事後 その一
目が覚めた。
俺の目の前には、なにも纏っていない雪のような白髪の美少女ーーフィアーナがいる。
彼女は、俺の腕に頭を乗せ、幸せそうに眠っている。
俺は彼女に手を伸ばし、彼女の髪をすくように撫でた。
「んっ……」
「かわいい」
そう言って、俺は彼女に掛かっている布に手をかけ、少しずらした。
すると、大きな双丘とその頂きにある桜が顔を出した。
俺は唾を飲み込んだ。
そして、俺はそれに手を伸ばし、触れた。
ずっと触ってたい。
そう思った瞬間、彼女が動いた。
俺はすぐに手を引っ込めた。
「んっ、リョウちゃん?
リョウちゃんだっ」
そう言って、フィアーナがくっついてきた。
「私、すごく幸せだよ。
リョウちゃんも幸せ?」
「もちろん、幸せに決まってんじゃん。
胸が大きくて、美少女なフィアちゃんとできたし、
これからもできるんだから」
俺は彼女の頭を撫でながら、笑顔で言った。
「リョウちゃんもかっこいいよ」
「ありがとう、フィアちゃん」
「フィアーナって呼ばないの?」
「普通の状態でそう呼ぶの恥ずかしいなって。
名前の方がいいよね?」
「ううん。
慣れてからでいいよ」
「ありがとう。
それで、どうだったかな?」
「優しくしてくれたから、痛くなかったよ。
入れたときはすごく痛かったけど。
そ、それに、気持ちよかった」
フィアーナは照れて言った。
「フィアーナ!」
「きゃっ」
俺は彼女が愛おしくなって、覆い被さり、口づけした。
「していい?」
「ダメだよ」
「し、したくない?」
「したいよ?
したいけど、今日、クロネちゃんのお母さんに
クロネちゃんをくださいって言いに行くんでしょ?」
「そうだよね。
スズネさんとリル姉の家族に、
くださいって、言わなきゃダメだもんね」
「だからね、私たちの家に帰ったら、いっぱいしよ?」
「フィアたん、マジ天使だ〜」
俺はフィアーナを抱きしめて、言った。
「リョウちゃん?」
「ん?」
「たんってなに?」
「たん?」
「うん。今、フィアたんって、呼んでたよ?」
「えっと、ずっと会えなかったから、
想いが募りすぎて、フィアたんって呼ぶようになっちゃったんだ。
フィアたんって呼び方、嫌だったよね?
ごめんね」
「ううん。嫌じゃないよ。
だから、その呼び方していいよ」
「じゃあ、いちゃつくときにそう呼ぶね」
「うん」
フィアーナは笑顔で返事した。
俺は反射的に彼女の頭を撫でた。
「リョウちゃん、身体どうしよう?」
そう言われて、自分の身体を見ると、汗やらなにやらで汚れていた。
「えっと、フィアちゃんはシャワー浴びておいで。
俺はなんとかするから」
「分かったけど、リョウちゃん、退いて?」
「あっ。ごめん」
俺はそう謝って、フィアーナから離れた。
覆い被さっていた俺がいなくなったので、彼女は起き上がり、ベッドから降りた。
そして、彼女はベッドの端に置いてあるワンピースを着て、振り返った。
「じゃあ、行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
俺がそう言うと、フィアーナは扉の方に近づいて行った。
俺はベッドに腰掛けた。
すると、もう部屋から出たはずのフィアーナが戻ってきて、俺に口づけした。
彼女は唇を離すと、俺を抱きしめた。
「ずっと一緒にいようね」
「うん。死ぬまでフィアーナの側にいるよ」
俺はフィアーナを抱きしめて、言った。
「ありがと、リョウちゃん」
彼女はそう言って、部屋から出ていった。
「さて、俺はどうしようかな?
拭くだけじゃ、スズネさんに匂いでバレて、
うちのクロネは貴方には渡しません……って言われちゃうよな」
「では、一旦拭いて、リョウタ様のご実家でシャワーを浴びればいいと思います」
隣に現れたユキちゃんが言った。
「そうするよ。
ありがとう、ユキちゃん」
「いえ、私はリョウタ様の精霊でーーきゃっ」
俺が立ち上がった瞬間、ユキちゃんは両手で目を覆った。
「りょ、リョウタ様っ。
あ、あっち向いてくださいっ」
「ご、ごめん」
すぐに俺はユキちゃんを背にした。
「あの、リョウタ様。
ありがとうございます」
なんのありがとうなんだ?
俺のを見れたから?
「な!? なに言ってるんですか!
そのことじゃないですよ!」
「冗談だよ。
で、なにについてのありがとうなの?」
「わ、私を妻に迎えると言ってくれたことへの感謝です」
「感謝しなくていいよ。
想ってくれてるんだから、奥さんにするべきだと思うし、ユキちゃん、可愛いしね」
「か、可愛いだなんて。
ありがとうございます。
えっと、リョウタ様、大好きです」
そう言って、ユキちゃんは戻っていった。
契約しているから、見なくても分かる。
ーー
身体を拭き終え、服を着て、一階に降りるとフィアーナがソファに座っていた。
「あれ? フィールズさんたちは?」
「お父さんたちの部屋。
お父さんたちもしてたみたいで、寝てる」
仲良いな。
俺もフィアちゃんたちといつまでも仲良しでいたいな。
「そっか」
「うん。もう行くの?」
「家帰って、シャワー浴びなきゃいけないからね」
「うちの使えばいいよ?」
「いや、それはちょっと……」
「そっか。じゃあ、玄関までついてくね」
「別にいいよ」
「えっと、行ってらっしゃいのキスしたいから」
フィアーナは頰を赤らめて、恥ずかしそうに言った。可愛い。
「わ、分かった。じゃあ、行こっか?」
「うん」
俺とフィアーナは玄関に向かった。
ーー
「一日会えないの嫌だな」
口づけして、唇を離すと、フィアーナが悲しそうに言った。
「ごめんね。
俺がフィアちゃんだけを奥さんにすればよかったね」
「ううん。いいんだよ。
クロネちゃんもお姉ちゃんも
私と同じくらいリョウちゃんのこと、想ってるのに、
私だけ愛してもらうっていうのはずるいから」
俺はフィアーナを抱きしめた。
「フィアちゃんは優しいな。
俺、フィアーナの優しいとこ、好きだよ」
「私もリョウちゃんの優しいところが好きだよ」
「フィアーナ、愛してる」
「私もリョウちゃんを愛してるよ」
俺はフィアーナに口づけした。
「じゃあ、行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
フィアーナは笑顔で言った。
俺は扉の方に向いて、ドアノブに手をかけて、振り返った。
「明日の夕方に迎えに来るからね」
「うん。分かってるよ」
「じゃあ、改めて、行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
俺はフィアーナに笑顔で送り出され、彼女の家を後にした。




