魔獣戦後
俺はフィアちゃんとベッドに腰かけている。
隣にいる彼女は見た目高校生くらい。
「リョウちゃん」
「なに?」
「キス、しよ?」
フィアちゃんは頰を赤らめて、言った。
俺は頷き、彼女の肩を掴んで、引き寄せた。
そして、彼女に口づけし、口内に舌を入れた。
彼女は俺の背中に腕を回し、舌に自分のを絡めてきた。
「……はぁ、リョウちゃん、しよ?」
唇を離すと、瞳を潤わせたフィアちゃんが言った。
俺は彼女をベッドに押し倒した。
そして、彼女が着ているパジャマのボタンを外していく。
ボタンを外しきると谷が姿を見せた。
俺はパジャマに手をかけ、はだけさせようとした瞬間、視界にモヤがかかりだし、俺は目を瞑った。
〜〜
目を開けると、俺は柔らかいものに顔を埋めていた。
この柔らかいの、あったかくて、いい匂いだな。
もうこれ、女の人に抱きしめられてるな。
俺は誰に抱きしめられてるのかを確認するために上を向いた。
すると、女神様ーーリル姉と目が合った。
「おはよー、リョウタ」
彼女は笑顔で言った。
「お、おはよう。
えっと、俺ってリル姉に抱きついて寝ちゃった?」
起き上がって、聞いた。
「違うよ。
私が抱きしめてただけだよー」
そう答えて、リル姉も起き上がった。
「それで、体は大丈夫?」
「体?」
「うん。ま、魔獣に貫かれたところとか」
そう言われて、俺は魔獣にお腹を貫かれて、気を失ったことを思い出した。
「リル姉っ」
俺はリル姉に抱きついた。
顔を彼女の大きい胸に埋めてしまった。
決して意図的じゃない。
「わっ、どうしたの?」
「すげえ怖かったし、痛かった」
リル姉は俺をギュッと抱きしめた。
「もう大丈夫だかんね。
魔獣はフィアが倒してくれたし、
真祖がお腹の傷を治してくれたから」
「うん」
「落ち着くまで、こうしてようね」
「いいの?」
「うん、いいよ。
いつまででもこうしててあげる。
だって、リョウタは私の番だかんね」
俺はその言葉で涙が溢れた。
すると、リル姉が背中を撫でてくれた。
ーー
「ありがとう、リル姉」
落ち着いた俺はリル姉にお礼を言って、離れた。
「また抱きしめてほしかったら、言ってね?
抱きしめてあげるから」
「うん」
俺はふと、周りを見渡した。
宿屋の部屋っぽい。
あれ? フィアちゃんは?
「リル姉、フィアちゃんは?
それとここはどこ?」
「フィアは真祖が連れ帰ったんだ。
明日には帰すって。
ここは、近くの町の宿屋だよ」
「そっか」
「ごめんね」
リル姉は申し訳なさそうに言った。
「なにが?」
「二人を守るどころか、震えてただけだったから」
「いいよ。
すごく怖いって何度も言い聞かせられてたんでしょ?」
「うん」
「それに、俺も足震えてたしね。
だから、謝んなくていいよ」
「やっぱりリョウタは子どもとは思えないね。
同い年なのかなって思っちゃうな」
リル姉は微笑んで言った。
「そ、そっか。
リル姉」
「ん?」
「俺が気絶した後のこと教えてくれる?」
「いいよー」
それから、彼女は気絶した後のことを教えてもらった。
俺が気絶したことで、フィアちゃんがキレた。
キレると同時に彼女の背中からコウモリのような黒い翼が生えた。
彼女は黒い金属でできたでかい槌を出現させ、それに電撃を纏わせて、魔獣を吹き飛ばした。
それに追い打ちをかけるように、炎の槍を投げた。
槍は魔獣に突き刺さり、地面に刺さった。
そして、翼で空中に浮かんだ彼女は、最上級火魔術『エクスプロージョン』を放ち、倒した。
倒した後、フィアちゃんは俺の隣に座って泣き出した。
そして、真祖が現れ、俺に上級治癒魔術をかけてくれた。
そして、フィアちゃんに赤い光をかけて、消えていた翼を出現させて、俺を吸血させた。
それから、真祖は俺たちを近くの町に転移させてくれた。
宿屋に着くと、彼女は「フィアに大事な用がある」と言って、フィアちゃんを連れていった。
部屋に着いたリル姉は抱えている俺をベッドに下ろして、横になって抱きしめた。
「そして、しばらくしたら、リョウタが目覚めたんだよ」
「ありがとう、リル姉」
「いいよー。
あっ、夕食の時間だね。
行こっか?」
「うん」
俺たちは手を繋いで、借りている部屋を後にした。
ーー
あの魔獣戦から幾月か経った。
俺たちは魔王城がある街『スカーレット』の壁が見えるところまで来ていた。
あの次の日、起きると隣にフィアちゃんが眠っていた。
その日から、彼女は身体強化ができるようになり、火魔術が得意になった。
「魔王様って怖いイメージしかないんだけど」
「大丈夫だよ、リョウちゃん。
きっといい人だよ」
正面に座っているフィアちゃんが言った。
俺たちは馬車に乗っている。
「そうかな? 断られるかもしれないよ?」
「多分、大丈夫だよ。
まぁ、断られても、歩きになるだけだかんね。
どうってことないよー。
私はそっちの方がいいな」
フィアちゃんの隣に座っているリル姉が言った。
「どうして?」
フィアちゃんが聞いた。
「だって三人で旅するの楽しいかんね」
「私を忘れてるっ!」
俺の頭の上にいるユキちゃんが言った。
「そうだったね。ユキもいたね」
「もうっ!」
彼女はフィアちゃんの肩に乗った。
彼女は頰膨らませていた。
可愛い。
早く精霊王になんないかな。
「フィアぁ。
リルがまた私を忘れたぁ」
「よしよし。
お姉ちゃん、ユキちゃんに謝ってあげて?」
フィアちゃんはユキちゃんの頭を指先で撫でて、リル姉に言った。
「ごめんね、ユキ」
「もう忘れない?」
「うん。忘れないよ」
「絶対だよ?」
「うん。絶対」
「じゃあ、許してあげる」
「あんがと、ユキ」
あぁ、微笑ましい。
将来的には、リル姉と成長したフィアちゃん、クロネちゃん、セラちゃんと精霊王になったユキちゃんと生活すんのかぁ。
幸せすぎんだろ。
五人の美人に囲まれるとか。
「リョウちゃん、なんでにやけてるの?」
将来に思いを馳せていると、フィアちゃんが聞いてきた。
幸せすぎて、口元が緩んでたか。
「なんでもないよ」
馬車は、不安と希望を抱える俺を『スカーレット』へと運ぶ。
第三章 少年期 出会い編 ー終ー
次章 少年期 修業編