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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第九章 青年期前半 皇竜氷王の娘編 〜俺の精霊はただの精霊じゃなかった〜
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ユキの記憶

 謁見の間を後にした俺とユキちゃんはウィンテルの後ろをついていっている。



「リョウタ様」


「どうしたの?」


「私が父の仇を討ちたいと言ったらどうしますか?」


「すごく危なそうだから、してほしくない。

俺が死なない限り、ユキちゃんは死なないけど、

痛みは普通に感じるんだよね?」


「はい」


「俺、ユキちゃんに痛いだとか、恐い思いしてほしくない。

だけど、ユキちゃんがそうしたいんなら協力するよ」


「そう言っていただけて、嬉しいです」


「着きました」



 ウィンテルが立ち止まって言った。

 彼が立ち止まった場所はある部屋の前。

 彼は部屋の鍵を開け、扉を開けた。

 扉の先は廊下で、その先に和の空間が広がっている。



「靴を脱いで、お入りください」



 ウィンテルに言われた通り、俺とユキちゃんは靴を脱いで、部屋の中に入った。

 部屋は和室で低いテーブルが中央に置かれていて、部屋の横にふすまがある。



「今日はここにお泊まりいただきます」


「あの、夕方までに帰らないとって言った気がするんですが?」


「そこは大丈夫です。

下界と龍界では時間の流れが違うのです。

下界の一時間はこちらの七時間ですから」



 あぁ! だから七倍してたのか。



「食事はどうすればいいですか?」


「七時、十二時、五時に迎えに来ますから

ご安心ください。

次は五時ですので、それまでゆっくりしていてください」



 そう言って、ウィンテルは部屋の鍵を机に置いた。



「内側から鍵を閉められます。

ですので、僕が出ましたら、お閉めください」



 ウィンテルは部屋から出て行った。

 俺は出て行ったのを待ち、鍵を閉めた。



「畳を見るとあのときを思い出します」



 部屋の中に戻ってくると、ユキちゃんが畳を触っていた。



「あのときって?」


「リョウタ様と初めて言葉を交わしたときです」


「それって、大精霊になって出てきたときだよね?」


「はい、そのときです。

クロネの家だったので、畳を見ると思い出すんです」


「あのときから抱きつくよね?」


「リョウタ様のことが好きすぎて、

体が勝手に動いてしまうんです」


「そ、そうなんだね。

えっと、思い出したこと、教えてくれる?」


「はい」



 俺たちはテーブルを挟んで座った。



「では、お話しますね」



〜〜


 私が思い出した記憶は父が戦いに向かうときのことからリョウタ様に出会うまでのことです。


 父は母の胸に抱かれた私を撫でてこう言ったんです。



「スノーリアもすまない。

スノーリアの主に会ってみたい。

スノーリアが精霊王に成長した姿を見てみたい。

だけど、俺はクーリア、スノーリアを守るために

戦わなきゃいけない。

この戦いで、俺は……。

だから、すまない。

スノーリア、頑張って生きて、幸せになってくれ。

じゃあな」



 父はさみしそうな顔をしていました。

 そして、父は戦いに向かって行きました。


 それから数日後。

 父は戦いに敗れたという報せがきました。

 住んでいた場所は危険だと判断したウィンテルさんは私と母を先ほどの洞窟に移動させました。

 あの洞窟は皇龍族または契約した者、血を継いだ者以外は入れないという術がかけられているので、安全なんです。


 それから、私たちは洞窟で過ごし始めました。

 ウィンテルさんが持ってきた草を食べたり、あの湖で母と遊んだりしていました。


 三週間を過ぎた頃、母は私を連れて洞窟を出ました。

 母は空を飛び、リュートさんが育った湖に向かいました。

 

 その湖で母と過ごし始めました。

 数日後の夜のこと。

 眠っていた私はふと目を覚ましました。

 すると、目の前に涙を流している母がいました。



「スノーリアっ。ごめんねっ。

ずっと側にいてあげられないの。

契約精霊はね。

ご主人様が死んじゃったら、

一緒に消えてなくなっちゃうの。

でも、私にはスノーリアがいるから

一ヶ月猶予があるの。

それが終わるのがもうすぐだから。

ごめんね。スノーリア」



 母は私を抱きしめました。

 


「さようなら、スノーリア」



 そう言って、母は立ち去ろうとしました。

 私は咄嗟に声を出しました。



「みゅう!」


「スノーリア!」



 母は戻ってきて、私を抱きしめました。



「やっぱりやだよ〜。

スノーリアとずっと一緒にいたい。

成長が見たい」


「みゅ!?」



 私は驚きました。

 母から光の粒が出てきていたんです。



「あっ。もう時間みたい。

スノーリア、お話聞いて」


「みゅう?」


「スノーリアのお父さんはね。

勇者に殺されたんだ。

でも、まだ仇は取っちゃダメ!

スノーリアがご主人様に出会って、

私と同じ精霊王になって、

ご主人様とウィンテルさんと一緒にじゃないとダメだよ」


「ふみゅ」


「大丈夫だよ、スノーリア。

スノーリアに龍帝様がいいご主人様に出会える術をかけてくれたから。

だから、そのご主人様に出会うまでは、頑張って生きてね」



 そう言い終えると、母は私のおでこに口づけしました。



「じゃあね、スノーリア。

大好きだよ」



 母はそう言って、光の粒になって消えました。


 それから、私は湖にいる精霊たちにいじめられ始めました。

 純粋な精霊ではないからと。

 初めは耐えていました。

 母にご主人様と出会うまで生きてと言われていたからです。

 私は耐えきれなくなって、湖から離れました。

 待っていれば、リョウタ様に出会えたのに。


 湖を後にした私は森を歩いていました。

 歩いていると、草むらが揺れました。

 草むらに視線を向けると、狼が顔を出しました。

 狼は私を餌だと判断して襲ってきました。

 私は逃げました。

 ですが、狼の方が速いので、追い詰められました。

 仕方なく私は狼と戦いました。

 私は魔術で水鉄砲を放つ。

 それしか攻撃手段がなかったんです。

 狼は途中で食べられないと気づき、立ち去っていきました。

 狼が気づくのがもう少し遅かったら、私は死んでいました。


 私はもうすぐで死んでしまうんだと思いました。

 母に言われた言葉を思い出して、私は念を送り始めました。



〜〜


「……そして、リョウタ様に念が届いたんです」


「そうだったんだね。

ん? 待って。

記憶はどこで封印されたの?」


「リョウタ様と契約したときです。

あのときの口づけで術をかけて、

契約したときに発動するようにしたんだと思います」


「そっか。

ユキちゃん」


「はい」


「幸せにするから」


「ぷ、プロポーズですか?」



 ユキちゃんは頰を赤らめて聞いてきた。



「今のは違くて。

ただ言っただけだよ」


「そうですか」



 ユキちゃんは残念そうに言った。



「この件が済んだら、プロポーズするから」



 フラグ立てちゃったな。



「待ってますね」



 ユキちゃんは嬉しそうに言った。



ーー


 就寝時間になった。



「ユキちゃん」


「はい?」


「今日は戻らないで、一緒に寝てほしい。

いいかな?」


「いいですよ。

でも、抱くのはやめてくださいね。

妻になってからなら、いつでも抱いていただいてもいいですから」



 ユキちゃんは頰を赤らめながら微笑んで言った。



「ありがとう、ユキちゃん」



 それから、俺はユキちゃんと一つのベッドで眠った。

 明日からのことを考えると不安で、寝付くのに少し時間がかかった。





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