修業は男子率の高い場所で 〜魔力講義編〜
授業が始まって二週間が経った。
二日目から女子成分ゼロで頑張っている。
ーー
修業二日目の朝。
「リョウタ」
寝ていると、名前を呼ばれ、体を揺すられる。
「んあ?」
「やっと起きた。
ほらよ」
グレンがなにかをひょいっと投げてきた。
そのなにかは俺の顔に落ちた。
そのなにかを手に取り、見てみると、一通の便箋だった。
「便箋?」
開けてみると、一通の手紙が入っている。
手紙を出して、開いた。
ーー
拝啓 四人目の転生者様
初めまして。
私はティアと申します。
全ての精霊を見守る全霊王をしています。
貴方の精霊を精霊王にするために預からせていただきました。
貴方が修業を終える頃にお返しします。
修業、頑張ってください。
ーー
精霊王ってことは人間と同じ大きさだよな。
てことは、ユキちゃん、美少女になって帰ってくるんだ。
リョウタ様、大好きです。
妻にして下さいって言われたら、どうしよう?
五人も愛せないよ〜。
ーー
「馬鹿者」
女子成分が無くなった日のことを思い出していると、頭に軽い手刀が落ちた。
「あたっ」
「あたっ……じゃないわ。
少し時間ができたら、呆けおって」
「すいません」
「はぁ。魔力について、話すから、
ちゃんと聞いておるんじゃぞ」
「はい。分かりました」
息を整えてから、口を開く師匠。
「魔力とは、世界中どこにでも存在する
万能なエネルギーじゃ。ここまでよいか?」
「はい」
「魔力には、二つの種類がある。
空気や水中などの自然に存在する魔力『マナ』。
生物の体内に存在する魔力『オド』。
ちなみに、精霊王は、この『マナ』を
自身の『オド』として、吸収できるといわれておる」
すげえな、精霊王。
「話を戻すぞ。
魔力感知。これは、エルフでなくとも、習得できる」
「そうなんですか?」
「うむ。
魔力というのは、体の表面にある『魔孔』と呼ばれる穴から微量に漏れておる」
魔力って、みんな漏れてるんだな。
「エルフやキャスティア、アサシニアたちは
この微量の魔力を先天的に感じることができる」
「それで、魔力感知ってどうやったらできるんですか?」
「魔力を出して、円状に広げるだけじゃ」
「どうやって、魔力を出すんですか?」
「魔力の漏れる量が人より多い今のお主ではできぬ。
治さなければの」
「治せます?」
「治せる。
じゃが、治す前に身体強化について教える」
そう言うと、両手で受け皿をつくる師匠。
すると、その受け皿に水が溜まっていく。
彼はその水を飲んだ。
ずっと話してたから、喉が渇いてたんだな。
おじいちゃんだもんね。
「身体強化。
これは、魔力を纏い、身体能力を上昇させる技術。
人によって上昇率が違う。
苦手な者は少しだけ、得意な者は爆発的に上昇する」
「魔術が得意な人は、身体強化が苦手なんですか?」
「普通はそうじゃの。
じゃが、偶に両方得意な者もある」
天才って、やつだな。
「身体強化についてはこんなもんかの。
それではお主の漏れておる魔力量を治す」
そう言って、俺の肩に手を置く師匠。
すると、手が置かれた肩から温かいものが体内に流れ込む感覚がし始めた。
その温かいものが染みていき、体が熱くなってくる。
少しすると、白い湯気のようなものが体から立ち込めていた。
「何をしておる。早く纏わんか。
魔孔全開の状態なんじゃ、気絶するぞ」
それ、やばくね!?
この湯気ーー魔力を体全体に纏わせるイメージをする。
すると、イメージ通り、魔力が俺の体全体を覆った。
「できたの。
少しこの状態を保てば、魔孔が落ち着いて、
漏れる魔力の量が普通になるからの」
「分かりました」
「明日からの話じゃが、
身体強化と魔力感知を習得するための鍛錬をしてもらう」
「はい」
「それでは、午前の修業を終わる」
「ありがとうございました」
「また落ち着いた頃合いに来るからの」
そう告げて、師匠は立ち去っていった。
ーーSide フィアーナーー
「これで、午前の戦術指南を終わる」
「ありがとうございました」
戦術指南をしてもらっているメア様に頭を下げた。
「フィア。お前の客を応接室に待たせてあるから、
汗を拭ったら、向かってくれ」
「はい。分かりました」
私にお客さんって、だれだろう?
ーー
水魔術で濡らしたタオルで、汗を拭き終わって、魔王城に初めてきたときに通された応接室にやってきた。
部屋の中から話し声が聞こえる。
声だけじゃだれか分からない。
入ってみれば、分かるよね。
「フィアーナです。入ってもいいですか?」
扉をノックし、そう告げる。
すると、女性の声で返事が返ってきた。
「失礼します」
扉を開けて、部屋の中に入った。
部屋の中には金髪の女性と見覚えのある黒髪の女の子がいた。
女性はソファに腰掛け、女の子はテーブルの横に立っている。
「久しぶり、フィア」
女の子が微笑んで、言ってくる。
「クロネちゃんっ」
嬉しくて、女の子ーークロネちゃんに抱きついた。
「クロネちゃん、元気だった?」
彼女から体を離して、尋ねる。
「うん。フィアは?」
「元気だったよ。
それで、なんでここにいるの?」
「リュートに連れてきてもらったの」
「リュート?」
「リュートはクロネの師です、剣術の」
金髪の女性が答えた。
「えっと、貴女は?」
「私はアリシア。リュートの妻です」
「フィアーナです」
「よろしくお願いしますね、フィア」
微笑んで、手を差し出してくる女性ーーアリシアさん。
その手を握る。
「よろしくお願いします」
「それで、なんでこの魔王城にいるんですか?」
「同じ年齢で、同性の親友がいると聞いたので、
リュートが同性といるのも大切だからと、
月に二度会わせてあげることにしたんです」
「いつ帰るんですか?」
「今日は泊まって、帰るのは明日の今頃です」
「クロネちゃんはどこの部屋に泊まるんですか?」
「フィアとリルの部屋に泊まるの」
クロネちゃんが答えた。
「ほんと?」
「うん」
「でも、ベッド二つしかないよ?」
「フィアが嫌じゃないんなら、一緒に寝させてほしい」
頰を赤らめて、言う彼女。
嬉しくて、彼女に抱きついた。
「フィア?」
「いいよ。一緒に寝よ」
「ふふっ。本当に仲がいいんですね」