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EX-4 嵐の前の散歩

執筆開始 2019年 1月 3日

執筆終了       1月11日

修正         2月16日〜18日


「はぁ、しんどい」


 寝室のベッドの上で、独りごちた。

 今日も昨日と変わらず、体調が悪い俺は、寝室のベッドで、横になって、過ごしている。

 体調不良だけど、クロネとにゃんにゃんしたことは後悔していない。



 少しして、部屋の扉をノックされた。


「リョウタ、入るよー」


 間髪を入れずに、リルがそう告げて、入ってくる。

 今日もリル姉は、美人だな。

 

「リョウタ。

気分転換したら、体調が少し良くなるかもだから、

外に出て、散步しようよ」


 ベッドに腰かけて、そう提案してくるリル。

 俺の体調が少しでも良くなるように、気分転換させようとしてくれるなんて、やっぱりリル姉は良妻だな。


「うん」


 俺は、ほぼ即答した。

 だって、めっちゃ積極的なリルと散步デート、楽しいに決まってるから。


「決まりだねー。セラとミオに伝えてくるね」


 そう告げて、立ち上がるリル。


「なんで、二人に伝えるの?」

「二人も一緒に散步するからだよ」


 ミオと行動をともにするの?

 こわい、こわい、こわい。


「フィアちゃんとクロネちゃんは?」


 どっちかがついてきてくれるかどうかで、危険度が全然、違ってくる。


「二人は連れていかないよ。

だって、六人だよ? 

六人で散步なんて、大変でしょー?」

「そうだけど、ヴェルガからの刺客が

襲ってきたら、どうするの?」


 その刺客がミオかもしれないけど。


「あははっ、クロネと(おんな)じ質問してるっ」


 リルが笑いながら、言う。


「大丈夫だよ。

私とセラにも幻想武具があるし、

フィアの眷属になったおかげで、

身体能力もすごく上がってるかんね」


 それなら大丈夫か。ユキもいるし。


「わかった。散步するよ」

「じゃあ、改めて、セラとミオに伝えてくるね」


 そう告げて、リルは嬉しそうに、部屋から出ていった。




ーー




「お兄ちゃん、本当に大丈夫ですか?」


 家から少し離れたところで、セラが聞いてきた。

 家を出たときに答えたし、それからずっと心配そうにしてるし、セラちゃんは本当に過保護だね。


「うん、大丈夫だよ」


 本当に大丈夫かな? っていう表情をするセラ。

 大丈夫だって。



「あっ、クリスだ」


 俺と腕を組んで、右腕に豊かな胸をあてて、歩いているリルがフィアーナの友達であり、俺の尊敬する女の子の名前を言った。


「どこ?」

「ほら、あそこ」


 リルが指す方へ顔を向けると、長い金髪をした十八歳の女の子が、赤髪の青年と楽しそうに歩いていた。

 あの赤髪、グレンじゃないか?


「おーい!」

 

 リルがクリスティーナに向かって、両手を振る。


「リルお姉ちゃん、ダメですよ!

男の人と一緒にいるんですから!」

「あっ。そうだよね。デート中だもんね」


 セラに注意されたリルはそう言って、両手を下ろした。

 


「よっ、リョウタ」

「こんにちは、リョウタさん、リルさん」


 いつの間にか、目の前にクリスティーナとグレンがいた。

 グレンは、クリスティーナの飼い猫のサファイアを抱いている。

 

「クリス、ごめんね。デート中に」


 リルがそう謝ると、グレンが恥ずかしそうに、ほおを赤くした。

 

「いえ。リルさんたちはお買いものですか?」

「ううん。散步してるんだー。

体調を崩したリョウタの気分転換と

そっちの二人の街案内を目的にねー」


 俺の左側にいるセラとミオに視線を向けて、リルが答えた。


「あの、お兄ちゃん。

この人たちは、リルお姉ちゃんの友達なんですか?」


 セラが尋ねてくる。

 そうだ。

 セラちゃんはこの二人とまだ会ったことがないんだ。


「クリスちゃんは、フィアちゃんとクロネちゃんの友達で、

この赤髪は俺の友達だよ」

「クリスティーナと申します。

よろしくお願いします」

「俺はグレン。よろしくな」


 俺が答えると、クリスティーナとグレンがセラとミオに名乗った。


「セラっていいます。

お兄ちゃ……リョウくんの奥さんをしてます。

よろしくお願いします」

「ミオと申します。

記憶喪失で、リョウタさんの家でお世話になっております。

よろしくお願いいたします」


 セラとミオが名乗り返した。

 すると、クリスティーナがセラに近づき、手を握った。


「あのっ、セラさんって、フィアたちのことを

慕ってるんですよねっ?」

「は、はい。慕ってます」


 食い気味に聞いてくるクリスティーナに、少し引き気味で、セラが答える。


「クロネのことを『姉様』と呼んでるんですよねっ?」

「は、はい。呼んでます」

「歳上の女性を『姉様』と呼ぶ少し小柄な美少女。

セラさんは、私の求めていた理想の女性です!」


 クリス先生、その表現は誤解をまねきます。

 ちゃんと小説の登場人物って言ってください。


「リョウタさん!

次の小説は、クロネとセラさんの絡みを執筆しますから、

楽しみにしててくださいね!」

「はい。楽しみにーー」

「ダメ!」


 俺の返事をさえぎって、リルがそう発し、セラを守るように抱きしめた。


「ダメだよ、クリス。

セラの初絡みの相手は、私だかんね」


 そうリルが言うと、その顔をじっと見つめだすクリスティーナ。

 数秒すると、クリスティーナはうなずき、口を開いた。

 

「わかりました。

セラさんの初絡みの相手は、リルさんにします」

「やった。あんがと、クリス」

「いえ」


 喜んで、お礼を言うリルに、クリスティーナは微笑んで、そう返した。



「あの、クリスさん。

『絡み』って、なんですか?」


 セラが話について行けず、クリスティーナに質問する。


「俺もなにか気になる」


 グレン、お前もか。

 これ、クリス先生、ピンチだな。

 だって、GL(百合)の小説や絵物語ーー日本でいうマンガを描いてるなんて、バレたら終わりだもん。


「えっと、ですね。それは、ですね……」


 案の定、困っているクリスティーナ。

 いつも小説や絵物語を描いてもらってるし、助けよう。



「『絡み』っていうのはーー」


 どうにかしようとした瞬間、リルが説明し出した。

 それを俺はあわてて、手でリルの口をふさぎ、さえぎった。

 危なかった。


「『絡み』というのはーー」


 今度は、静かにしていたミオが説明し出す。

 俺からも、クリス先生からも、ミオの位置は遠い。

 すみません、先生。助けられなくて。



「ユキさん」


 ユキちゃん?

 クリスティーナの声につられて、ミオの方を見ると、ユキが手で彼女の口をふさいでいた。

 ユキちゃん、ナイス。



「リョウタ。さっきから、なにしてんだよ。

説明の邪魔ばっかり」

「そうですよ。ユキさんにまで邪魔させて。

私たちに説明しちゃダメな単語なんですか?」


 難を逃れて、安堵したのも束の間、グレンとセラが俺の行動に疑問を抱き、核心を突いてくる。

 セラちゃん、鋭いね。


「そ、そういうわけじゃなくて、

話そうとしている人の口をふさぐ遊びが

俺とユキの間で流行ってるんだよ。ね?」


 苦し紛れな返しをして、ユキに振る。

 自分で言っておいてなんだけど、最低すぎる遊びだな。


「は、はい。二人きりのときに、互いの口をふさいで、話す邪魔をし合っています」


 ちゃんと話を合わせて、しかも、フォローまでしてくれるユキ。

 

「……そ、そうか」

「……そ、そうなんですね」


 二人とも引いてる。

 グレンはともかく、セラに引かれるのは辛すぎる。

 でも、これで、『絡み』について尋ねないはず。


「グレンさん。

この間、聞かせてくれた『話す魔物』の話を

リョウタさんたちにも聞かせてあげてください」


 すかさず、クリスティーナが話を変える。


「話す魔物、気になりますっ」


 セラが話に食いつき、紫色の瞳を輝かせる。

 その容姿で、瞳を輝かせて、その言葉を言ったら、ほぼ、えるたそだよ。


「気になるか。気にならないわけないよな。

いいぜ、聞かせてやるよ」


 よし! これで、もう大丈夫だ。

 上手くいって、俺はユキとクリスティーナとうなずき合った。

 本当は、ハイタッチしたかったけど。



「それじゃあ、話すぜ。

あれは、一、二週間前。

俺はいつもどおり、ギルドの討伐依頼を数件、受けて、

討伐する魔物たちがいる小さな森に向かったんだ」


 その森で、話す魔物に出会ったのか。

 話す動物(人間以外)と森で出会うとか、童謡の『森のくまさん』かよ。


「森の中を歩いていると、

二体のボアオークが歩いているのを見つけたんだ」

「ボアオークって、オークの亜種で、

キバがオークよりも大きく、鋭くて、

けむくじゃらな魔物だよね?」


 リルがグレンに聞く。

 あー! イノシシとオークを合体させた感じの魔物か。


「そう。そのボアオークを放置しておくわけにはいかないから、

戦いを挑んだんだ。

結果は、俺が勝ったんだけど、ふふっ」


 話の途中で、笑い出すグレン。


「一体のボアオークが

『俺たちボアオークの時代が来たばかりだというのに。

無念』って言って、死んだんだよ。

意味がわかんねえよな」

 

 無念って言って、死ぬ。時代劇かよ。


「無念ってっ」

「無念って、なにっ」

「無念って、なんですかっ」


 クリスティーナ・リル・セラたち三人は、グレンの話を聞いて、笑い出した。

 いや、そんなに、おもしろくないから。






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