表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/140

フィアーナ対クノハ

三人称視点。

少し遡ります。

 クノハがクロネの頰に触れ、自分の方へ顔を向けさせる。

 クノハの唇がクロネの唇に近づいていく。

 後数センチのところで、クロネに手を向けるフィアーナ。

 彼女の体の周囲に稲妻状の火花が散っている。

 フィアーナが手を向けた瞬間、クロネの体が赤く輝き出す。


「熱いッ!」


 そう叫び、クロネの肩から手を放して、彼女から離れるクノハ。

 その瞬間、フィアーナが彼に手を向け、紅蓮の火球を放つ。

 彼女が放った火球はクノハに直撃し、彼の体を燃やす。

 あまりの熱さに地面に倒れ、もがき苦しむクノハ。


 フィアーナの背中に火球が六つ現れ、ガスバーナーに点火したときのような火に変化し、彼女を飛行させ、クロネの元へ向かわせる。


 フィアーナがクロネの元にたどり着いたと同時に、クロネに着けられている鎖と手錠が溶けた。

 吊るしているものが意味を成さなくなり、地面に向かうクロネの体。

 そんな彼女を優しく抱き止めるフィアーナ。


「フィア?」

「もう大丈夫だよ、クロネちゃん」


 そうクロネにだけ聞こえるように告げて、リョウタの元へ背中の火で飛んで向かうフィアーナ。



「リョウちゃん。

クロネちゃん、お願い」


 リョウタの前にたどり着いたフィアーナはそう言って、彼にクロネを差し出す。

 

「クロネちゃんと部屋の外行ってて」


 クロネを受け取ったリョウタにそう告げる彼女。


「フィアちゃんは?」

「私はあの人、殺さなきゃいけないから」

「そ、そっか。じゃあ、行くね」


 そうフィアーナに告げると、扉の方に向かうリョウタ。




「よくも僕に火傷を負わせて、クロネを奪ってくれたね。

許さないよ」


 ちょうどリョウタたちが扉の向こうにたどり着き、扉を閉めた瞬間、起き上がり、そうフィアーナに言うクノハ。


「許さないのはこっちだよ!」


 フィアーナがクノハの方に向き、叫んだ。


「その火傷よりもずっと深くクロネちゃんの心を傷つけて、

クロネちゃんを自分のものにしようとして、最低!

絶対許さない!」


 そう叫ぶと、フィアーナの手に紅蓮の炎剣が現れた。

 背中の火を噴射して、一気にクノハに近づき、炎の剣を振り下ろす彼女。

 クノハは避けられずに炎の剣をくらう。


「熱いっ!」


 あまりの熱さに叫ぶクノハを無視して、炎の剣を振るうフィアーナ。


「熱いっ、熱いっ」

「クロネちゃんはずっと苦しんでたの!

十五になったら、ひどいことされるって苦しんでた!

男の人の視線に怯えてた!

もうすぐリョウちゃんと会えるってときだって、

触れられて、震えたらどうしようって悩んでた!」


 炎の剣に怒りを込めて、振るう。


「貴方がクロネちゃんの前に現れなければ、苦しむことなかった!」


 そう言って、フィアーナは紅蓮の光線をクノハに放った。

 彼は光線をくらい、後方に吹き飛んだ。


「はぁ、はぁ、僕が現れたから、

あの転生者とクロネが結ばれたんじゃないのかい?

他の男にもなびかないんだから、

感謝されてもいいと思うんだけどね」

「現れなくても私たち家族になってたし、

クロネちゃんはリョウちゃん以外の男の人になびかないよ!」


 フィアーナはクノハに近づこうとするが、足が動かない。

 視線を足に向ける彼女。


「なにこれ?」


 彼女の足首には紫色の光を放つエネルギーの輪っかが着けられていた。


「いつの間にこんなのが……?」

「話している間に僕がやったんだ。

変身するためにね」


 そう言って、体に力を入れるクノハ。

 すると、彼の周りに紫色の光が現れ、彼の体を包んだ。


 光が収まると、姿が変わったクノハが現れた。

 二メートルと少しの背丈、狐の顔、真っ白な体毛、長い腕、その先にある大きく鋭利な爪、九本ある狐の尻尾。

 化け物と呼べるような姿だ。


「これが()のもう一つの姿。

妖術は俺の願いにくれたものだが、これは違う。

お前を殺すために世界神がくれた。

早速、死んでもらうぞ、二代目真祖!」


 そうクノハは叫び、地面を蹴って、フィアーナに近づく。


「死ね!」


 右腕を横薙ぎに振るおうとするクノハ。

 その瞬間、彼の体を赤い光を放つエネルギーの輪っかが拘束した。


「これは……まさか!?」

「世界神が恐れる二代目真祖が簡単にやられると思う?」


 フィアーナがクノハに尋ねる。


「完全に覚醒したのか!?」


 答えずにクノハに手を向けるフィアーナ。

 すると、彼の体が立った状態になった。


「クロネちゃんがどれだけ苦しんでいたか、教えてあげる」


 そう言って、フィアーナは新たに出現させた炎の剣を横薙ぎに振るった。




ーー




 フィアーナの怒涛の攻撃が始まって、時間が経った戦いの空間には、肩で息をするフィアーナとボロボロの状態のクノハが存在していた。


「〈モアヒール〉」


 フィアーナが呟くと、光が消えた瞳と火傷、すすでボロボロのクノハの体を緑色の光が包んだ。

 光がやむと、彼の体についた火傷が治り、瞳にも光が戻った。


「もう分かったっ。

分かったからっ、殺してくれっ」


 涙を流しながら、フィアーナに懇願するクノハ。

 フィアーナはそんな彼に両手を向ける。

 すると、その両手の前に一つの火球が現れた。

 火球はどんどん大きくなっていき、人の頭大になった。


「さようなら」


 クノハに別れを告げるフィアーナ。

 それと同時に、火球が太い紅蓮の光線として放たれる。

 クノハに向かっていき、彼の体を飲み込む光線。


「ーーッ!」


 言葉にならない叫びを上げるクノハを無視して、光線は彼の体を溶かしていく。

 

 光線が止んだ瞬間、気を失って、地面に倒れ込むフィアーナ。

 光線で開いた穴から差す夕日が「よくやった」と褒めているかのように、彼女の顔を照らした。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ