表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/140

EX-6 強い味方は遅れてやってくる

執筆開始 2019年1月24日

執筆終了      2月 2日

修正        2月25日〜 3月 1日


「次はあなたの番ですよ。

気絶ではすみませんけどね」


 セラとリルを数分で倒したミオが微笑んで、言って、ゆっくりと近づいてくる。

 二人を傷つけた仕返しは、絶対にしてやる。



「リョウタ様には手出しさせません!」


 ユキはミオにそう言って、構えた。


「あなたが、ですか?

バカなことを言わないでください。

二代目真祖の眷属で、幻想武具を持っている二人が

簡単に倒されたんですよ?

皇竜族と精霊の混血なだけのあなたでは、

なにもできません」

「そうですね。戦うのは、あきらめます」


 そう言うと、ユキは構えを解いて、こっちを向き、俺の首に手を回し、抱きしめてきた。

 ユキちゃん、なにをしてるの?

 お別れのハグ?


「違います。

手でリョウタ様の首をおおって、

即死しないようにしているんです」

 

 ユキが小声で、抱きしめている理由を述べて、背中の翼を広げ、俺の背中をおおった。



「自分の体と翼で、その転生者をおおい隠して、

殺せないようにしたんですね」


 ミオはそう言うと、止めていた足を動かして、また俺たちとの距離を詰め始めた。

 恐怖をあおるように、ゆっくりと。



 ある程度、距離を詰めると、ミオは立ち止まり、右手に刀を出現させた。

 刀の間合いさえあれば充分だから、この距離で詰めるのをやめたのか。


「おおい隠しても意味はありませんよ?

あなたごと、その転生者の心臓を貫けばいいんですから」


 そうユキに告げて、ミオはこっちに刀の切っ先を向け、俺たちを突き刺す体勢になった。


 俺とユキは目をつむる。

 もっとフィアーナたちと一緒にいたかったな。


「ごめんなさい、リョウタ様」


 ユキが謝ってくる。



「ユキ!」


 ユキが謝った瞬間、遠くの前方からクロネがユキを呼ぶ。

 名前を呼ばれて、どうするのか察したユキが俺を押し倒した。



「『光ツバメ』!」


 俺が押し倒されて、仰向けになると、クロネがそう発した。

 そのあとすぐに、光の斬撃が俺の視界を通って、海の向こうに飛んでいった。



 ユキに退いてもらい、体を起こす。

 すると、クロネがミオと対峙していた。


 クロネは、いつものポニテ巫女姿で、青いオーラをまとった獣化状態ーー蒼獣化している。

 相対するミオは、さっきの位置から横にずれていて、状態は相変わらず、対二代目真祖モードのままだ。



「リョウタ、ごめん。

私の判断ミスで、危険な目にあわせて、

こわい思いさせてしまって。

ミオを倒したら、お詫びさせて」

「う、うん」


 俺はクロネに短く返した。

 会話できる状況じゃないから。


 俺が返事したところで、フィアーナがクロネの後方から飛んできた。


「よかった。間に合ったんだね」


 着地したフィアーナが俺を見て、言う。


「うん。

フィアがリョウタたちの位置を

魔力反応で、把握したり、

途中まで、運んでくれたりしてくれたおかげ。

ありがとう」

「ううん。

私もリョウちゃんが大切だから、当然だよ」


 フィアーナたち五人して、俺のことを想って、動いてくれる。

 五人とも、大好きです。

 



「主眷属の剣姫だけでも、厄介だというのに、

二代目真祖まで、現れるとは」


 ミオがクロネとフィアーナを見て、言った。


「ミオ。あなたはヴェルガからの刺客?」


 クロネが尋ねる。


「はい、そうです」

「やっぱり」

「気づいていましたか。

この二人は気づいてなかったんですけど、

あなたは聡明ですね」


 それ、クロネだけが賢くて、リルとセラはバカって、暗に言ってるだろ?

 二人ともバカじゃないから。


「それで、急激な気候変動を引き起こして、

私たちが体調を崩したところを討つ作戦だった。

だけれど、私たちには意味がなかったから、

唯一、体調を崩したリョウタを討つことにした」


 クロネちゃん、違う。

 ミオの狙いは、最初から俺の命だったんだ。


「鋭いですが、少し違います。

急激な気候変動を引き起こし、

体調を崩したところを討つというのは、正解です。

ですが、狙いはこの転生者ただ一人」


 俺を視線で指し、答えるミオ。


「それじゃあ、初めから、

リョウタの命を狙っていたっていうこと?」

「はい、初めから」


 見当は少し外れたけど、警戒して、俺のそばにいたのは、正解だよ。


「どうして、リョウタの命を狙うの?

リョウタを殺せば、私たちが無気力になるから?

それとも、リョウタ自体が

ヴェルガにとって、邪魔な存在だから?」


 クロネがミオに問う。


「鋭いとだけ言っておきます」

「そう。答えないなら、それでもいい。

理由がどうであっても、関係なく、

私は、ミオーーあなたを斬り壊すんだから」


 そう言うと、指示を出すクロネ。


「フィア。リルとセラを。

ユキ。リョウタと一緒に少し離れて」

「わかった」


 クロネにそう返して、意識を失っているリルとセラのもとへ向かうフィアーナ。



「リョウタ様」

「うん」


 差し出されたユキの手を握り、立ち上がる。


「こっちへ」


 ユキに手を引かれ、クロネとミオが戦うこの場所から離れる。




「このくらい離れていれば、大丈夫だと思います」


 ユキが足を止めて、言ってくる。


 どのくらい離れたんだろう?

 振り返って、見てみると、戦闘に巻き込まれず、声や様子がわかる、ちょうどいい距離だった。


「クロネが負けるとは、思いませんけど、

ミオが勝って、リョウタ様を襲ってきたとき、

逃げるタイミングを(のが)さないように、

二人の戦闘を見ていてください」

「わかった」


 ユキにそう返して、クロネたちの様子を見る。



「すぐ戻ってくるからね」


 リルとセラを左右の肩に、それぞれ担いだフィアーナがクロネに告げる。

 クロネがうなずくと、白い翼を背中に出現させて、フィアーナは『スカーレット』に向かって、飛んでいった。



「戦闘を開始してもいいですか?」

「大丈夫」


 ミオの確認に、そう返すクロネ。


「戦闘魔導機人、ミオ」

「クロネ・クールウィンド。

ミオ。あなたを斬る!」


 そのクロネの言葉を皮切りに、二人は地面を蹴り、ほぼ一瞬で、 距離を詰めた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ