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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第三章 少年期 出会い編 〜エルフ、猫耳、精霊〜
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対世界神からの刺客

 初討伐依頼から幾月か経った。

 今、俺たちは魔王城に近い街『セイロン』に向かっている。




 旅の準備を整えた俺たちは『ゲンム』を出ることにした。

 旅の準備は保存のきく食料、馬車、その馬車を引く地竜の確保だ。

 地竜は翼のない四足歩行の小型ドラゴン。

 小型といっても、馬と同じ大きさ。

 馬より体力、持久力があるため、魔族領の馬車はほとんど地竜が引いている。


 マロンさんに旅立つことを言うと、彼女は街の外までついてきて、お見送りしてくれた。




 お見送りのときのことを思い出していると、馬車が止まる。

 俺はどうしたのかと思って、馬車から降り、地竜の顔を見た。

 表情は分からないけど、なにかに怯えている感じが伝わってくる。


「リョウタ、魔物だよ」


 馬車からフィアちゃんと降りたリル姉が伝えてくる。

 リル姉の魔力感知のおかげで、魔物にいきなり襲われたことは一度もない。


 魔物が現れたから怯えてんのかな?

 そう思いつつ、俺はマジックポーチから相棒(フリージングブライト)を取り出す。




 馬車から離れて待っていると、狼が三体こちらに走ってくる。

 狼たちは全体的に黒で赤い模様がある。

 嵐牙狼(ストームウルフ)か。

 嵐牙狼はBランクの魔物だ。

 Dランクの黒狼の進化系。

 黒狼は牙狼(ファングウルフ)、嵐牙狼、暴風王狼(バイオレントストームウルフ)へと進化していく。

 

 杖に魔力を集めて構える。

 敵は三体、『フロストブレス』を使えば一撃だな。

 イメージは三体の狼を完全に凍らせる長距離の白銀の冷気。


「『フロストブレス』!」


 杖の先から勢いよく白銀の冷気が放たれる。

 冷気は三体の狼たちに向かっていき、彼らを包み込んだ。

 足元から凍りついていき、動かぬ氷像と化す狼たち。

 バランスを崩した氷像は倒れて砕けた。




「リル姉、他に……魔物は……?」


 そう言って、振り向いた。

 俺の視界に入ったのは、いつもと違うリル姉。

 恐怖に塗れた表情で、自分の体を抱いて震えている。


「どうして、こんな場所に魔獣が……?」


 魔獣?

 魔獣って、世界神が生み出したやつだよな?

 出会ったら、死んだって思えレベルのやばいやつ。

 ていうことは死ぬのか?

 いや、見てから判断しよう。

 だって、リル姉は魔獣の姿を見たことはない訳だし。


 振り向くと、白い仮面を付けた黒い毛におおわれた人型の魔物? が立っていた。

 仮面は目にあたる場所だけがくり抜かれている。


 視界に入った瞬間、恐怖が俺を襲う。

 あぁ、こいつが魔獣なんだな。


「いや、いやっ。

まだ死にたくないっ」


 震えてる場合じゃねえ。

 ここには俺だけじゃない。

 フィアちゃんとリル姉が後ろにいる。

 大事なひとを守らないといけない。


 俺は震える足をパンッと叩き、対峙している黒いやつーー魔獣に杖を向けた。




ーー




 魔獣は高ランクの剣士くらいの実力。

 こいつを倒すには凄まじい火力が要る。

 俺の持つ手札は『氷砲』、『フロストブレス』の二つ。

 火力でいえば、『氷砲』。

 『氷砲』を全力全開で放つ。


 俺は杖の先に魔力を送り、イメージする。

 なによりも硬くて、先端を鋭く尖らせた氷の砲弾。

 それにすごい回転を加えッ!?


 全力の『氷砲』を放とうとした瞬間、目の前に魔獣がいた。


「うぐっ」


 お腹に強い痛みが走る。

 お腹に視線を向けると、魔獣の左腕がお腹に突き刺さっていた。

 氷の砲弾はキュインと音を立てて、どこかへ飛んでいった。

 左腕を薙ぎ払う魔獣。




「かはっ」


 俺は地面に叩きつけられ、吐血した。


「リョウちゃん!」


 フィアちゃんの声が聞こえて、視線を向ける。

 彼女は血相を変えて、俺の元へ駆けよろうとしていた。

 リル姉は女の子座りで震えている。


「来るな!」


 駆けよろうとしている彼女に叫ぶ。


「嫌!」


 そう拒否して、俺の元へ来てしまうフィアちゃん。


「『モアヒール』」


 フィアちゃんは俺のお腹に両手をかざし、中級治癒魔術をかける。

 緑色の光が俺の顔を照らす。

 魔術はちゃんと発動しているはずなのに、痛みが少しも引かない。


「な、なんで!

なんで中級なのに治らないの!」

「穴があいてるからだと思うよ」

「中級は折れた骨を治せるんでしょ!」

「それはくっつけるだけだから。

これは治らないよ。

だから、俺を置いてリル姉と逃げて」

「嫌だよ!

置いていったら、リョウちゃんが死んじゃう!

リョウちゃんが死んじゃったら、生きていけないよ」


 涙を流すフィアちゃん。


「嫌じゃない!

ティリルを連れて逃げろ!

バカフィアーナ!」

「嫌っ! 

リョウちゃんが死んじゃうんなら、私も死ぬ!」

「フィアーナが死んだら、ニーナさんたちが悲しーー」


 突然、フィアちゃんの背後に魔獣が現れた。

 魔獣は右腕をなぎ払い、彼女を吹き飛ばす。


「フィアーナ!」




 地面に叩きつけられたフィアちゃんはよろよろと立ち上がる。

 彼女の方へ向かおうとする魔獣。


「行かせねえ」


 魔獣の足元に左手を向け、冷気を放つ。

 魔獣の足は凍りつき、地面に縫い込まれた。

 もう一度、左手に魔力を集め、先の尖ったとても硬い氷の砲弾に高速回転をかけたものを放つ。


 氷の砲弾はキュインと鳴き、魔獣の胸に直撃した。

 だけど、少しだけえぐっただけで、砕ける氷。


「嘘だろ? ごはっ」


 魔獣が左足でお腹を踏みつけた。

 凍らせたはずなのに。

 殺す気で足をグリグリと押しつけてくる魔獣。

 痛い。痛い。痛い。


 しばらくすると、痛みを感じなくなってきた。

 死ぬんだな。

 嫌だな、死ぬの。

 フィアちゃんとクロネちゃんとしたかったな。


「リョウちゃんっ! 

嫌だよっ。死んじゃ嫌っ!」


 涙を流すフィアちゃん。

 その顔、可愛すぎだな。

 声も可愛くてさ。

 あぁ、成長したこの子とえっちしたかったな。


 最後にそう思って、俺は意識を手放した。







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