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EX-3 人為的自然災害



修正 2019年 2月15日


「さむっ!」


 寒くて、目が覚めた。


 俺の目の前には、寝間着の浴衣を着たクロネがいる。

 彼女は背中に手を回して、俺に抱きついている。

 豊満な胸が俺の胸にこれでもかと、押し付けられている。



「起きた?」


 クロネが聞いてくる。


「うん。おはよう、クロネたん」

「おはよう」

「クロネたん、先に起きてたの?」

「うん。

寒くて、リョウタが起きる少し前に起きたの」

「そっか」

「ごめん。暖房、つけようと思ったんだけれど、

寒くて、布団から出られなかったの」


 申しわけなさそうに言うクロネ。

 彼女の頭を撫でようと、手を布団から出した。

 すると、すごい冷たい空気が手を包んだ。


「謝らなくていいよ。

寒いのが苦手なの知ってるから」


 冷たい空気に耐えながら、クロネの頭を撫でて、言った。

 クロネは種族的に寒いのが苦手だから、布団から出られないのは仕方ない。

 猫はこたつで丸くなるって、よく言うし。



「リョウちゃん、クロネちゃん、大丈夫!?

こごえてない!?」


 部屋の扉が勢いよく開き、フィアーナが聞いてくる。

 体を少し起こすと、フィアーナが入り口に立っているのが視界に入った。

 彼女はセラをおんぶしている。


「う、うん。私もリョウタも大丈夫だけれど、

どうして、フィアはセラを背負ってるの?」


 クロネがそう返す。

 俺も気になる。


「くっついてないと、寒くて死んじゃうって

背中に抱きついてきたの」

「はぁー。フィアお姉ちゃん、温かいです」


 フィアーナが答えた後、セラがつぶやいた。

 フィアちゃんにおんぶしてもらって、温もり感じれるなんて、いいな。



「すぐ降りると思うから、暖房じゃなくて、

魔術で、二人の周りの空気を温めるね」


 そう告げて、フィアーナがこっちに右手を向けると、周りの冷たい空気が温かくなった。


「どうかな? 温かくなった?」

「うん。温かくなったよ。

ありがとう、フィアちゃん」

「ありがとう、フィア」


 俺に続いて、クロネがお礼を言った。


「うん。それじゃあ、降りよっか?」

「ちょっと待って」


 フィアーナにそう言って、ベッドから下りる。

 そして、窓に近づき、外の様子を見た。

 雪が降っているときのような寒さだったから。


「なっ!?」


 俺は外の様子に驚いた。

 外はすごい吹雪で、なにも見えない。

 まだ十月の下旬だというのに。




 吹雪は昼くらいに止んだけど、すごい積雪で、玄関のドアが開かなくなったから、一日、家にいた。

 フィアーナたちみんなといちゃつきながら、過ごした。

 いつもの休日と同じように。


 次の日は晴れて、積もった雪はほとんど溶けた。




ーー翌日(豪雪の日の二日後)ーー



「んぅ……」


 目が覚めると、家が滝の中にあるかのような音が耳に入ってきた。

 

「おはようございます、リョウタ様」


 目の前にいるユキが少し眠そうにあいさつしてきた。

 彼女は背中に手を回して、俺をギュッと抱きしめている。

 大きく、豊かな胸が胸に押し付けられている。


「この滝みたいな音って、雨?」

「はい。すごい勢いの大雨が降ってます。

地球でいうゲリラ豪雨みたいな感じの雨です」


 ユキは少し怯えた様子で答えた。

 ちょっと怖いよな、この雨の勢い。



「……よ……いよ……やばいよ!」


 リルの声が部屋に近づいてきて、扉が勢いよく開いた。

 

「リョウタ、やばいよ!」

「なにがやばいの?」


 体を少し起こして、入り口にいるリルに尋ねる。


「一階の床が水浸しなんだよ!」

「水浸し!?」


 俺は急いで、ベッドから下り、リルとユキの二人と寝室を後にした。




「なっ!?」


 一階が見える位置まで階段を下りてきた俺は、一階の様子に驚いた。

 一階は、リルの言ったとおり、床が水浸しになっていて、その水かさは足首に届きそうだ。


「ね? やばいでしょ?

ここら辺は土が少ないから、

なにも混じってない水だから、まだいいけど、

森林地帯だったら、土が混じって、大変だったよ」


 そうだな。

 土が多い場所だったら、浸水したら泥だらけだし、土砂崩れが起きるもんな。

 



 一階が水浸しだから、一日、二階にいた。

 食事は、足首から下が水につかるのを我慢して、リルが作ってくれた。

 

 翌朝、起きると、雨が止んでいたから、フィアーナが火魔術で、一階の床の水を蒸発させてくれて、元に戻った。


 二度あることは三度あるっていうから、明日も異常気象かもしれないな。




ーー翌日(豪雨の日の二日後)ーー




「んぅ……。フィアたん?」


 目が覚めると、フィアーナが体を起こして、俺の顔を見ていた。


「おはよう、リョウちゃん」

「おはよう」

「暑くない?」

「うん、大丈夫」


 そう俺が答えると、微笑むフィアーナ。


「暑くて起きたし、リョウちゃんも暑いだろうなって、

周りの空気の温度を魔術で冷やしたの。

一応、五属性が使えるけど、水系は使い慣れてないから、

上手くできるか、心配だったんだけど、

ちゃんとできたみたいだね」


 俺も暑いだろうと思って、魔術で涼しくしてくれるなんて、やっぱり優しいな。

 さすが、フィアエル。


「そんなに暑かったの?」

「うん。真夏かと思うくらい暑かったよ」


 十月末に真夏のような暑さ。

 思ったとおり、今日も異常気象が起こったな。

 


 急激な気温変化で、体調を崩したから、一日、家でゆっくり過ごした。




ーー




 夜になった。

 今、俺は寝室で、クロネを待っている。

 俺の体調が悪いから、手を繋いで、ただ眠るだけだとクロネは思ってるだろうけど、俺はにゃんにゃんしたい。

 


 コンコン。

 少しすると、部屋の扉をノックされた。

 クロネかな。


「入っても大丈夫?」


 ベッドから立ち上がったと同時に、扉の向こう側から尋ねてくる美声。

 やっぱりクロネだ。


 開けにいきたいけど、あんまり動いちゃダメだって、みんなに言われてるから、いけない。


「うん、大丈夫だよ」


 俺がそう返すと、クロネが部屋に入ってきた。

 やっぱりいいな、長い黒髪を下ろしたクロネたん。

 しかも、寝る前だから、浴衣だし。

 もちろん、いつものポニテ巫女服姿も好きだけどね。


「なに?」


 見とれていると、クロネが聞いてくる。


「髪を下ろしてるクロネたん、やっぱりいいなって

見てるだけだよ」

「そう……」


 少し照れて、返事する彼女。かわいい。

 


「寝る前に、聞いてほしいことがあるんだけれど、

いい?」


 俺の隣に腰かけて、クロネが言ってくる。


「うん、いいよ」

「ありがとう」


 そうお礼を言って、彼女は話し始めた。


「最近、気候の変化が激しいと思わない?」

「うん、思う」

「十月末に、大雪、大雨、真夏日が続くなんて、

不自然だから、

だれかが魔術で引き起こしてると思うの」


 そう考えるのが妥当だよね。


「そのだれかって見当はついてるの?」

「うん。私はミオだと思ってる」

「色々、怪しいから?」


 俺がそう尋ねると、クロネはうなずいた。


「彼女は、傷が一つもない綺麗な状態で、

普通に動いたところ、

記憶も自分の名前と自分がなんなのかだけ

残っているところがおかしい。

それに、彼女がうちに来た次の日から、

気候がおかしくなったから」


 絶対、ミオが犯人だよ。


「私が思うに、ミオは私たちを殺す目的で、

世界神(ヴェルガ)かその仲間に造られた。

普通に戦っても勝てないから、

急激な気候変動を起こして、体調を崩したところを

たたく作戦」


 その作戦、ずるくない?


「この作戦はフィアと私たち眷属には意味がなかったけど、

まだ眷属になりきれてないリョウタには成功してる。

だから、リョウタ、警戒しておいて。

もちろん、私とフィアも警戒をおこたらない」

「うん、わかった。自分でも警戒するよ。

話は以上?」


 そう俺が聞くと、クロネは頷いた。


「それじゃあ、寝る?」

「うん。まだ寝たくないの?」

「うん。寝る前に、クロネたんとエッチしたいなって」

「体調が悪いんじゃないの?」

「うん。悪いけど、すげえクロネたんとしたいんだ」

「わかった。一回だけ」

「ありがとう、クロネたん!」


 嬉しくて、俺はクロネに抱きついた。






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