白と黒
「リョウちゃん、お待たせ〜」
「ごめん、リョウタ。
遅くなって」
フィアとクロネが家の奥から現れた。
「いや、女の子だからしょうがないよ」
そう言いながら二人の服装を観察する。
フィアはピンクがかったブラウスに
桜色のミニスカート。
クロネは水色がかったブラウスに
濃い青の膝丈スカート。
色違いかよっ。
髪は二人ともポニテで
俺があげたリボンで結わっていた。
なぜこんなに二人がおしゃれしているのかと言うと
二人と出かけるからだ。
今日は五月二十四日、
フィアとクロネの誕生日の間の日。
フィアは二十三、クロネは二十五で
二人とも同い年だ。
そんなことはおいといて。
二人の誕生日の間の日ってことは
今日は一日中、ドストライクの二人と
いられるのだ。
いつも一緒じゃねぇかと思われるかもしれない。
だけど、今日はお風呂から後もずっと一緒である。
にやにやが止まんないっ。
「リョウタ、すごくにやにやしてー、
もう夜のこと考えてるんだ?
やっぱりリョウタはえっちだねー」
リルがいつもの感じで言った。
最近はリルに主導権を握らせて楽しむ。
だからこういうことを言ってくる。
「しょうがないじゃん。
フィアたんとクロネたんと一日中一緒なんだから」
「ほんとリョウタはフィアとクロネが好きだねー」
「超好き。
二人への想いをエネルギーに変換して
放てばピンク色の魔人だって倒せるっ」
「凄さが分かんないよー」
「まあ、死ぬほど好きってことだよ」
「私のことは?」
「リルのこともおんなじくらい好きだよ」
「私も死ぬほど好きだよー」
リルは俺に抱きついた。
「明々後日が待ち遠しいよー。
一日中しようね、リョウタ」
「一日中したら次の日一日中動けないじゃん」
「大丈夫。
リョウタにお世話してもらうかんね」
「お世話ってなにすんの?」
「分かるくせに言わせるんだ?」
リルはそう言って、俺の耳に顔を近づけた。
「はむっ」
「ーーひゃっ」
リルは囁くのかと思ったら
俺の耳を甘噛みした。
「にひひ、可愛い声出しちゃってー」
「リル、自分だけずるいから
俺もリルの耳味わっていいよね?」
「だ、ダメだかんね」
リルは手で耳を隠して言った。
可愛い。
「分かってる。夜だけだよね?」
「そうだよー」
リルは俺と唇を合わせ、舌を絡めてきた。
「……はぁ、行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
ーー
俺はフィアとクロネと手を繋いで
スカーレットの中を歩き回った。
そして気づくとお昼。
俺は二人を連れ、ファミレスっぽい店に入った。
食事を済ませると
二人は一つのパフェを頼んだ。
二代目真祖も龍神の弟子もやっぱり女の子である。
「一つずつ頼んでもいいんだよ」
「一つ食べきれるか分かんないから
クロネちゃんと分けたら大丈夫だからだよ」
しばらくするとパフェが来た。
でもスプーンは一つだけ、
パフェは一つなんだから当たり前である。
どうするのだろうか。
「はい。クロネちゃん、あ〜ん」
「あ、あ〜ん」
フィアはクロネに食べさした。
「クロネちゃん、美味し?」
「うん。美味しい。
次はフィアの番だから
スプーン渡して」
「いや、交代でしてたら溶けちゃうよ」
「平等じゃないから、ほら」
フィアはスプーンが取られないようにして、
クロネが手を伸ばしている。
だから密着している。
「溶けないように冷やしとくから
気にしないでクロネたんと食べな」
そう言って、俺は魔術で冷気を
パフェに当てた。
「リョウちゃんがそう言うんなら、
してもらうね」
フィアはクロネにスプーンを渡した。
「フィア、あ〜ん」
「あ〜ん。うん、クロネちゃんの言った通り
美味しいね」
「リョウタ」
「ん?」
クロネは腰を浮かして、腕を伸ばして
スプーンを俺の目の前に出した。
「口開けて」
「いや、二人で食べればいいんだよ」
「今日はデートだから、リョウタにしたいの。
ダメ?」
「くっ、俺は腹八分だから一回だけね」
「うん、分かった。
じゃあ、リョウタ。あ〜ん」
「あ〜ん」
俺はクロネに食べさしてもらった。
「どう?美味しい?」
「うん」
甘味を味わうよりフィアたんを味わいたい。
「はい。リョウちゃん、あ〜ん」
フィアがクロネと同じように
俺の目の前にスプーンを出してきた。
「一回だけって言ったじゃん」
「だって私もリョウちゃんにあ〜んしたいし。
クロネちゃんじゃなきゃ嫌?」
フィアはしゅんとした。
「嫌な訳ないでしょ?
フィアたんもクロネたんも
ドストライクなんだから」
俺はフィアの頭を撫でながら言った。
「えへへ、リョウちゃんも私からすれば
ドストライクだよ」
フィアはそう言って笑いかけた。
超可愛い。
「甘味よりもフィアたんを食べたい」
「りょ、リョウちゃん、外だからダメだよぉ」
フィアは顔を赤らめた。
「しないよ」
「そ、そうだよね。びっくりした〜」
「ほら、食べさせるんでしょ?」
「うん。はい、あ〜ん」
「あ〜ん」
フィアに食べさしてもらった。
それからフィアとクロネが百合りながら
パフェを食べていき、綺麗に完食した。
ーー
「あっ。クーちゃんだ」
歩いているとフィアが
朝ラン(朝のランニングのこと)の時に
戯れる猫を見つけた。
「こんな場所でどうしたの?
飼い主さんとはぐれちゃった?」
フィアは猫を抱き上げ、自分の目の高さにして
猫に聞いた。
「フィア?」
「なに?クロネちゃん」
「どうして、クーちゃんなの?」
「この子、瞳の色がサファイアで
雰囲気がクロネちゃんに似てるから
クーちゃんって呼んでるんだよ。
ね〜、クーちゃん」
「にゃー」
「あっ。クロネちゃん、この子の言葉分かる?」
「いくら獣族でも分からないよ」
「そっか〜。
話せたら、クーちゃんをお家に送ってってあげれたのにな〜」
そう話していると声が聞こえてきた。
「サファイア〜! どこに行ったんですか〜!」
声が近づいてきた。
その声の主は金髪碧眼の同い年くらいの美少女で、いいとこのお嬢さんって感じだ。
「申し訳ありませんが、
この辺りで蒼い瞳の猫を見かけ……サファイア?」
「にゃー」
猫はフィアーナの手から女の子に向かって、飛んだ。
女の子は飛んできた猫をキャッチして、抱きしめた。
「サファイアっ。よかったっ」
女の子は瞳を潤ませて、言った。
「ありがとうございます。
ぜひ、お礼させてください」
彼女はフィアーナに頭を下げた。
「いえ、たまたま見つけただけですから、
お礼はいりません」
フィアーナが言った。
「そういう訳にはいきません。
恩人には礼を……というのが
家の決まりですから。
なんなりと私にお申しつけください」
「じゃあ、友達になってもらおうかな」
「分かりました。
私はクリスティーナと申します」
「私はフィアーナ」
「はい。
フィアとお呼びしても?」
「うん、いいよ」
「ではフィア、今から私の家へ行きませんか?」
「えっと、今はデート中だから、
また今度にしてほしいかな」
「あっ。申し訳ありません。
デートの邪魔をしてしまって」
クリスちゃんはクロネに頭を下げた。
なんでクロネちゃん?
「どうして、私に謝るの?」
「えっ? フィアのお相手なのでは?」
「なに言ってるの?
私とフィアは同性」
「はい。見れば分かります。
家の中では、抱き合ってキスしたり、
はたまた互いの指で……」
この子、百合が好きなんだね。
フィアちゃんとクロネちゃんのカップリングは至高だよね。
クロネちゃん、戦ってるとき、凛としてて、かっこいいし、フィアちゃんは天使だし。
「しないよ!」「しない!」
「私はリョウちゃんにぞっこんだから!」
「私はリョウタにぞっこんだから!」
フィアーナとクロネは俺の左右にきて、俺の腕に自分のを組ませ、言った。
ぞっこん……なんだ。
超嬉しいんだけど。
「その方がお相手だったんですね。
つい、フィアと貴女がいけないことをしているのかと」
「しないからね。
なにがあっても」
フィアーナが言った。
えー。二人がキスしてるとこ、見たいのにな。
「残念です」
I think so.(俺もそう思う。)
「お嬢様ー!」
女性の声が聞こえた。
「私のお付きが迎えにきたので、
失礼します。
家に来ていただけるのをお待ちしております。
三人で来てくださいね。
では」
そう言って、クリスちゃんは走って行った。
ーー
「今日は楽しかったね」
「そっか。良かった〜」
「ふふっ、大好きなリョウちゃんとクロネちゃんと一緒にいるだけで楽しいけどね」
「そっか。あの、フィアたん、クロネたん?」
「なに?」「どうかしたの?」
「なんでこんなに密着してんのっ?」
俺はフィアとクロネに密着されて、
湯船に浸かっている。
「だ、だってお風呂上がったら
三人でするんでしょ?」
「だからくっついて気持ちを高めようと思って
くっついてるの」
「そうですか」
それからしばらくして二人は上がっていった。
そして少ししてから上がって
戸締りを確認して、
リルがいる妻の部屋に向かった。
ーー
部屋に入ると
リルがベッドに腰かけていた。
「あれ?リョウタ、どうしたのかな?」
「リルと抱きあってキスしたいなって」
「そうなんだ?」
「うん」
「隣、おいで」
俺はリルの隣に座った。
「ほんとは私の様子見に来たんだよね?」
「リルにはすぐバレるね」
「にひひ、だって私はリョウタの妻だかんねー。
君のことはお見通しだよ、っていうのは冗談だけど
心配してるか位は分かるよ」
「そっか」
「リョウタ」
「ん?」
「私がこの間のクロネみたいに
ルシルにさらわれたらどうする?」
「三人で助けに行く。
そして、リルを抱きしめる」
「にひひ、リョウタらしくていいね」
「ごめんね、氷魔術と結界だけが取り柄で」
「でも普通の人間らしくて私は好きだなー」
リルはそう言って、俺の手に自分のを重ねた。
俺はリルを抱き寄せた。
「リル、大好きだよ」
「私も大好きだかんね」
俺はリルと唇を合わせ、舌を絡めた。
「じゃあ、おやすみ、リル」
「うん。おやすみ」
俺は部屋を後にして、二人が待つ自室に向かった。
ーー
自室に入り、ベッドを見ると
フィアとクロネは
シースルーのネグリジェを着ていた。
「き、今日はそれなんだね?」
「う、うん。お姉ちゃんがこれにした方がって」
「そ、そっか」
そう言って、俺はベッドの近くに来た。
「リョウちゃん」
「な、なに?」
「私とクロネちゃんを
リョウちゃんの好きにしていいよ」
「うん。
私とフィア、二人でしてほしいこともしてあげる」
「う、うん」
返事するとフィアとクロネは立って、
俺の腕を片方ずつ引っ張り、
二人でこう言った。
「「二人で気持ちよくしてあげる(ね)」」
俺は二人に抱きついて、ベッドに倒れ込んだ。
「フィアーナ、クロネ、大好きだよ」
「私も大好きだよ」
「わ、私も、だ、大好きだから」
この後、めちゃくちゃ二人と愛し合った。