卒業試験
修業が始まり、三年が経とうとしていた。
俺は今日、十五になった。
この世界では十五で成人とされ、結婚も出来るようになる。
飲酒は十六からだけどね。
今日、これから卒業試験が行われる。
この試験で認められれば、フィアちゃん達に会える。
会ったら、俺が転生者だということを伝えて、求婚しようと思っている。
言ったら、気味悪がられて振られるかもしれない。
でも結婚してもらうんだから、俺の全てを知ってもらう必要があると思うから。
でもフィアちゃんとクロネちゃんにふられたら嫌だな。
フィアちゃんは昔から好きだし、クロネちゃんは俺の好みになってそうだし。
二人とも自分だけを奥さんにしてって言ったら、どうしよう。
選べない。
「それでは、これよりリョウタの卒業試験を行う。
試験内容は魔導人形を行動不能にすること。」
少し離れた場所にいる師匠が説明する。
前方二、三メートル先にいる師匠の横には成人男性くらいの大きさの金属でできた人形が立っている。
「リョウタ、準備はいいか?」
準備なんてものはない。
俺は杖を持っているだけなんだから。
俺が頷くと師匠が魔導人形の首にあるスイッチを入れ、その場から離れる。
魔導人形は人でいう眼の部分が赤く光り、起動した。
「始め。」
その合図と同時に俺は眼に魔力を集中して強化した。
この方法は身体強化の応用として教えてもらった。
ハンターの漫画で言う凝。
魔導人形は地を蹴って俺に向かってきた。
俺は『紫電』を放った。
人形は俺の放った紫色の電撃を上に跳んで躱した。
この魔術は発動したら避けられないが
発動するときの魔力を感知すれば避けられる。
人形は魔力で空中に足場を作り、
それを蹴って俺にまた向かってきた。
結界(球形)を自分に張り、
人形に『氷砲』を連射した。
勢いが凄い為、人形に命中しまくって
傷だらけになっていく。
人形は拳を俺にぶつけようとして結界に阻害された。
その瞬間、準備していた『ダイヤモンド・フリーズ』を放った。
結界魔法というのは使用者と登録した者の
魔術や斬撃を飛ばす等の中・遠距離攻撃が
ちょっと弱くなるけど
結界の中からできる。
だが、人形は防がれた拳を爆破して、
生じた衝撃で冷気を躱した。
俺は爆破の煙で視界が悪いので『サーチ』を発動した。
人形は俺に向かって来ていた。
そして煙の中から人形の足が俺の脇腹を狙った。
その蹴りは拳を防いだ先程の結界によって防がれた。
『雷槍』を放った。
雷撃は人形を貫いた。
そして人形は倒れた。
この魔術は人族魔術『電撃』の元となった
『紫電』の上位魔術である。
雷撃を放ち、相手を貫く魔術。
「そこまで。」
師匠たちが近づいてきた。
「合格じゃ。」
「やった。やっとフィアちゃん達に会えるんですね?」
師匠に祝われて喜んでいると魔王が話かけてくる。
「リョウタ、少しお前の結界の全力が見たい。」
そういいながら、魔王は手に
獄炎にしか見えない炎百パーセントのでかい片刃の剣を
出現させた。
俺は結界を三重に張った。
結界にあたる瞬間、剣から獄炎が放たれた。
炎が収まると結界は一枚で持ち堪えていた。
あっぶねえ〜。
「ほう、代々受け継いできたこの魔術を防ぐか。」
「殺す気ですか。」
「半分だけだ。」
怖っ。
「合格したから、今日の午後から会っていいぞ。
今日はクロネもいるから三人に求婚できるぞ。
再会したら求婚するのだろう。」
「なっ、何で知ってるんですか?」
「カンだ。
それで、何か準備することはないか?」
「少し耳かしてください。」
俺は魔王の耳に小声で言った。
「三人ともに転生者だと伝えるんですけど、
フィアちゃんには前世の俺のことを伝えたいんです。」
「求婚した後じゃいけないのか?」
「できれば、先に伝えたいです。」
「そうか。では、こうしよう。
まず第二応接室にフィアを待たせておく。
それで、私がリョウタをそこに連れて行く。
私は部屋の前にいるから、
話を終えたら扉を二回ノックしてくれ。
そしたら残りの二人を連れて来る。
これならどうだ?」
「はい。それでお願いします。」
「分かった。
では、一時間後に寮に迎えに来るから、
これに荷物を入れて待っていろ。」
そう言って魔王は
見覚えのあるマジックポーチを渡してきた。
「それは、お前のだろう。
中にお前のローブを入れておいた。
ローブを着た方がお前だと分かりやすくなるだろ?
それとフィアが新しいのを選んであげたいと言っていたぞ」
ーー
その後、俺は食堂で昼食を済ませ、部屋に戻って、
荷物をマジックポーチに詰めて、ローブを着て
寮の前に座って待った。




