クロネ、ティリルとの再会
「いつまでキスし合ってる気だ?」
俺とフィアちゃんは口づけし合うのをやめて、声の方に視線を向けた。
その向けた先には魔王がいて、腕を組んで立っていた。
「「ごめんなさい」」
俺とフィアちゃんは一緒に謝った。
「なぜ謝るんだ?」
「城の中でいちゃついたので」
「別に抱いてもよかったんだが?」
なに言ってんだ? この人は。
「それは無理です」
「えっ?」
フィアちゃんが驚いたので、すぐさま彼女の方に向いた。
「リョウちゃん、私としたくないの?」
彼女は悲しそうな表情と声で言った。
「こんなかわいい奥さんとしたくない訳ないよ」
俺はフィアちゃんの肩に手をおいて、言った。
「かわいい奥さんだなんて」
フィアちゃんは顔を少し赤らめ、嬉しそうに言った。可愛い。
「それで、もう連れて来ていいのか?」
俺はフィアちゃんに確認の意を込めて、見つめた。
見つめるとフィアちゃんは頷いた。
アイコンタクトで分かるのか。超嬉しいな。
「お願いします」
「分かった」
そう言って、魔王はドアをきちんと閉めてから行った。
「リョウちゃん」
フィアちゃんが話しかけてきた。
「ん?」
「えっとね。クロネちゃんは男の人が苦手なんだ。
リョウちゃんは大丈夫らしいけど、
最後にクロネちゃんがリョウちゃんと会ったのは、
五年くらい前だから」
「そっか。じゃあ気をつけるね。
それで原因は、分かってるの?」
「うん。
私たちに会う数ヶ月前に村が
狐の仮面を付けた人たちに襲われたの。
そのときに慕っていたお姉さんが
レ○プされてるのを見た。
それから男の人が苦手で怖くなっちゃったんだよ」
襲ったやつら、許せねえ。
クロネたんに辛い思いさせやがって。
「許せないよね。
レ○プするのでも最低なのに、
クロネちゃんの心を傷つけるなんて」
「だよね?」
「その、リョウちゃん。
もし私が男の人に襲われそうになったら、
助けてくれる?」
「助けるに決まってる。
助けて、抱きしめる」
「ありがと、リョウちゃん。大好きだよ」
フィアちゃんは笑顔で言った。
天使だ。
ていうことは、フィアエル?
なんだ、このかわいい名前は?
「フィアエルって何?」
「えっ?」
「今、リョウちゃんが言ったんだけど。
何なの? フィアエルって?」
「聞き違いだと思うよ」
「そうなのかな? でも……」
ちょうどいいタイミングで扉がノックされた。
扉を開いた瞬間、優しい金色の何かが抱きついて来た。
その何かは女神と間違う程の美しい女性だった。
「リョウター。こんなに大きくなったんだね」
美しい女性ーーリル姉は俺の胸に顔を擦り付けながら言った。
あっ。髪型が違う。
彼女は優しい金色の髪を一本の三つ編みにして、それを肩から前に垂らしていた。
その髪型、ドストライクだわ。
「久しぶり、リル姉」
「声変わりしたんだね。
それに私の好みの顔になっちゃってー。
こんな好みの子と番になれるなんて
私は幸せ者だねー」
リル姉は俺の顔を見つめ、嬉しそうに微笑んだ。
俺はその微笑みに見惚れてしまった。
「リョウタ?」
「ん? なんでもない。考えごとしてた」
「久しぶりに会ったのに?
私に抱きつかれてるのに、
フィアでいけないこと考えてたんだ?
もう膝枕してあげないよ?」
えっ。めっちゃ嫌なんだけど。
俺のこと、嫌いなの?
「ただリル姉に見惚れただけだよ」
「そ、そうだったんだ?」
「リル姉は俺のこと、嫌いなんだ。
やっぱり俺なんかがこんな美人さんに好かれる訳ないよね」
「私と抱き合ってるのに、
フィアのこと考えてると思って、
嫉妬しただけだから、嫌いじゃないよ」
「本当?」
「うん、ほんと」
「耳、触らしてくれる?」
「耳だけじゃなくて、いろんなとこ触っていいよ。
私はリョウタのものなんだから」
「大好きだよ、リルお姉ちゃん」
「私もリョウタのこと、大好きだよー」
俺とリル姉は抱き合った。
やっぱりリル姉の大きいね。
それにしてもリル姉、いい匂いだな。
フィアちゃんもいい匂いだったし、クロネちゃんとセラちゃんもいい匂いするのかな?
「リル姉、クロネちゃんは?」
「あれ? まだあそこにいるし。
連れて来るから待っててね」
リル姉は立ち上がって、扉の向こうに行った。
彼女の格好は白いポロシャツに緑のパーカーを羽織って、緑色の膝丈のスカートだった。
やっぱ、リル姉の足はすらっとして綺麗だな。
リル姉は水色の着物の袖を引っ張りながら、戻ってきた。
でも扉のところで止まった。
「私をもらってくれるはずない」
綺麗な声だ。
「大丈夫。リョウタはちゃんと結婚してくれるから。
だからこんなところで才能を発揮しない」
「私はフィアみたいに可愛くないから」
「可愛いからぁ」
リル姉は両手で引っ張るが動かない。
押してダメなら引いてみろという事で、俺から行ってみる。
扉の向こうを覗いた。
そこには高校生くらいの女の子がいた。
黒髪をポニテにして、サファイアみたいな青い瞳をした美少女で、この子もドストライクだ。
身長は俺より少し低い。
だいたい三センチくらい低い。
服は水色の着物に紺色の袴。
頭の上に黒い猫耳、腰から尻尾が生えている。
後、胸がたわわです。
「可愛くないことないよ」
俺は彼女に言った。
「じゃ、結婚してくれるの?」
「俺からお願いしたいくらいなんだけど。
その前に聞いて欲しいことがあるんだ。
聞いてくれるかな?」
「いいよ」
「ありがとう。
えっと、男が怖いんだよね?
手、握って大丈夫?」
「大丈夫、リョウタは怖くないから。
でも、どうしてリョウタが知っているの?
フィアに聞いたの?」
「う、うん。原因も聞いたんだ。ごめんね」
「ううん。いいの。
フィアが言わなくてもリョウタに会ったら、
言おうと思っていたから謝らなくていい」
俺はクロネちゃんの手を握って部屋の中に入った。
剣の腕が滅茶苦茶いいって聞いてたのに、スゲェ柔らかくて綺麗な手だ。
「ほら、リル姉も手出して」
「私も?」
俺は頷いて、リル姉の手を握った。
「クロネちゃん、ごめんね。
リョウちゃんに全部言っちゃった」
「別に謝らなくていいの。
むしろ思い出さなくてもよくなったから感謝してる。
ありがとう、フィア」
クロネちゃんは微笑んだ。
「可愛い」
「わ、私?」
クロネちゃんは恥ずかしそうに聞いてきた。
「あー、うん」
「あ、ありがとう」
彼女はは照れて言った。
俺はクロネちゃんを座らせて、その隣にリル姉を座らせた。
そして、フィアちゃんの隣に座った。