創造神との再会
気づくと俺は水色と白の空間にいた。
目の前には優しそうな老人がいる。
「久しぶりじゃの。儂のこと、覚えておるか?」
「俺を転生させてくれた神様ですよね?」
「そうじゃ。覚えてくれているとはの。
儂の世界は楽しいか?」
「はい。美女、美少女に好かれて幸せです。
この身体の本当の持ち主の幸せを奪ってしまった
罪悪感がすごいですけど……。」
「ああ、それなら大丈夫じゃ。
本当だったら存在していない者じゃからな。」
「えっと、どういうことでしょうか?」
「そのままの意味じゃよ。
まず、アクアが存在しない」
「は?母さんってまさか転生者?」
「違う。
ここから先は儂が言ってもよいが、
驚きが少ないからのぉ。
アクアの母に聞け」
「は、はい。分かりました」
「後、前世の顔がベースで
エルフの血でよりいい顔になっておる。」
「よりって俺は普通くらいだと思いますよ。」
「そうじゃった。お主はそう思っておったの。
普通じゃったら何も言われんし、
両想いになったりせん。」
「それもそうですけど。
あっ。後、名前が前世と一緒なんですが。」
「サービスじゃ。」
「ありがとうございます。」
俺は彼女にリョウちゃんかリョウくんって呼ばれるのに
憧れていたからお礼を言った。
「うむ。ユアウェルカムじゃ。」
なぜに英語?
「あの、世界神が神様が言った者でしょうか?」
「そうじゃ。そしてお主が倒すべき敵だ。」
「やっぱり。
でも最強クラスの真祖と湖の騎士を倒した奴に
俺が勝てるんでしょうか?」
「お主も戦うが主力ではないからの。
主力はフィアだ。」
「はぁ!?なんでフィアちゃんが?」
「フィアはまだ覚醒しておらんが
真祖の力を持っておる。
それにクロネも必要だ。」
「クロネちゃんもですか?」
「そうじゃ。
クロネは剣の才があり、それを完全に開花させれば
湖の騎士と同等以上の腕になる。
それにあの子は獣族の王家の末裔、
その王家の宝刀を扱えるからの。」
「でも、二人を危険に晒したくないです。」
人族領の端っこに四人を連れて逃げよう。
そして五人で静かに暮らせばいい。
「そんなことしても意味はないぞ。
十五年後に世界神は世界を終わらせると
儂は思っておる。」
「そんな……。
じゃあ、戦うしかないんですか?」
「すまんがそれしかない。」
「俺は二人を失いたくない。
小さい頃から俺と結婚するって頑張ってたし、
俺が二人と結婚しても許してくれてるフィアちゃん、
俺を守る為に強くなってくれたし、
自分もちゃんと愛してほしいのに
我慢してくれるクロネちゃん。
リル姉とセラちゃんも好きだけど
二人は俺のタイプだからより好きなんです。
絶対に失いたくない。
出来ることなら傷ついてほしくないし、
怖い思いもしてほしくない。
どちらかが死んじゃったら
俺は何もできない。」
そんなことを言っていたら涙が流れてきていた。
俺は本当に泣き虫だな。
「安心するといい。
儂は魔力が世界クラスにしただけではない。
結界魔法の才能、魔術師の才能を与えた。
その分、筋肉はつきにくく、
近距離戦闘に向かんくなってしまった。
精神も戦闘関係だけ強くしたしの」
「そう、なんですか?」
「そうじゃ。
じゃが毎日鍛錬を積んで、
戦闘ではお主の出来ることを全力でしなければ
意味がないからの。
もし、もっと強くなりたいと思ったら
キャスティアの街へ行け。」
「行けば二人を守れる力が手に入りますか?」
「お主次第じゃよ。」
俺は涙を拭った。
「分かりました。毎日鍛錬に励んで、
戦闘はできることを全力で、
強くなりたければキャスティアの街にですね。」
「そうじゃ。」
「ありがとうございます。
最後に俺がいない世界のみんなのことを
聞いてもいいですか?」
「あまりお勧めせんがいいのか?」
「構いません。お願いします。」
ーパラレルの話ー
「まずフィアとセラのことじゃ。」
俺は頷いた。
「あの子たちは絶対に出会う。
出会った二人は姉妹のような関係になる。
冒険者になり、二人で組んでダンジョンを踏破して行く。」
お勧めしないって言ってたのに順調なんだけど。
「じゃが、そんな日々は続かない。
フィアは真祖と同じ外見だというだけで
世界神を本当の神だと信じ、亜人を差別する
人神教に人族を滅ぼす悪魔と言われ、
セラも悪魔だと言われて追われる日々が始まった。
そして何年か経ち、二人は人神教に捕まり、殺される。」
「ま、まさか犯されるんですか?」
「それはない。
あいつらは、亜人は醜いと思っておるから
大丈夫なんじゃ。」
「あの、二人には恋人がいるのでしょうか?」
「おらん。
まず、男に興味がない。」
百合なの?
「そんな訳ないじゃろう。
フィアはあの外見じゃから見向きもされん。
セラはフィアのことを悪く言う男を見てから
男を嫌悪するようになる。
じゃから綺麗なままじゃな。」
そうなんだ。じゃあ、二人は俺だけのものなんだ。
「クロネもお主だけのものじゃが?」
「えっ?あの白い獣族に無理矢理なんじゃ?」
「あいつに仇を討つ為に剣を振っていた。
でも上達はしないし、日が経つにつれて
恐怖に呑まれていき
最後には毒を飲んで自殺する。
じゃからあいつのものにはならんよ。」
うぅ〜、クロネたんかわいそうに。
「最後、ティリルじゃな。重いぞ。」
「聞かせて下さい。」
「うむ。
リルには婚約者がおる。
彼女はそやつが苦手で嫌いじゃったから
里を出た。
何年かは何も起こらずに旅ができていたが
ある時、奴隷に落とされた。
そして、貴族に買われ乱暴にされたり、
犯されたりを死ぬまでずっと繰り返す。
里を出なくとも婚約者に同じことをされる。」
うぅ〜、リル姉〜。
俺、みんなのこと大事にするし、
夜も優しくするね。
「まだ聞きたいことはあるかの?」
「大丈夫です」
「そうか。
色々言ったが、今は楽しんでほしい。
戦いで二人は消耗するからケアしてあげてくれ。
亜人は儂が愛情を込めて生み出した
我が子そのものじゃからの。」
「分かりました。
俺の大好きな四人を幸せにします。」
「お主自身も、の。
お主が幸せじゃなかったら
あの子たちが哀しむからの。」
「いや、俺は四人が居てくれるだけで幸せですよ。」
「その言葉を聞いて安心した。
またの。」
「はい。
俺に四人と出会わせてくださって
本当にありがとうございました。」
神様がこちらこそありがとうと言った。
そこで意識が途絶えた。