1-3 三年間で得た情報
転生してから約三年が経った。
この三年、俺はアクアさんにお世話されながら、過ごしていた。
お世話だけじゃなく、たくさん相手してくれたおかげで、ひまな時間はほとんどなかった。
この三年間でいろんなことがわかった。
一つ目は家の位置。
俺が住んでいる家は、ド○クエとかのRPGに出てきそうな感じの町の外れ。
町の外れには、俺が住んでいる家、レオンさんとアクアさんの友達夫婦が住んでいる家の二軒が立っている。
レオンさんはレオくんと同一人物だ。
レオンだから、レオくん。
その友達夫婦には、俺(肉体)と同い年の娘がいるらしい。
俺の嫁にしたい。
そう思い、会いたいとお願いしたけど、まだダメらしい。
理由はわからない。
二つ目は生活。
不便な生活を送るのかと思っていたけど、現実は逆だった。
魔石を使った冷蔵庫、洗濯機、クーラーなどがあって、現代日本と変わらない快適な生活を送っている。
魔石とは、魔力の電池みたいなもので、普通に安値で売られていた。
三つ目は人々。
レオンさんとアクアさんは二次元レベルの美男美女だけど、町の人たちは三次元の外国人レベルだった。
美人さんもいるけど、半数以上は濃い外国人顔だった。
友達夫婦の娘が二次元レベルの美幼女でありますように。
三次元の美幼女でもいいです。
「リョウタ、あんまり見ないでくれない?」
情報を頭の中で整理していると、レオンさんが剣術の鍛練ーー素振りを一旦やめ、言ってきた。
彼は剣士。
RPGの剣士と変わらず、剣で魔物を一刀両断する職業だ。
アクアさんは魔術師。
炎や冷気を放ち、魔物を一掃する職業だ。
RPGでいうところの魔法使い。
「俺のことは気にせず、続けて」
「う、うん」
レオンさんは再び、木剣を振り出した。
はぁ、やっぱり絵になるわ。
この日々の努力と剣の才能で、アクアさんを射止めたんだよな。
◇
リョウタがこの世界に生まれる四年前のこと。
場所は東都。彼が住んでいる町に一番近い都市。
東都の街中を高校生くらいの銀髪碧眼の美少女ーー十六歳のアクアが修道院を探し歩いていた。
修道院に大事なものを届けるために。
アクアが歩いていると、高校生くらいの美青年ーー十六歳のレオンとすれ違った。
(すごくきれいな娘)
すれ違いざまに心の中で呟くレオン。
(なにか建物、探してるみたい。
一緒に探そうかな?
その建物、知ってるかもしれないし、
友達になれるかもしれないし。
うん、一緒に探そう)
「ま、待って!」
決心した彼は歩き続けているアクアの背中に向かって、叫んだ。
すると、彼女が足を止めて、振り向いた。
(やっぱり綺麗だし、好みだ)
そう思いながら、レオンは彼女のもとへ走った。
「私ですか?」
アクアが彼に確認する。
「はい。
あ、あの、なんの建物を探してるんですか?」
「修道院ですけど」
「僕、修道院の場所を知ってるので、
いやじゃなければ、僕に案内させてください」
「それじゃあ、お願いしようかな?」
「は、はいっ!」
こうして、二人は一緒に修道院へ向かうことになった。
大事なものをシスターに渡して、アクアが修道院から出てきた。
「大事なもの、ちゃんと渡せた?」
出てきた彼女にレオンが尋ねる。
「うん。それより待っててくれたの?」
道中、同い年だと知った二人は敬語なしで話すようになった。
「うん。女の子一人は危ないからね」
「ありがと〜」
アクアは笑顔でお礼を言った。
「う、うん」
レオンは照れながら、そう返した。
「ふふっ、それじゃあ、冒険者ギルドまで、
お願いするね」
「うん」
二人は冒険者ギルドへ向かった。
アクアとレオンがたわいもない会話をしながら、歩いていると、チャラそうな男三人とすれ違った。
いや、すれ違おうとした。
その瞬間、チャラ男たちが絡んできた。
「おっ、お姉ちゃん、超美人だね」
「本当だ。マジ美人、しかもナイスバディじゃん」
「ねぇ、俺たちと遊ぼうよ」
「遊ばないよ」
レオンは男たちとアクアの間に入り、彼女の代わりに断った。
「なんだ、お前? ケンカ売ってんのか?」
「はぁ、そうだよ。
君たちを無力化して、彼女に二度と近寄らないためにね」
「なめやがって!」
そう一人の男が言うと、その男を含めた三人が腰に携えた剣を抜き放ち、全員でレオンに襲いかかってきた。
レオンは男たちの攻撃を華麗にかわし、手刀で彼ら全員の意識を刈り取った。
その美しい体さばきと圧倒的な強さにアクアは惚れた。
すでに彼女はレオンの容姿と優しさに惹かれていたが。
二人は数ヶ月して恋人になり、二年して夫婦になった。
◇
「リョウくん、またレオくん見てるの〜?」
アクアさんに聞かされた二人の出会いを想像していると、その彼女が後ろから抱きついてきた。
必然的に彼女の豊満なおっぱいが背中に押し付けられる。
「ふふっ、リョウくん、また顔、赤くなってるよ?」
笑わないで。
こっちは童貞なんだから。
一応、好きな娘と両想いにまではなったけど。
「抱きつくのやめて?」
「お嫁さんにしたいくらい、ママが好きなのに、
大好きなおっぱいもあたるのに、
やめてほしいの〜?」
「うん」
俺がそう返すと、アクアさんは離れるどころか、逆に抱きしめる力を少し強めてきた。
「やめてあげない」
「なんで!?」
「全然、リョウくんが甘えてくれないから。
レオくんは毎晩、甘えてくるのに」
「アクア、言わないで」
「リョウくんはママのこと嫌いなの?」
アクアさんはレオンさんの話を無視して、俺に言ってきた。
いや、「お嫁さんにしたいくらいママが好き」って自分で言ってたんだから、嫌いじゃないのわかるでしょ?
「答えてくれないってことは、嫌いなんだ」
「嫌いじゃないから! めちゃくちゃ好きだから!」
必死で否定する。
すぐに否定しないと、瞳を潤ませるからな。
「ほんと?」
「うん。本当だよ。
お嫁さんにしたいくらい、す、好きだよ」
「ママもリョウくんが大好きだよ〜」
アクアさんは思いっきり俺を抱きしめ、すごく嬉しそうに言ってきた。
そんな嬉しそうに好きって言われたら、レオンさんから本気で奪いたくなるから、やめて。