」


ブレザーを受け取った。


さてここで問題です。クラスの奴らは何て考えるでしょうか?


俺は昼休みからホームルームまで、クラスにはいませんでした。

そして、保健室にブレザーを忘れていた。

俺が虐められていることはクラスの奴らは全員知っているが、5、6時間目を保健室で過ごすのはいくら何でも長すぎだ。

このクラスで俺が意識を失ったと知っているのは、東條ただ一人である。


つまり殆どのクラスの奴らはこの考えに至るはずだ。

制服を脱ぐようなことが保健室の中であった。

それには午後の授業全部使うくらいの時間が必要だった。

強引かもしれないが、思春期の若者だ。

常に頭の中ピンク色の奴らならこう考えても仕方ないだろう。



「ははは、終わった」


乾いた声で黒羽は呟いた。


「ん?」


由美先生は首を傾げている。この天然が!!

可愛いけどこの場ではナンセンスですよ、全く。


あああああ!!!!

今すぐこの場から逃げ出したい。

そして、全く何も知らない地でやり直したい!!


黒羽が頭の中で絶叫していると、頭の中に声が響いた。


『受諾』


次の瞬間、教室は激しい光に襲われた。

誤字脱字あればコメントくだされば幸いです

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