いなくなったフィアと元気づけ
二代目吸血姫(真祖)覚醒編、スタート
「本当に初代と同じ髪色ですな」
一人の執事服を着た白髪の男が
十六くらいの男女が眠る部屋にいた。
「それでは、やりますかな?」
男は横笛を懐から取り出し、
口にあて、吹いた。
吹いているというのに部屋は静寂を保っている。
それを気に留めず、男は横笛を吹き続ける。
男が口から横笛を放すと
白髪の少女がむくりと起き上がった。
身体を起こしたことで彼女にかかっていた布がずれて、大きな双丘が露わになった。
だが少女は気にも留めない。
「服を着て、私についてきてくださいますか?」
「はい」
少女は男に言われた通り、
服を着た。
「では行きましょうか?」
「はい」
男と少女は開け放たれた窓から
飛び立っていった。
ーー
「んぅ。あれ?」
目を覚ますと隣にいるはずのフィアがいなかった。
「フィアちゃん?フィアた〜ん?
もう起きてんのかな?」
俺はそこらにあった下着を穿いて、
オレンジ色の上着を羽織って、一階へ向かった。
全ての部屋を見ていく。
慌ててるからいつもはノックするのをせずにトイレを開けた。
すると優しい金髪の美女が座っていた。
「わっ」「ごめん」
すぐに扉を閉め、その場を後にした。
居間に入ると庭から声が聞こえて
庭を覗くとクロネが竹刀を振っていた。
「リョウタ、シャワーは?」
クロネは竹刀を振りながら言った。
「フィアちゃんを見つけてから浴びるよ」
「フィア、いなくなったの?」
「うん。起きたら、横にいるはずなのにいなくて、
家中探したんだけどどこにもいないんだ」
「誰かに連れ去られたのかなー?」
振り向くとリルがいた。
「誰が連れ去るの?
フィアはリョウタとずっと一緒だったから
そんな人いないはず」
「いるよ。私の子孫たちが連れてったんだよ」
女性の声が聞こえ、そっちに視線を向けると、そこには、白髪赤眼の美女が立っていた。
フィアーナによく似てるな、この人。
「あの、貴女は?」
「ルナ・スカーレット。初代真祖だよ」
ーー
「歩きで一週間って……はぁ。
早くフィアちゃんを助けに行きたいのに」
森を歩きながら、呟いた。
「ごめん、リョウタ。
私がフィアみたいに飛べたらよかったんだけど」
クロネが俯いて言った。
「謝んなくていいよ」
俺は彼女の頭を撫でた。
「急がば回れ……って、言葉もあるから
気にしないでいいよ」
「分かった」
俺たちが森を歩いている理由は、この森の中にフィアを連れ去った犯人がいるから。
犯人はブラッディーナ家の人たち。
スカーレット・ブラッディーナというのが正式だそうだ。
彼らは勇者であるハルトさんと真祖であるルナさんの子孫だ。
気をつけてと何度もルナさんに念押しされた。
俺はフィアを助け出せるんだろうか?
「リョウタ、そんな顔してどうしたの? 」
クロネが心配そうに俺の顔を見つめて聞いてくる。
「いや、なんーー」
「ちゃんとフィアを助け出せるのかって
不安なんです。
ですよね?リョウタ様」
ユキちゃんが現れて言った。
「大丈夫」
クロネはそう言って俺に抱きついた。
「リョウタ一人で戦う訳じゃない。
私とユキも一緒だから大丈夫。
絶対フィアを助けられるから
そんな顔しないで」
「そうですよ。
クロネは剣士、リョウタ様は魔術師、
私は治癒が得意ですから
最高のパーティです」
「俺は氷と結界しかできないから」
「そういう意味ではなくて、
クロネと私がいるから大丈夫ですってことなんです」
「分かってる。
ありがとう、クロネちゃん、ユキちゃん」
「うん」
「はい」
二人は笑顔で返事した。




