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EX-1 魔導機人

この話の導入部分は三人称視点で描いています。



 王竜暦2988年、十月下旬。

 リョウタ・クールウィンド、十八歳。


 黒い全身鎧をまとった人物がコンピュータを操作している。

 ここは地図に載っていない異空間にある都市のある建物の中。


「よし、できた。

対二代目真祖および、その眷属用戦闘魔導機人ミオが

できた」


 手を止め、黒鎧の人物がつぶやいた。

 声の高さからして、女性だろうか。


 彼女のそばには、近未来的な台があり、青い髪の少女が横たわって、眠っている。

 少女は十代後半くらいに見える。



 黒鎧の人物が少女に付いている機械やコードを外していると、長い銀髪の女性が部屋に入ってきた。


「できたようですね」

「ああ。完成した。

言われた通り、ミオという名以外のことは、

ヴェルガ様の名を耳にすることで解除されるロックを

施してある」


 女性に説明する黒鎧の人物。


「貴女は本当に従順ですね。

私はヴェルガ様ではないのに」

「当然だ。お前の計画はすべて、

ヴェルガ様の負担を減らすためのもの。

それを手伝うということは、

ヴェルガ様の手助けをするのと同義だからな」


 黒鎧の人物が返す。


「そういうことですか。

もう持っていっても?」

「ああ。持っていけ」


 黒鎧の人物が答えると、女性が少女を抱え上げる。

 そして、なにかをつぶやき、姿を消した。


「ミオはいいが、あいつの策だから、

失敗するかもしれないな」


 一人になった部屋で、黒鎧の人物がつぶやいた。




ーーSide リョウターー




「明日は土の日(地球でいう土曜日)ですよね?」


 リルとセラが待つ家に向かって、歩いていると、ユキが確認してきた。


「うん、そうだよ」


 俺と腕を組み、右側を歩いているフィアーナがその確認に答える。


「明日の夕食は、クロネが作ってくれるんですよね?」


 今度はクロネに確認するユキ。

 料理はリルとクロネがそれぞれ闇の日から()風の日まで()と土の日の朝、昼の食事を、土の日の夜と光の日すべてを担っている。


「うん。そのつもりだけど」

「やったーっ!

明日はリルのごはんとクロネのごはんが

食べられるーっ!」


 俺と手を繋ぎ、左側を歩いているクロネが答えると、両手を挙げ、ぴょんとジャンプして、喜ぶユキ。

 かわいい。


「ふふっ、ユキちゃんって、

本当にごはんが好きだね」


 フィアーナが笑って、言う。


「はいっ。リルが作ってくれるごはんと

クロネが作ってくれるごはんは最高ですからっ」

「ありがとう」


 クロネが照れながら、お礼を言う。かわいい。

 すると、ユキは彼女の頭を撫で始めた。

 俺も撫でたい。




「止まってください!」


 ほんの少しすると、ユキがクロネの頭を撫でるのをやめて、俺たちに強く言ってきた。

 彼女の表情だけで、やばいのがわかる。


「どうしたの?」

「強大な魔力反応が進行方向に現れました」


 フィアーナの質問にユキが答える。


「敵?」


 クロネが聞く。


「わかりません。

ですが、魔力量が世界トップクラスですし、

魔力反応だけですごく強いのがわかります」

「アマテラス」

「ツクヨミ」


 ユキが答えると、フィアーナとクロネはそれぞれ俺の腕と手を放して、自分の幻想武具ファンタジックウェポンの名前をつぶやいた。

 すると、フィアーナの腰に両刃の片手剣が、クロネの腰に刀がさやに入った状態で、現れた。


 いきなり戦闘になってもいいように、俺も杖ーーフリージングブライトを準備しておく。


「あっ、いなくなりました」

「えっ? いなくなったの?」

「はい。魔力反応が強くなって、消えました。

多分、『瞬間転移』を使って、

どこかに行ったみたいです」


 俺の質問にユキが答える。

 フリージングブライト、準備したのに。


「ですが、一人、残していったので、

警戒は解かないでくださいね」

「わかった」

「うん」


 俺とフィアーナはそう返し、クロネはうなずいた。




 フィアーナたち三人と警戒しながら、『スカーレット』に向かって、進んでいると、倒れている人を見つけた。

 ここからだと、髪が青いことしか、わからないな。


「ユキちゃん。

強そうな人が残していったのって、あの倒れてる人?」

「はい、そうです」


 心配して、近寄ってきたところを攻撃する罠か、使えないから捨てられたかってところかな。

 どっちにしろ、近寄らないとダメってことか。


「リョウちゃん。

ちょっと見てくるから、二人とここで待ってて」

「一人は危ないって」


 倒れている人のもとへ向かおうとしたフィアーナの手を掴んで、とめる。


「心配してくれて、ありがと。

でも、大丈夫だよ。どんなケガもすぐ治るから」

「そうだけど……。

フィアちゃんには、傷ついてほしくないし」


 掴んでる俺の手を手首から外して、その手を両手で包む彼女。


「ちゃんと気をつけるから、大丈夫」


 そう言って、フィアーナは両手で包んだ俺の手を一瞬、ギュッとして、倒れてる人のもとへ向かっていった。



 フィアーナが近寄るけど、倒れてる人は動かない。

 死んでる?


 フィアーナはひざをついて、彼? 彼女? を仰向けにする。

 そして、首に触れて、安否を確認し始めた。



「三人とも! 来ていいよ!」


 倒れてる人の安否を確かめ始めて、数十秒、経って、フィアーナが俺たちを呼んだ。



 フィアーナのもとへ来ると、倒れてる人物の全身が視界に入った。


 倒れてる人は高校生くらいの美少女。

 青い髪をツインテールにしている。

 ノースリーブの白いセーラー服、二の腕から手首までをおおう白い袖、青いネクタイ、青いスカート、ひざ下までをおおうストッキングという格好だ。


 彼女は目をつむっていて、ピクリとも動かない。

 呼吸で動くはずの胸も動いていない。

 

「全然、動かないけど、この娘、生きてる?」

「この娘は人間じゃないと思う」


 フィアーナに確認したつもりが、クロネが答えた。

 人間じゃないってなに?

 アンドロイド的なやつ?


「フィアちゃん。

本当に、この娘って人間じゃないの?」

「うん、人間じゃないよ。

脈がないけど、魔力反応はちゃんとあるからね」

「人間じゃないんなら、なんなの?」

「多分、魔導機人だと思うよ」

「魔導機人ってなに?

ユキ、知ってる?」


 クロネが隣にいるユキに尋ねる。

 精霊王は魔術関係のこと詳しいからだろう。


「クロネちゃん。ユキちゃんも知らないと思うよ。

今はブラッディーナ家の人しか知らないもん」


 だから、聞いたことなかったんだな。


「それで、魔導機人っていうのは?」

「魔導機人っていうのは、

魔力を動力にした人型の機械のことで、

重たいものを運んだり、困ってる人を助けるために

魔神様が生み出したものだよ」


 人造人間ってやつね。

 フィアーナがまとう赤いオーラといい、ド○ゴンボ○ル感がすごいな。


「多分、動かなくなったから、

捨てていったんだと思うよ」


 なんか可哀想だな。


「リョウちゃん。

この娘、連れて帰ってあげよ?」

「盗賊とかに襲われるかもしれないから、お願い」

「私からもお願いします。

こんなかわいい女の子、放っておけません」


 フィアーナが言って、クロネとユキがお願いしてくる。

 俺、まだなにも言ってないんだけど。


「じゃあ、連れて帰ろうか」


 俺がそう返すと、三人は嬉しそうな表情になった。


「よかったね」


 フィアーナが少女(魔導機人)の頭を撫でて、言った。



「どうやって、連れて帰りましょうか?」


 ユキが相談する。


「俺がーー」

「私が背負っていく」


 俺の話をさえぎって、クロネが答えた。


「フィア。背負うの手伝って」

「うん」


 フィアーナがそう返事して、しゃがんでいるクロネに少女を背負わせた。



「クロネちゃん、いける?」


 立ち上がったクロネにフィアーナが聞く。


「うん、大丈夫。

体重はセラとあまり変わらないし」


 彼女にそう答えるクロネ。

 たまに、セラちゃんにお願いされて、おんぶしてるもんね。

 その後、フィアちゃんにお願いされて、フィアちゃんをおんぶする。

 クロネちゃんにおんぶしてもらって、いいな。


「リョウタも背負ってほしいの?」


 背負われてる少女をうらやましそうに見ていると、クロネが尋ねてきた。


「えっと……うん」

「今度、背負ってあげる」


 彼女はクスッと笑って、そう言った。

 やっぱり笑った表情のクロネたん、かわいいな。


「それじゃあ、帰ろ?」

「うん」

「うん」

「はい」


 俺、クロネ、ユキはフィアーナにそう返し、『スカーレット』に向かった。


 帰ったら、リルにからかわれそうだな。はぁ。






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