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クロネを助けに

 廊下を歩いていると、嫌な匂いが鼻を刺激した。

 故郷の村の人みんなから幸せを奪い去った最低の人物の匂い。


 匂いの方に視線を向けると、案の定、その人物がこっちに向かって歩いてくるのが視界に映る。


「やあ、チヨ」


 クノハが声をかけてくる。

 また抱かれるのね。


「はい。なんでしょうか?」

「この娘に例の服を着せて、

僕の部屋の隣にある部屋の鎖に繋いでおいてくれないかい?」

「この娘とは、肩に担いでる娘ですか?」

「そうだよ」

「分かりました」


 肩から女の子を下ろして、私に渡してくるクノハ。

 

「任せたよ」


 そう残して、立ち去っていった。


「この娘もクノハにーーえっ?」


 私は女の子の顔を見て驚いた。

 クノハが村を襲うまで、仲良くしていて、妹のように可愛がっていたクーちゃんだったから。




ーー




 私はクーちゃんを抱えて、クノハの部屋の隣にある部屋にやってきた。

 

 クーちゃんを部屋の角に座らせる。

 そして、クノハに言われた通り、脱がそうと思い、彼女の着物に手をかけた。


 彼女の左腕を着物から抜くと、手にキラッと光るものが視界に入る。

 よく見ると、薬指に指輪がはめられていた。


「これって、契約指輪……?

クーちゃんの心だけじゃなく、

幸せまで壊そうとしてるのね、あの男は」


 ふつふつと怒りがこみ上げてくる。




 六年前のこと。

 私の村に狐のお面を付けた男たちを引き連れてクノハが現れた。

 彼はお面の男たちに村の男性や男の子を一人残らず殺させ、子を産める女の子から若い女性たちをレ○プさせた。

 クーちゃんは私が犯されていたところを見てしまったし、お父さんを目の前で殺されたことで、心に深い傷を負った。

 

 それだけでも腹の虫が収まらないのに、クノハは気に入った娘をこの城に連れてきて、何度も犯した。

 私は特に気に入られ、何度も何度も抱かれた。

 私は他の娘の負担が減るように、心を殺して頑張っているというのに、あの男は一年くらい前に連れてきたカリンちゃんを毎日抱く。

 彼女は毎晩泣いている。


 クーちゃんとカリンちゃん、その他の娘たちを傷つけたあの男は絶対許さない。


 


ーーSide クロネーー




「んぅ」


 目を覚ますと、見たことのない広い部屋に吊るされていた。

 私を吊るしている鎖はお腹に着けられている金属の輪から延びている。

 両手が使えれば、ツクヨミで斬れるのに。

 だけど、その肝心な両手は後ろ手に手錠で縛られている。




「やあ、クロネ。

やっぱり思った通り、そのドレス似合ってるね」


 クノハが近づいてくる。


「こ、来ないで」


 私の言葉を無視して、目の前にたどり着いてしまう。

 怖くて、怖くて、体が震える。

 クノハはそんな私の顎を掴み、無理やり顔を合わせてきた。


「その怯えた顔、すごくそそるよ。

今すぐにでもぐちゃぐちゃに犯したいくらいだよ」


 ゴウッ。

 クノハの後方に太く真っ赤な火柱が噴き出した。

 

 リョウタたちが助けに来てくれた。

 そう思った瞬間、涙が頰を伝った。




ーリョウタ視点ー




「何故に城?」


 俺はフィアーナと日本の城っぽい建造物の目の前にいる。

 この城にクロネがいるからだ。


 クロネがリーフェさんに渡されたものを肌身離さず持っていた。

 そのおかげで、この場所が分かった。

 そのため、リーフェさんの転移魔術ですぐにたどり着けた。


「クロネ、すぐ助けるから」

「リョウちゃん、早く」


 フィアーナに手を引っ張られ、俺は城の中に入った。




ーー



「誰もいない」

「そうだね。

お面着けてる人たちが待ち受けてると思ったんだけど、

隠れてるのかな?」

「いえ、それはありません。

この階層に魔力反応が一つもないので。

ですが、一応警戒してくださいね」


 ユキちゃんが現れて、答えと忠告をしてくれた。


「ありがと、ユキちゃん。

それでクロネちゃんの場所分かる?」

「はい。城の中央くらいの場所にいます」

「この位置からクロネのいる場所まで

ぶち抜いても大丈夫?」

「えっと、どういうことですか?」


 俺の質問に質問で返すユキちゃん。


「人はいないかってこと」

「いませんけど、ぶち抜くってなんですか?」

「フィアちゃんのレーザーでぶち抜くんだよ」

「リョウちゃん、クロネちゃんに当たっちゃうし、

火事になっちゃうよ」

「壁を溶かすイメージで放てば、火事にはならないよ。

それにクロネちゃんに絶対当たらない位置に放てばいける。

ユキちゃん」

「クロネに絶対当たらない位置をフィアに教えればいいんですよね?」


 ユキちゃんの問いに俺は頷いた。




「ここです」

「じゃあ、行くよ。

我の行く道を邪魔する壁を溶かし、道を開け。

〈ファイアレーザー〉」


 魔術の名を発した瞬間、フィアーナの両手から天井に向かって、放たれる一本の太く真っ赤な光線。

 

 光線が止むと、熱せられた金属の色をした(ふち)の穴が天井にできた。


「リョウちゃん、これでいいの?」

「うん」


 フィアーナに返事して、空中に結界を出現させる。

 いくつも結界を出現させ、階段のようにした。


「じゃあ、行こっか?」

「うん」


 フィアーナと二人でクロネのいる場所へ向かう。

 






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